科研費 - 阿波賀 邦夫
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研究課題/研究課題番号:20H05621 2020年7月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 特別推進研究
阿波賀 邦夫, 坂本 一之, 内橋 隆, 土射津 昌久, 桝 飛雄真, 白旗 崇, 山口 明
担当区分:研究代表者
配分額:554450000円 ( 直接経費:426500000円 、 間接経費:127950000円 )
本研究では、数学的に『強等方性格子』として特徴付けられているHoneycomb、DiamondおよびK4格子を、分子結晶や金属有機構造体 (MOF)、共有結合性有機構造体 (COF)などにおいて『自在合成』し、電気化学的Band Filling 制御などを通じて、そのトポロジーに起因する『電子機能』を探求する。さらに、強等方性格子が共通にもつ巨大比表面積や巨大内部空間を活かし、電子とイオン輸送の協奏する『電気化学機能』を実現する。
本年度は、分子性強等方性構造をもつ物質探索とともに、電子機能および電気化学機能開拓を重点的に行った。実施項目1「分子性強等方性物質の自在合成」においては、昨年後に引き続き、強等方性格子をもつ分子性結晶、MOF/COFおよび二次元単層膜の作製を行った。なかでも、C3対称をもつ立体π共役分子トリプチセン誘導体o-TTを配位子としてもちいたCo錯体において、トリプチセン分子の幾何構造の要請からCoイオンが理想的な三角柱配座を取る珍しい構造であることがわかり、その磁気異方性を実験的に明らかにすることに成功した。また蛍光分子を内包するジャイロイド構造をもつMOFが大きな円偏光発光異方性を示すことを明らかにした。さらに金属基板上の単分子層成長において、アルカリ金属を蒸着することで、大きなドメインを得られたことをSTM観察によって明らかにした。この結果を踏まえ、電子バンド構造の観測のために、実施項目2「分子性強等方性物質の電子機能」において、スピンおよび角度分解光電子分光システムの改造および立ち上げに注力した。また実験に先駆けて、分子性二次元構造体のバンド構造についての理論的な研究も行い、分子内相互作用および分子間相互作用の符号と相対比を変化させることでフラットバンドの由来やその位置が系統的に変化することを提唱した。実施項目3「分子性強等方性物質の電気化学機能」においては、酸化還元能をもつ配位子をもつハニカムMOFのESR測定を通して、昨年度提唱したライングラフ物性についての実験的な知見を得ることに成功した。
現在までの進捗状況を、3つの研究項目別に説明する。
実施項目1「分子性強等方性物質の自在合成」においては、昨年後に引き続き、物質探索をおこなっているが、4年目である本年度は実施項目2「分子性強等方性物質の電子機能」および
実施項目3「分子性強等方性物質の電気化学機能」に重点をおいて研究を進めた。実施項目1 において、Ag基板上にトリプチセン類縁体のハニカム構造の作製に成功しているが、他の構造も共存していることが問題点であった。試料作製条件を検討した結果、アルカリ金属を蒸着することで、ハニカム構造のみの作製に成功した。
実施項目2「分子性強等方性物質の電子機能」において、分子性強等方性物質の電子状態を明らかにするために、有機分子仕様のスピンおよび角度分解光電子分光(SARPES)システムの改造を行い、その立ち上げを行った。その一方、分子性二次元構造体のバンド構造についての理論的な研究も行い、分子内相互作用および分子間相互作用の符号と相対比を変化させることでフラットバンドの由来やその位置が系統的に変化することを提唱した。これと並行して分子性二次元構造体のバンド構造についての理論的な研究も行い、分子内相互作用および分子間相互作用の符号と相対比を系統的に変化させることでフラットバンドの由来やその位置が変化することを提唱した。実施項目3「分子性強等方性物質の電気化学機能」においては、酸化還元能をもつ配位子をもつハニカムMOFのESR測定を通して、Liドーピングを行うことで、不対電子がつくる格子をカゴメ格子からハニカム格子へと連続的に変化させることに成功し、昨年度提唱したライングラフ物性についての実験的な知見を得ることに成功した。
研究項目別に記載する。
実施項目1「分子性強等方性物質の自在合成」分子性強等方性構造の自在合成を継続する。これまでハニカム格子の作製を主に行ってきたが、Δ型C3対称分子をもちいたK4構造やTd対称分子をもちいたDiamond構造の作製にも挑戦する。また基板表面上の分子性Honeycomb単層膜については、によってそのバンド構造を検証する。
実施項目2「分子性強等方性物質の電子機能」では項目1で合成した系について、それぞれの特性に合わせて磁性、電子物性、光物性を、順次検討するとともに、SARPES装置をもちいて、強等方性に由来したDirac ConeやFlat Bandなどの特異な電子バンドを実験的に直接観測する。 実施項目3「分子性強等方性物質の電気化学機能」では、分子性強等方性物質と炭素材料の複合体を作製し、そのスーパーキャパシターや2次電池の電極材料としての特性を評価する。強等方性物質 内の周期的巨大ナノ空孔が、巨大な蓄電容量と、スムーズなイオン輸送に寄与するかどうかを検討する。また、COFの熱分解によって得られた巨大比表面積ヘテロ 原子ドープ炭素材料についても、これをキャパシタや触媒担持電極として発展させる。 -
研究課題/研究課題番号:19K22167 2019年6月 - 2021年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
阿波賀 邦夫
担当区分:研究代表者
配分額:6500000円 ( 直接経費:5000000円 、 間接経費:1500000円 )
これまでの研究により、C3対称性をもつ分子がハニカム格子に結晶化すれば、必然的にDirac coneやフラットバンドが形成されることを見出している。この物質設計指針に従い、トリプチセン骨格に、ドナーやアクセプター性、あるいは金属イオンへの配位能をもつさまざまな置換基を導入し、分子間の電荷移動相互作用や配位結合によって強固な分子性ハニカム格子を合成する。その次のステップとして、固体電気化学などの手法を用いて、分子性ハニカム格子に関するバンドフィリング制御に挑戦する。すなわち、当該物質を電極上に配して電解質に浸し、電極電位の制御によって系のフェルミエネルギーを連続的に制御する。
我々はこれまの研究により、C3対称性をもつ分子がハニカム格子に結晶化すれば、必然的にDirac coneやフラットバンドが形成されることを見出している。本研究ではこの物質設計指針に従い、C3対称性をもつ分子骨格としてトリプチセンを選び、ドナーやアクセプター性、あるいは金属イオンへの配位能をもつさまざまな置換基を導入しながら、分子性ハニカム格子の合成すを目指した。
本年度は、ハニカム格子の類縁格子であるカゴメ格子を有するMOFを合成した。カゴメ格子には、スピンフラストレーションが期待される。得られた系について、極低温域までの磁気測定と熱測定を行った。この結果、多次元的な相互作用をもつにもかかわらず、磁気的秩序状態に転移することなく、低温ではスピン液体状態にあることが結論された。これは、スピンフラストレーションが長距離の磁気的秩序を阻害したためと考えられる。極低温域における磁気測定と熱測定から、スピン液体状態の磁化率と比熱の温度依存性を実験的に決定することができた。さらに、これを説明するためのモデルについても検討した。
さらに本年度は、いくつかの新規トリプチセン誘導体の合成に成功している。ドナー性とアクセプター性を系について、それぞれその合成に成功した。現在、再結晶法や昇華法によって結晶作製を進めており、いくつかの系では、結晶構造解析や物性測定に取り掛かっている。また現在、電解結晶化によってラジカル塩の作製も行っている。 -
固体電気化学プロセスから発現する新しいエネルギーおよび情報変換
研究課題/研究課題番号:16H06353 2016年5月 - 2021年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(S)
阿波賀 邦夫, 原田 潤, 吉川 浩史, 横川 大輔, Irle Stephan
担当区分:研究代表者
配分額:185900000円 ( 直接経費:143000000円 、 間接経費:42900000円 )
分子物性科学と固体電気化学の双方型研究から、ハニカムやジャイロイドのような特異なトポロジーをもつ分子性ナノポーラス物質を合成して物性開拓を行うとともに、これらを2次電池の正極活物質として利用するとともに、内部空間を利用した活物質挿入や導電性高分子とのハイブリッド化によって、高い蓄電機能を実現した。さらに、固液界面電気2重層を内包する有機デバイスを作製し、優れたトランジスタ特性や高効率光電変換を引き出した。そのほか、さまざまな固体電気化学operando計測を発展させ、金属の仕事関数と電解質の化学ポテンシャルを連続的につなぐポテンシャル接合モデルを世界に先駆けて初めて提唱した。
持続可能な社会の発展に向け、ユビキタスな物質や手法による新しいエネルギー変換や情報変換の実現は危急の課題である。本研究では、金属-有機構造体(MOF)や共有結合構造体(COF)などのナノポーラス分子性物質が、2次電池の正極活物質やキャパシタ電極として十分に活用できることを実証することができた。さらに、固液界面の電気2重層を有機トランジスタや光電セルに導入することによって、その基礎理論を発展させるとともに、分子性物質に相応しい作動原理を提唱することができた。 -
炭素同素体トポロジーと分子自由度の結合による新規物性の開拓
研究課題/研究課題番号:18H04482 2018年4月 - 2020年3月
科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)
阿波賀 邦夫
担当区分:研究代表者
配分額:7800000円 ( 直接経費:6000000円 、 間接経費:1800000円 )
ハニカム格子をもつグラフェンがDirac coneと呼ばれる特異なバンド構造をもち、特異な電子物性を示すことはよく知られている。我々は、このようなハニカム格子を分子結晶で実現し、バンドフィリング制御から人工的にDirac電子系をつくり出す研究を展開している。ハニカム分子格子をつくり出すため、C3回転軸をもつ立体π共役分子(3つのπ平面から構成され、それらの法線は60°または120°の角度をなす分子)に注目して分子合成を試みている。
本年度は、拡張されたπ共役糸と電子受容体能力をもつ、フェナジン部位をトリプチセン骨格に付加したTrip-Phzを合成した。結晶構造解析を行ったところ、 フェナジン部位間のファンデルワールス相互作用によりハニカム格子が形成され、またCH…N水素結合により、ハニカム骨格が層間で重なり合うことが分かった。その結果、ハニカム格子に垂直に、直径1nm 程度の太い1Dチャネルが形成されることが分かった。トリプチセン分子骨格からは当然だが、この1Dチャネルの内面はアクセプター性をもつπ電子で覆われていると予想される。この構造から引き出される物性を探索するため、この結晶をさまざまな濃度のTTF溶液に浸したところ、電荷移動(CT)吸収体の出現/消失を伴いながら、可逆的にTTFがチャネル内に吸着/脱着され、その吸収強度とTTF溶液濃度の関係はLangmuirの方程式でよく説明されることが分かった。これは、TTFのモノレイヤー吸着を示唆している。ホスト‐ゲスト間のCT相互作用の発現は初めてではないが、吸着量の自在制御はおそらく初めての例である。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。 -
固体電気化学プロセスから発現する新しいエネルギーおよび情報変換
2016年4月 - 2022年3月
科学研究費補助金 基盤研究(S)
阿波賀 邦夫
担当区分:研究代表者
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K4分子結晶化学の構築
2016年4月 - 2019年3月
科学研究費補助金 挑戦的萌芽研究
阿波賀 邦夫
担当区分:研究代表者
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K4分子結晶化学の構築
研究課題/研究課題番号:16K13977 2016年4月 - 2019年3月
科学研究費補助金
阿波賀 邦夫
担当区分:研究代表者
配分額:3900000円 ( 直接経費:3000000円 、 間接経費:900000円 )
近年、グラフ理論によって「強等方性」という概念が提唱され、K4格子、ダイヤモンド格子、ハニカム格子の3種のみがこの性質をもつことが結論された。本研究では、立体π共役分子を用いて分子性K4ならびにハニカム格子をつくり、その物性開拓を行った。その結果、[TBA]3[(-)-NDI-Δ]2 は3次元K4構造に結晶化し、その中で局在した不対電子がハイパーカゴメ格子を形成することを見出した。極低温物性測定を通じて、スピン・リキッド基底状態を結論した。その他、Rb3[p-TT]結晶中で分子性2次元ハニカム格子を見出し、これがグラフェンと同様なバンド構造を有すること示した。
「強等方性」をもつK4格子、ダイヤモンド格子、ハニカム格子だが、その高い対称性によってDirac coneなどの特異なバンド構造をもつことが予言・実証されている。しかし、これらから超伝導などの機能物性を引き出すためにはバンドフィリング制御が不可欠だが、たとえばダイヤモンドなどの元素物質では、その制御量にはおのずと限界がある。本研究では、このような特異な構造を分子で作り上げる一つの方法論を確立することができた。今後、より自由なバンドフィリング制御に道を開く成果である。 -
開殻化合物を用いる新しい有機エレクトロニクスの発展
2010年6月 - 2014年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
阿波賀 邦夫
担当区分:研究代表者
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強相関チアジルラジカルの光・電流応答
2009年4月 - 2010年3月
科学研究費補助金 新学術領域研究 21110515
賀
担当区分:研究代表者
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環状チアジルラジカルおよび関連物質の半導体特性とその展開
2007年4月 - 2010年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
阿波賀 邦夫
担当区分:研究代表者
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中空球殻磁性体の2次元自己集積化と電気および磁気特性
2006年11月 - 2008年11月
科学研究費補助金 特別研究員奨励費,課題番号:68006354
阿波賀 邦夫
担当区分:研究代表者
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ナノ球殻磁性金属の合成と物性測定
2004年4月 - 2006年3月
科学研究費補助金 萌芽研究,課題番号:16655055
阿波賀 邦夫
担当区分:研究代表者
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分子磁性体における双安定性の構築とその制御
2003年10月 - 2007年3月
科学研究費補助金 特定領域研究
阿波賀 邦夫
担当区分:研究代表者
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分子スピン:ナノ磁石から生体スピン系まで
2003年10月 - 2007年3月
科学研究費補助金 特定領域研究
阿波賀 邦夫
担当区分:研究代表者
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ナノ球殻分子磁性体の開発
2002年4月 - 2004年3月
科学研究費補助金 萌芽研究 課題番号14654132
阿波賀邦夫
担当区分:研究代表者
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分子磁性体における双安定性の発現とその展開
2001年4月 - 2005年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
阿波賀 邦夫
担当区分:研究代表者
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高スピン金属クラスター錯体に対する異種金属ドーピング
1998年4月 - 2000年3月
科学研究費補助金 文部省科学研究費 萌芽研究
阿波賀邦夫
担当区分:研究代表者
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環状チオアミルラジカル超分子化合物の合成と新規物性開拓
2001年4月 - 2002年3月
科学研究費補助金 特定領域研究
阿波賀邦夫
担当区分:研究代表者
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Mn12核高スピン錯体の電子構造
1999年4月 - 2002年3月
科学研究費補助金 特定領域研究
阿波賀邦夫
担当区分:研究代表者
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特異なスピン共役系の開発と展開
1998年4月 - 2001年3月
科学研究費補助金 特定領域研究
阿波賀邦夫
担当区分:研究代表者