2024/10/02 更新

写真a

ヒグチ リョウ
樋口 諒
HICUCHI Ryo
所属
高等研究院 特任助教
大学院人文学研究科 特任助教
職名
特任助教

学位 1

  1. 博士(工学) ( 2018年3月   東京工業大学 ) 

研究分野 1

  1. 社会基盤(土木・建築・防災) / 建築史、意匠  / 建築史

学歴 1

  1. 東京工業大学   総合理工学研究科   人間環境システム専攻 博士後期課程

    2014年4月 - 2018年3月

所属学協会 4

  1. ICOMOS Japan

    2023年9月 - 現在

  2. 西洋中世学会

  3. 日本建築学会

  4. 日本ビザンツ学会

受賞 2

  1. 西洋中世学会大会第7回ポスター賞(審査員賞)

    2024年6月   西洋中世学会  

    樋口諒

  2. 2021年日本建築学会奨励賞

    2021年9月   日本建築学会   内接十字形教会堂における内部建築構成の展開 中期ビザンツ文化圏における内接十字型教会堂の系譜 その1

 

論文 12

  1. The Derivation of the Cross-in-Square Churches in terms of their Interior Tectonic Configuration: The Genealogy of the Cross-in-Square Churches during the Middle Byzantine Period (1) 招待有り 査読有り 国際誌

    Higuchi Ryo, Nasu Satoshi

    Japan Architectural Review   2 巻 ( 4 ) 頁: 530 - 544   2019年10月

     詳細を見る

    担当区分:筆頭著者, 責任著者   記述言語:英語   掲載種別:研究論文(学術雑誌)  

    前稿までで指摘してきた、中期ビザンティン期の内接十字型が内包する二つの系統について、その内部の建築構成の経年的な変遷をみると、立体的な特徴は発散しているにも拘わらず平面的には収束しており、そのために異なる建築構成の教会堂を既往研究が「内接十字」として一纏めにしてきた可能性を指摘した。

    DOI: 10.1002/2475-8876.12116

  2. 内接十字型教会堂の主要な内部建築構成の地理的分布と地域性 中期ビザンツ文化圏における内接十字型教会堂の系譜 その2 査読有り

    樋口諒

    日本建築学会計画系論文集   84 巻 ( 758 ) 頁: 987 - 994   2019年4月

     詳細を見る

    記述言語:日本語   掲載種別:研究論文(学術雑誌)   出版者・発行元:日本建築学会  

    中期ビザンティン期の内接十字型について、前稿までで明らかにしてきた二つの系統とその特質を踏まえつつ、これらの教会堂の地理的な分布から当時のビザンティン文化圏における建築的な地域性について論じた。

    DOI: 10.3130/aija.84.987

  3. 天井面架構の構築順序からみた中期ビザンツ文化圏の内接十字型教会堂の展開 査読有り

    樋口諒, 那須聖

    日本建築学会計画系論文集   83 巻 ( 745 ) 頁: 551 - 560   2018年3月

     詳細を見る

    記述言語:英語   掲載種別:研究論文(学術雑誌)   出版者・発行元:日本建築学会  

    中期ビザンティン期の内接十字型の教会堂について、前稿で指摘した壁面の架構構成の違いに対応するように天井面の構築方法に二つの異なる系統が存在することを指摘した。

    DOI: 10.3130/aija.83.551

  4. 内部架構構成からみた中期ビザンツ文化圏内接十字型教会堂建築の成り立ち 査読有り

    樋口諒, 那須聖

    日本建築学会計画系論文集   82 巻 ( 737 ) 頁: 1817 - 1827   2017年7月

     詳細を見る

    記述言語:英語   掲載種別:研究論文(学術雑誌)   出版者・発行元:日本建築学会  

    中期ビザンティンの教会建築における最も重要な建築形式である内接十字について、その枠組みを設定した上で網羅的に聖堂の情報を収集し壁面の架構構成に着目して分析した。その結果これまで一纏めにされてきた内接十字の教会堂が実際には異なる二つの系統を内包しているものと見做せる点を指摘した。

    DOI: 10.3130/aija.82.1817

  5. 3D Scholarly Editions for Byzantine Studies: Multimedia Visual Representation for History, Art History and Architectural History 査読有り

    Ryo Higuchi, Koji Murata

    ISPRS Annals of Photogrammetry, Remote Sensing and Spatial Information Sciences   X-M-1-2023 巻   頁: 125 - 131   2023年6月

     詳細を見る

    担当区分:筆頭著者, 責任著者   記述言語:英語   掲載種別:研究論文(学術雑誌)  

    DOI: 10.5194/isprs-annals-X-M-1-2023-125-2023

  6. 初期キリスト教建築における古典的建築オーダーの変容 招待有り

    樋口諒

    建築と古典主義     頁: 83 - 86   2022年9月

     詳細を見る

    担当区分:筆頭著者, 最終著者, 責任著者   記述言語:日本語   掲載種別:研究論文(その他学術会議資料等)  

  7. Improving Performance of Feature Extraction in SfM Algorithms for 3D Sparse Point Cloud 査読有り 国際共著 国際誌

    F. Condorelli, R. Higuchi, S. Nasu, F. Rinaudo, H. Sugawara

    ISPRS - International Archives of the Photogrammetry, Remote Sensing and Spatial Information Sciences   XLII-2/W17 巻   頁: 101 - 106   2019年11月

     詳細を見る

    記述言語:英語   掲載種別:研究論文(学術雑誌)   出版者・発行元:Copernicus GmbH  

    Abstract. The use of Structure-from-Motion algorithms is a common practice to obtain a rapid photogrammetric reconstruction. However, the performance of these algorithms is limited by the fact that in some conditions the resulting point clouds present low density. This is the case when processing materials from historical archives, such as photographs and videos, which generates only sparse point clouds due to the lack of necessary information in the photogrammetric reconstruction. This paper explores ways to improve the performance of open source SfM algorithms in order to guarantee the presence of strategic feature points in the resulting point cloud, even if sparse. To reach this objective, a photogrammetric workflow is proposed to process historical images. The first part of the workflow presents a method that allows the manual selection of feature points during the photogrammetric process. The second part evaluates the metric quality of the reconstruction on the basis of a comparison with a point cloud that has a different density from the sparse point cloud. The workflow was applied to two different case studies. Transformations of wall paintings of the Karanlık church in Cappadocia were analysed thanks to the comparison of 3D model resulting from archive photographs and a recent survey. Then a comparison was performed between the state of the Komise building in Japan, before and after restoration. The findings show that the method applied allows the metric scale and evaluation of the model also in bad condition and when only low-density point clouds are available. Moreover, this tool should be of great use for both art and architecture historians and geomatics experts, to study the evolution of Cultural Heritage.

    DOI: 10.5194/isprs-archives-xlii-2-w17-101-2019

  8. Photogrammetry Using Virtual Restoration of Wall-Paintings of the Rock-Hewn Churches in the Göreme Valley, Cappadocia and its Value for the Museum's Contents 査読有り 国際共著 国際誌

    R. Higuchi, H. Sugawara, M. E. Gülyaz

    ISPRS Annals of Photogrammetry, Remote Sensing and Spatial Information Sciences   IV-2/W6 巻   頁: 83 - 89   2019年8月

     詳細を見る

    担当区分:筆頭著者, 責任著者   記述言語:英語   掲載種別:研究論文(学術雑誌)  

    トルコ・アナトリア高原に位置する世界遺産カッパドキアにおける岩窟教会堂において、写真測量法による3次元モデルを作成し、損失のみられる壁画についてPC上で復元する手法を提示すると共に、それらを博物館のコンテンツとしてどのように用いるのが最適か議論した。

    DOI: 10.5194/isprs-annals-iv-2-w6-83-2019

  9. 中期以降のビザンツ教会堂建築の研究動向 査読有り

    樋口諒

    西洋中世研究   10 巻   頁: 202 - 212   2018年12月

     詳細を見る

    記述言語:日本語  

    中期以降のビザンティンの教会堂建築が19世紀以降どのように研究されてきたのか、その研究史を概観した上で、平面分析を専らとしてきたこれまでの研究とそこから新たな地平を開こうとする近年の研究について解説した。

  10. Byzantine Architecture: Within or Beyond the Boundaries of the Nation State 査読有り 国際誌

    Higuchi Ryo

    Proceedings of the 12th International Symposium on Architectural Interchanges in Asia     頁: 1553 - 1558   2018年10月

     詳細を見る

    担当区分:筆頭著者, 最終著者, 責任著者   記述言語:英語   掲載種別:研究論文(国際会議プロシーディングス)  

    オスマン帝国からギリシャ・セルビア・ブルガリアといった近代国家が独立・成立した際に、各国が国家としてのアイデンティティ確立のためにどのようにビザンティン建築を使用し、それがその後のビザンティン建築研究の枠組みをどのように歪めてしまったのかを指摘した。

  11. 内接十字型教会堂における内部建築構成の展開: 中期ビザンツ文化圏における内接十字型の系譜 その1 査読有り

    樋口諒, 那須聖

    日本建築学会計画系論文集   83 巻 ( 752 ) 頁: 2025 - 2034   2018年10月

     詳細を見る

    記述言語:日本語   掲載種別:研究論文(学術雑誌)  

    前稿までで指摘してきた、中期ビザンティン期の内接十字型が内包する二つの系統について、その内部の建築構成の経年的な変遷をみると、立体的な特徴は発散しているにも拘わらず平面的には収束しており、そのために異なる建築構成の教会堂を既往研究が「内接十字」として一纏めにしてきた可能性を指摘した。

    DOI: 10.3130/aija.83.2025

  12. Digital non-metric image-based documentation for the preservation and restoration of mural paintings: the case of the Üzümlü Rock-hewn Church, Turkey 査読有り 国際共著 国際誌

    Ryo Higuchi, Tamaki Suzuki, Mina Shibata, Yoko Taniguchi, Murat Gülyaz

    Virtual Archaeology Review   7 巻 ( 14 ) 頁: 31 - 42   2016年5月

     詳細を見る

    担当区分:筆頭著者, 責任著者   記述言語:英語   掲載種別:研究論文(学術雑誌)  

    トルコ・カッパドキアのウズムル教会を事例に、限られた予算・人的資源の中で壁画の調査・保存を効率的に行うための手法を論じたものであり、ドキュメンテーションの時間の短縮と現場ですべての作業を行えることに重点を置いている。岩窟教会堂では壁画の描かれる場所が不定形であり、これの正確な記述に一番コストがかかることから、複数枚の写真を合成して近似的な正射影像を作りその上への壁画の状態記述し作業を簡便化する。

    DOI: 10.4995/var.2016.4241

▼全件表示

書籍等出版物 3

  1. VL 2024 International Conference on Visualizing Landscape 査読有り 国際共著

    Francesca Condorelli, Ryo Higuchi, Koji Murata, Elena Ota, Kazufumi Takeda( 担当: 共著 ,  範囲: Unveiling the Byzantine Churches of the Laconia Region in Greece: Exploring Landscape Perception Through Visualization)

    Publica  2024年  ( ISBN:9788899586430

     詳細を見る

    担当ページ:840–855   記述言語:英語 著書種別:学術書

  2. 世界居住文化大図鑑 人と自然の共生の物語

    ( 担当: 共訳 ,  範囲: 熱帯の豊かさと多様性, チャトルハウスと木造建築/カリブ海地域, クレオール・パリクール族・カボクロ・ブラジル系カリブ族の住居/フランス領ギアナとブラジル)

    柊風舎  2023年5月 

     詳細を見る

    担当ページ:54-65   記述言語:日本語

  3. 聖性の物質性 人類学と美術史の交わるところ

    樋口諒( 担当: 分担執筆 ,  範囲: 後期ビザンティンの聖堂における光の演出と聖性:イェラーキ(ギリシャ)の聖ヨアンニス・クリソストモス聖堂)

    三元社  2022年4月 

     詳細を見る

    担当ページ:485-509   記述言語:日本語 著書種別:学術書

共同研究・競争的資金等の研究課題 5

  1. 三次元アーカイブズの構築によるギリ シャ・ラコニア地域聖堂群の研究資源化と社会的機能の解明に向けた多分野協働型研究

    2022年4月 - 2024年3月

    研究助成 

      詳細を見る

    担当区分:研究分担者  資金種別:競争的資金

  2. 建築学および美術史学の総合的分析による中期ビザンティンの聖堂建築のあり方

    2022年2月 - 2024年2月

    海外特別研究員 

      詳細を見る

    担当区分:研究代表者 

  3. 研究史料としての建築の三次元学術編集モデル作成の試み:ギリシャ、ラコニア地方の教会建築遺構を対象として

    2021年10月 - 2022年9月

    2021年度(第10回)人文・社会科学系学術研究助成  

    樋口諒, 村田光司, 武田一文, 太田英伶奈

      詳細を見る

    担当区分:研究代表者  資金種別:競争的資金

    配分額:950000円 ( 直接経費:950000円 )

  4. 中央アジア出土東ローマ帝国貨幣の基礎的調査

    2019年4月 - 2023年3月

    調査研究助成 

    村田 光司, 樋口 諒

      詳細を見る

    担当区分:研究分担者 

  5. 東方正教教会堂の歴史的価値評価と保存手法

    2015年10月 - 2016年10月

    日本人留学生助成 

科研費 4

  1. 古代末期~中世ビザンツ期城塞の年代測定にむけた物質的・統計的アプローチの開発

    研究課題/研究課題番号:20K20721  2020年7月 - 2023年3月

    挑戦的研究(萌芽)

    深津 行徳

      詳細を見る

    担当区分:研究分担者 

    本研究は、岩石風化学、画像認識、機械学習の方法や知見を援用しつつ、石灰岩製城壁の建設・修築年代決定を可能にするような、科学的方法を開発することを目的とする。
    ギリシアと・小アジア各地に建設された100余の城壁の年代を確定できれば、資料が少ない地方における社会的心性の変容とそれを取り巻く国際情勢・経済的条件の変化等を、より精密に跡付けしうる。こうした重要歴史的事象の解明を可能にする事が、城壁建設・修築年代決定法考案の目的である。
    本研究では、これまで建築史分野での本格的活用が遅れていたAI技術やディープラーニング技術の応用を試み、岩石風化学の有効性を、工学や歴史学の立場から実際の建造物で検証する。

  2. 中期ビザンティンにおける工匠たちの建設技術とその伝承:地方部の寸法体系に着目して

    研究課題/研究課題番号:20K14929  2020年4月 - 2024年3月

    若手研究

    樋口 諒

      詳細を見る

    担当区分:研究代表者 

    配分額:4030000円 ( 直接経費:3100000円 、 間接経費:930000円 )

    ビザンティン史において、初期と中・後期との間には史的断絶があり、この時期建築活動の担い手は建築家から経験則による工匠たちへと移行した。本研究は建設活動の最も基礎的な要素としての寸法体系から史料の残されていないこの時期の社会的な変遷を明らかにするものであり、首都と地方部(カッパドキア・クレタ島・キプロス島)の寸法体系を比較・検討することで中期ビザンティン帝国の尺度を体系的に明らかにするものである。

  3. 古代末期~中世におけるTlos市領域の流通インフラと農耕・居住区域の復元

    研究課題/研究課題番号:19H01333  2019年4月 - 2024年3月

    浦野 聡

      詳細を見る

    担当区分:研究分担者 

    ローマ帝国からビザンツ帝国への移行期は、アラブ・イスラム勢力が地中海に進出してきた7~8世紀に画される。それは、まさしく古代から中世への転換期でもあった。そうした時代の転換がひとびとの生活や物質文化にどのような影響をもたらしたのか。そのことを、大きな社会構造の変化との関連で解明するためには、ローマ時代からビザンツ時代にかけて、比較的安定した国際情勢の中で生活を紡いでいたひとびとの居住地域に焦点を当てるのが適切であり、トルコ南西部、クサントス川中流域は格好の調査対象たる資格がある。特に未調査の、内陸流通ネットワークと居住区画の地理学的、歴史学的、建築学的調査を行う。
    2019年度については、現地研究協力者のアクデニス大学教授タネル・コルクート氏らと、今後の研究の進め方について、まず、議論を行った。その結果、トロス市域内の、新規発掘は、これまでの発掘成果の取りまとめが行われていないことから、難しいと判断され、発掘を伴わない、城壁の年代決定調査、および、建築階梯調査を優先して行うこととなった。まずは全体像を確かめるため、現地調査を行い、調査すべき城壁を平面図にマッピングした。
    河川流域調査については、エセンチャイ川流域に、調査に最適な沼沢地が残っていないことが問題であるということが明らかになった。そこで、あらたに現地協力者となったスレイマンデミレル大学准教授チェティン・シェンクル氏と議論した結果、エセンチャイ上流から100km北東にあるエベル湖、およびその主水源であるアカルチャイ川流域において、堆積土壌を採取し、花粉化石、珪藻化石、胞子化石の調査を行うとともに、重金属の含有割合調査、鉛同位体比の変遷調査を行うことが、小アジア南西部の中広域の植生、環境変化、人為的活動の痕跡を知るために、最もふさわしいと判断された。エセンチャイ河谷は、河川舟航および陸上輸送で、アカルチャイ川とエベル湖の盆地につながっており、特に、文献資料や考古資料による証明を欠く、中世初期から中世盛期における中広域の自然環境圏、および流通圏の存在を確かめるためには、想定される圏域の両端での調査が不可欠だからである。次年度以降の本格調査に備え、事前調査を行い、堆積土壌の採取とその分析を開始したが、少なくとも過去1万年の土壌は採取できることが想定されている。
    倉庫遺跡等、人工建築物と自然環境・交易流通路の関連については、エセンチャイ河谷での調査からエベル湖盆地での調査に対象地域が変更になったことから、倉庫遺跡の探査に加え、橋梁、および、川港遺跡の探査をあらたな調査対象として加えた。
    初年度は、関係各所との調整、状況に応じた研究計画の修正、および、詳細な研究行程の策定に充てられた。調整の結果、調査対象地域の変更を行うことになった。とりわけ、①アクデニス大学隊がトルコ政府との関係において決定した、トロス遺跡における新規発掘停止と、②エセンチャイ河谷における調査適地の欠如、および複数の考古調査隊との調整作業の不調は、研究対象地の変更に重大な影響を及ぼした。
    当初計画によれば、城壁周辺の発掘をトルコ隊が行い、城壁内外の測量を日本隊が行う計画であったが、発掘作業の停止により、日本隊には測量のみが委嘱されることになった。これに対し、日本隊では、城壁自体の非破壊検査を行い、測量のみによっては達せられない城壁の建設・修復年代特定を行う提案をし、アクデニス大学隊の了承を得た。また、次年度以降に計画されていた聖堂と神殿の間の工房地区発掘も行えなくなったが、城壁の外延は、この地区にも達しているので、城壁の非破壊検査によって、年代特定を精密に行えれば、城壁に取り囲まれたアクロポリス南麓だけでなく、この地区の活動時期も特定でき、将来の発掘に指標を与えることが期待されることになった。
    その一方、エセンチャイ川の土壌調査が行えなくなったのは、調査適地の欠如だけでなく、この地域全体が、考古調査隊の権利関係が入り組んだ地域であり、調整がうまくいかなかったことにも拠っている。その点、代替地として選定したエベル湖・アカルチャイ川流域は、発掘権の独占関係はなく、堆積土壌採取に最適の地である。新石器時代より今日まで活発な交通の要衝を占めており、古代から中世にかけての人為的活動の痕跡を探るのに適切な調査地である。協力者のシェンクル准教授に対しては、こちらから鉛同位体比の調査を提案するなど、大きな研究成果が期待されることになった。以上のことから、研究計画は、おおむね順調に進展していると考えている
    今後は、上記のような情勢変化に応じて、トロス市やトロスが属するリキア地方の城壁調査に軸足を置きつつ、環境史調査・交通史調査の調査対象をエセンチャイ河谷から、エベル湖盆地にシフトさせていく。トロス市およびリキアから内陸に離れるので、その中間地帯における調査も必要となるが、そこではすでに欧米の調査隊が、環境史調査を活発に行っており、接合させていくことは十分可能と考えられる。また、エセンチャイ河谷での権利関係の調整が進み、調査適地の広範な探索が可能になれば、内陸から地中海沿岸にかけての、より大きなコンテクストの中における研究が実現するかもしれない。鋭意、実現に努めたい。
    城壁調査については、あらたに非破壊検査を導入するための研究費確保が必要になる。建築班を中心として、別途、資金確保を進めており、また、非破壊検査を専門とする研究者の協力も得られることになっている。
    倉庫遺跡調査は、調査地がエセンチャイ河谷からエベル湖盆地に移行したこと、また、トロス発掘隊が、発掘を取りやめる決断をしたことにより、実質的に行うことができなくなったばかりか、それを行い、エセンチャイのエコシステムの中に位置づけることが不可能になった。そこで、今後は、同様の遺構がエベル湖・アカルチャイ川流域に残されていないかを調査し、現存が確認されている6つの橋梁遺構(そのうち二つは現在も使用されている)と、橋梁の近くに期待される川港の調査を進めることとする。

  4. 中期ビザンツ教会堂における建築的形態と儀礼空間の関係性:装飾プログラムに着目して

    研究課題/研究課題番号:19J00662  2019年4月 - 2022年3月

      詳細を見る

    担当区分:その他 

    本研究は、中期(9~12世紀)ビザンツ建築においてみられる建築形式の多様さについて、教会堂の使用方法との関連から説明できないかという問いのもとに、申請者がこれまで行ってきた具象的な建築物に対する分析に加えて、その内部にどのような壁画(フレスコ/モザイク)が描かれ、それらが教会堂内部へどのように配置されたかという壁画の装飾プログラムに着目してその儀礼空間としての特質を導くことにより、ビザンツ教会堂の具体的な形態と儀礼空間としての機能の関係性を捉えることを目的とするものである。

 

担当経験のある科目 (本学以外) 7

  1. 環境の変遷

    2024年10月 - 2025年3月 慶應義塾大学)

  2. 都市と建築の歴史

    2024年4月 - 現在 慶應義塾大学)

  3. 人文学基礎(春学期前半)

    2024年4月 - 現在 名古屋大学)

  4. 都市と建築の歴史

    2021年4月 - 2022年3月 慶應義塾大学)

  5. 美術史講義V(ビザンティンの建築と美術)

    2021年4月 - 2022年3月 名古屋大学)

  6. 史学講義23(人間と都市)

    2020年4月 - 2020年9月 立教大学)

  7. 西洋史特殊研究2B(中世キリスト教建築)

    2019年9月 - 2020年3月 立教大学)

▼全件表示

 

社会貢献活動 6

  1. 中世建築を研究する―ビザンティン建築を調べ、記録する

    役割:講師

    Common-S. サカエ大学(運営:松坂屋名古屋店)  名大カフェ'Science, and Me'  2024年5月

  2. ビザンティン帝国のガラス・モザイクとイスラーム建築

    役割:寄稿

    東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所情報資源利用研究センター(IRC)  Qalawun VR Project  2022年2月

  3. 地中海建築における装飾要素としての縞模様

    役割:寄稿

    東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所情報資源利用研究センター(IRC)  Qalawun VR Project  2022年2月

  4. ビザンチン建築と教会堂

    役割:講師

    認定NPO法人かわさき市民アカデミー  講座名「 西洋建築の歴史 」  かわさき市 生涯学習プラザ  2021年5月

     詳細を見る

    対象: 社会人・一般

    種別:講演会

  5. 十字軍が東地中海の建築にもたらしたもの

    役割:寄稿

    東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所情報資源利用研究センター(IRC)  Qalawun VR Project  2021年5月

     詳細を見る

    対象: 高校生, 大学生

    種別:インターネット

  6. アラビア文字風装飾からみるビザンティン建築におけるイスラームの影響

    役割:寄稿

    東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所情報資源利用研究センター(IRC)  Qalawun VR Project  2021年4月

     詳細を見る

    対象: 高校生, 大学生

    種別:インターネット

▼全件表示

メディア報道 2

  1. 正教会の伝統としての木造教会堂 新聞・雑誌

    石巻日日新聞社  石巻日日新聞  2016年7月

  2. 言葉から見る聖書の世界と現在との繫がり 新聞・雑誌

    石巻日日新聞社  石巻日日新聞  2016年7月