科研費 - 江原 宏
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インターディシプリナリーアプローチによるサゴヤシの商品作物化 国際共著
2018年8月 - 2021年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
江原宏
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
インターディシプリナリーアプローチによる食料安全保障強化と栄養改善を内包するコミュニティ開発に向け,21世紀の環境保全型資源植物と言われ,そのポテンシャルが期待されてきたサゴヤシの商品作物化に取り組む。5000年前から熱帯アジアの重要な主食であったこの澱粉資源植物は,稲作の普及に伴って分布域が大きく減少,現在は水稲も生育できない低湿地等に残る状況である。しかし,東南アジア,大洋州の低生産地域における伝統農業では未だに大切な資源である。不良環境での生産が可能で,アグロケミカルを必要としないため,1980年代以降,環境保全型植物として認識されてきた。世界的に澱粉需要が急増する中で,環境の修復や持続的地域開発に向けて,原産地で生産振興が望まれていることを背景として,本研究では,サゴヤシ栽培技術の高度化,サゴ澱粉グレーディングシステムの確立と用途開発等により,サゴ澱粉の安定供給を積極的に支援する。
(1) サゴヤシ栽培標準手順書 (Sago Culture Standard Operating Procedure: SC-SOP) の作成-(a) 栽培クイックマニュアルの作成:主に自然採取の形で収穫されているサゴヤシの農家レベルでの完全栽培化,資源管理のシステム化を目指す。そのため,効率的な健全苗の育成(慣行の苗定着率60%)と,適正な間引きなどの圃場管理 [筍状に現れる吸枝(分げつ)を適切に切除して株サイズを制御しないと主茎成長が大きく阻害され,同一株から成木を順次収穫する持続生産が望めない] 等の基礎研究結果に基づき,栽培クイックマニュアルを作成する。(b) 肥培管理指針の検討:泥炭低湿地では施肥効果が発現し難いとの報告の一方,ヤシに窒素固定細菌やアーバ スキュラー菌根菌が内生することが報告されている。サゴヤシと土壌の養分動態を解明し,栽培マニュアルを増補するための肥培管理技術の検討を行う。(2) サゴ澱粉グレーディングシステム確立:生産国の澱粉製造現場では,ポストハーベスト設備・技術が一様でなく,澱粉の製造量と品質が農家によって,日によって,季節で大きく異なる。そのため,サゴ澱粉消費ニーズの高まりに対して,関連産業が十分に応えられずにいる。そこで,澱粉抽出・精製技術の向上を基に,易抽出澱粉と難抽出澱粉をいくつかの水準に分け,グレードで品質が異なる澱粉をラインナップする。また,現在慣習として行われている漂白処理のような化学処理がサゴ澱粉加工特性に対して大きな影響を及ぼすことが考えられることから,利用者側に理解が容易となるサゴ澱粉農産物規格規程を作成する。それにより,食用,加工と異なる用途に合わせた原材料供給を可能とする。(3) サゴ澱粉用途開発:サゴ澱粉は生産国では主食としてわらび餅状やクレープ状の食品に調理する形,くず饅頭状や粒整形澱粉の冷製デザートとする形,主食用のラスク状食品や麺,焼き菓子に加工する形等で利用される。日本では酸化加工して麺や大福の製造過程での打ち粉,グルテンアレルギー症状の誘発を回避する代用粉として利用されるが,本研究では,異なる澱粉のグレードごとに新たな至適用途開発を行う。(4)バリューチェーン分析:栽培,澱粉抽出から,精製澱粉の小売,加工業者まで,バリューチェーンの活動ごと(各レイヤー)の強みや問題を明確にする。そして,前述の (1)~(3)がいかに問題の解決に向けて貢献し得るかを検討する。これらにより,サゴヤシを真の地域資源として開発して商品作物化し,関連地場産業の育成を通じた食料生産と栄養改善の強化に資する。(1)~(2)は各々標準手順書,指針,規程を国内で作成し,最大生産国インドネシアへ提供した上でモニタリングを行なう。(3)は日本国内で実施して成果を関係機関等へ提供,(4)は各レイヤーの視察を行なって分析に当たる。 -
大洋州を中心としたサゴ属ヤシ資源のインベントリー研究 国際共著
2015年4月 - 2020年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
江原宏, 三島隆, 板谷明美, 内藤整, 豊田由貴夫, 内山智裕
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
マレー諸島東部からミクロネシア,メラネシア,ポリネシアにいたる地域に分布する栽培種,野生種,絶滅危惧種を含むサゴヤシ資源の多様性について、農業形質、利用特性、資源量などに関する総合的なインベントリーを作成するための情報を整備する。
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インターディシプリナリーアプローチによるサゴヤシの商品作物化
2018年8月 - 2021年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
江原宏
担当区分:研究代表者
インターディシプリナリーアプローチによる食料安全保障強化と栄養改善を内包するコミュニティ開発に向け,21世紀の環境保全型資源植物と言われ,そのポテンシャルが期待されてきたサゴヤシの商品作物化に取り組む。5000年前から熱帯アジアの重要な主食であったこの澱粉資源植物は,稲作の普及に伴って分布域が大きく減少,現在は水稲も生育できない低湿地等に残る状況である。しかし,東南アジア,大洋州の低生産地域における伝統農業では未だに大切な資源である。不良環境での生産が可能で,アグロケミカルを必要としないため,1980年代以降,環境保全型植物として認識されてきた。世界的に澱粉需要が急増する中で,環境の修復や持続的地域開発に向けて,原産地で生産振興が望まれていることを背景として,本研究では,サゴヤシ栽培技術の高度化,サゴ澱粉グレーディングシステムの確立と用途開発等により,サゴ澱粉の安定供給を積極的に支援する。
(1) サゴヤシ栽培標準手順書 (Sago Culture Standard Operating Procedure: SC-SOP) の作成-(a) 栽培クイックマニュアルの作成:主に自然採取の形で収穫されているサゴヤシの農家レベルでの完全栽培化,資源管理のシステム化を目指す。そのため,効率的な健全苗の育成(慣行の苗定着率60%)と,適正な間引きなどの圃場管理 [筍状に現れる吸枝(分げつ)を適切に切除して株サイズを制御しないと主茎成長が大きく阻害され,同一株から成木を順次収穫する持続生産が望めない] 等の基礎研究結果に基づき,栽培クイックマニュアルを作成する。(b) 肥培管理指針の検討:泥炭低湿地では施肥効果が発現し難いとの報告の一方,ヤシに窒素固定細菌やアーバ スキュラー菌根菌が内生することが報告されている。サゴヤシと土壌の養分動態を解明し,栽培マニュアルを増補するための肥培管理技術の検討を行う。(2) サゴ澱粉グレーディングシステム確立:生産国の澱粉製造現場では,ポストハーベスト設備・技術が一様でなく,澱粉の製造量と品質が農家によって,日によって,季節で大きく異なる。そのため,サゴ澱粉消費ニーズの高まりに対して,関連産業が十分に応えられずにいる。そこで,澱粉抽出・精製技術の向上を基に,易抽出澱粉と難抽出澱粉をいくつかの水準に分け,グレードで品質が異なる澱粉をラインナップする。また,現在慣習として行われている漂白処理のような化学処理がサゴ澱粉加工特性に対して大きな影響を及ぼすことが考えられることから,利用者側に理解が容易となるサゴ澱粉農産物規格規程を作成する。それにより,食用,加工と異なる用途に合わせた原材料供給を可能とする。(3) サゴ澱粉用途開発:サゴ澱粉は生産国では主食としてわらび餅状やクレープ状の食品に調理する形,くず饅頭状や粒整形澱粉の冷製デザートとする形,主食用のラスク状食品や麺,焼き菓子に加工する形等で利用される。日本では酸化加工して麺や大福の製造過程での打ち粉,グルテンアレルギー症状の誘発を回避する代用粉として利用されるが,本研究では,異なる澱粉のグレードごとに新たな至適用途開発を行う。(4)バリューチェーン分析:栽培,澱粉抽出から,精製澱粉の小売,加工業者まで,バリューチェーンの活動ごと(各レイヤー)の強みや問題を明確にする。そして,前述の (1)~(3)がいかに問題の解決に向けて貢献し得るかを検討する。これらにより,サゴヤシを真の地域資源として開発して商品作物化し,関連地場産業の育成を通じた食料生産と栄養改善の強化に資する。(1)~(2)は各々標準手順書,指針,規程を国内で作成し,最大生産国インドネシアへ提供した上でモニタリングを行なう。(3)は日本国内で実施して成果を関係機関等へ提供,(4)は各レイヤーの視察を行なって分析に当たる。 -
インターディシプリナリーアプローチによるサゴヤシの商品作物化 国際共著
研究課題/研究課題番号:18KT0041 2018年7月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
江原 宏, 中村 聡, 竹下 広宣, 菊田 真由実, 遅澤 克也, 内藤 整, 三島 隆, 平尾 和子, 内山 智裕, 近堂 知子
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:18590000円 ( 直接経費:14300000円 、 間接経費:4290000円 )
(1)栽培技術の高度化に向けて,サゴヤシ苗を圃場容水量,地下部の深さ50%を水没させた場合,80%を水没させたて栽培した場合,地上部,地下部の成長に有意な差はみられず,サゴヤシが多様な土壌水分条件に適応できることが改めて確認されたものの,50%区で草丈の伸長,気根ならびに全根重が大きい傾向もみられた。また,根の窒素濃度が80%区で圃場容水量区より有意に低くなったことから,湿地条件であっても地下水位を根圏の半分程度までとすることで,良好な成長が期待できるものと考えられた。さらに,葉柄の非構造性炭水化物含量および澱粉含量が80%区で低く,あるいは圃場容水量と湛水条件で比較した場合にも,湛水区では炭水化物含量のレベルが低くなったことからは,長期間の湛水は幹に蓄積される澱粉含量の上昇を抑え,サゴヤシの経済的価値を低下させる危惧のあることが窺われた。
(2)サゴ澱粉グレーディングに関しては,インドネシアの国内市場で出回っているサゴ澱粉と,本邦企業が日本に輸入して販売するサゴ澱粉の成分を比較したところ,国内市場の試料においては炭水化物含量と澱粉含量に差異が認められたことから,大きな量ではないものの夾雑物が混入していることが窺われた。
(3)サプライチェーンについては,1) 小規模農家によるサゴ澱粉の商品価値向上に成果が現れにくいのは,上流から下流へのサプライチェーンの非効率性が原因であり,価値の付加のためには,成長市場の要件を満たす製品を提供するために必要な知識と能力をサゴ農家に提供する必要があること,2) 小規模農家がサゴ澱粉を乾燥した上で出荷することができれば,未乾燥の生澱粉での出荷に比べて価値を付加し得ること,3) サゴ澱粉の価格,GDP,高齢化人口率,関税割当政策が,日本のサゴ澱粉輸入に影響を与える重要な要因であることを明らかにできた。
本研究では, (1) サゴヤシ栽培標準手順書の作成-(a) 栽培クイックマニュアルの作成,(b) 肥培管理指針の検討,(2) サゴ澱粉グレーディングシステムの確立,(3) サゴ澱粉の用途拡大,(4)バリューチェーン分析を行い,サゴヤシを真の地域資源として開発して商品作物化し,関連地場産業の育成を通じた食料生産と栄養改善の強化に資することを目的としている。研究計画の主要小課題は順調に進展してきたが,2019年度第4四半期以降,新型感染症の影響拡大により研究代表者および分担者の現地への出張が叶わず,サゴヤシの商品作物化に向けた生産地域での活動が推進できていない状況が2021年度においても続いた。研究代表者自身も新型コロナ感染症を患い,研究の進捗が危惧されたが,生産国の協力者からの試料提供を受けるなどして,国内での分析と解析を中心に取り組むとともに,これまでの成果の取りまとめと公表に努めた。それらの成果として,6編の国際誌への論文を掲載(含受理),栽培生理に関しては,インドネシア語での専門学術書「サゴヤシの生態生理」をIPB大学出版から刊行,英語での専門学術書「泥炭地のエコマネージメント」(Springer)では泥炭地のサゴヤシに関する章を執筆して刊行し,日本語による専門学術書「熱帯作物学」(朝倉書店)の刊行に当たってサゴヤシの節を執筆することができた(年度末で校了)。
依然として研究者が日本からサゴヤシ生育地に出向いての調査開発に困難な状況が続いているが,ブースター接種を行なった場合には,出国と現地国への入国の規制が緩和となっていることから,本年度は渡航のチャンスを伺いながら,国内においては澱粉試料のミネラル分析,粘度やゲルの物性などの比較を進め,グレーディングシステムの整備,国内市場向けと国際市場向けの澱粉の至適な用途開発情報を取りまとめていく予定である。 -
大洋州を中心としたサゴ属ヤシ資源のインベントリー研究
2015年4月 - 2020年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
江原宏
担当区分:研究代表者
マレー諸島東部からミクロネシア,メラネシア,ポリネシアにいたる地域に分布する栽培種,野生種,絶滅危惧種を含むサゴヤシ資源の多様性について、農業形質、利用特性、資源量などに関する総合的なインベントリーを作成するための情報を整備する。
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研究課題/研究課題番号:15H05245 2015年4月 - 2020年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
江原 宏, 豊田 由貴夫, 内藤 整, 三島 隆, 板谷 明美, 内山 智裕
担当区分:研究代表者
配分額:16770000円 ( 直接経費:12900000円 、 間接経費:3870000円 )
大洋州におけるサゴ属植物の多様性と系統関係を5S nr DNA配列に基づいて解析したところ,サゴヤシに次いでM. warbrugiiで多様性が高いことが窺われた。また,MaxEntを用いた解析から,絶滅が危惧されるフィジーゾウゲヤシのリスクを減らすためには,沿岸地と並んで生育適地が存在する内陸において,潜在的適地への移植が保全戦略として重要であると考えられた。気候の変化を踏まえて考えれば,将来的な生育適地は2-4倍になることが窺われた。また,農業形質の比較からは,サゴヤシは髄乾物率,髄澱粉含有率が高いために生産量が大きいことが明らかになり,一方で,成長速度はソロモンサゴで速いことが考えられた。
サゴ属植物は問題土壌に適応して多量の澱粉を生産できるため,食料,生物燃料資源として期待される。大洋州では主食,建築資材や工芸品の原材料として伝統的に幅広く利用されてきが,一部地域ではコミュニティーでの情報の伝承が不十分となり,レリクトクロップになりつつあるところもある。また,従来は収穫のほとんどを自然林から得てきたサゴ属資源であるが,今後は,地域資源の保全を前提とした持続的利活用を推進する必要がある。本研究で得られたサゴ属の遺伝的多様性,資源量の把握と将来予測,農業形質に関する成果は,植物保全による資源量の維持,生産の安定化,至適な利用,二次製品の開発方針などの検討に資するものと考えられる。 -
農民を主人公にしたサゴヤシの商品作物化への挑戦とサゴヤシ研究拠点の創設
2015年4月 - 2018年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
遅澤克也
担当区分:研究分担者
ペンカジョアン村でのサゴヤシ研究センターの栽培実験地では、2016年当初に移植されたサゴヤシ苗(72株)の生育調査を、また、2012年9月に移植したサゴヤシ株(159株)の生育調査を継続して実施しながら、優良苗の選抜方法の検討に着手している。一方で、サゴヤシの育苗センターの苗生産のために、実生からの苗生産に着手した。開花期の5個体を確保し、花序、花、結実等の生育観察をしつつ、結実した実からの実生苗の生産を準備している。これは、地域内からの苗の要請だけでなく、パプアからの苗の購入要請等に応えるためである。
一方で、ルウ地方(3県、1市)のサゴヤシを使ったサゴ・テクノパーク構想の支援も並行して行っている。2016年6月のパロポ市が実施したサゴセミナーには、研究分担者等を派遣して講演を行っている。また、7月にはこのルウ地方のサゴ・テクノパーク構想を実現させるために、内外の研究者や中央政府の関係者を招いて、国際サゴヤシシンポジウムをサゴヤシ学会の協力の下に開催している。
こうした一連の活動の中で、UNHASのサゴヤシ研究グループを組織化している。また、UNHASの院生やルウ地方の地元大学の若手教官連携し、サゴヤシ研究センターを中心に複数のサゴヤシの課題研究が実施されつつある。
また、研修プログラムも作成され、西パプア州の南ソロン県のサゴヤシの専門学校:AKNESSから学生12名がペンカジョアン村のサゴヤシ研究センターの栽培実験地を使って、実習を行っている。 -
農民を主人公にしたサゴヤシの商品作物化への挑戦とサゴヤシ研究拠点の創設
2015年4月 - 2018年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
遅澤克也
資金種別:競争的資金
ペンカジョアン村でのサゴヤシ研究センターの栽培実験地では、2016年当初に移植されたサゴヤシ苗(72株)の生育調査を、また、2012年9月に移植したサゴヤシ株(159株)の生育調査を継続して実施しながら、優良苗の選抜方法の検討に着手している。一方で、サゴヤシの育苗センターの苗生産のために、実生からの苗生産に着手した。開花期の5個体を確保し、花序、花、結実等の生育観察をしつつ、結実した実からの実生苗の生産を準備している。これは、地域内からの苗の要請だけでなく、パプアからの苗の購入要請等に応えるためである。
一方で、ルウ地方(3県、1市)のサゴヤシを使ったサゴ・テクノパーク構想の支援も並行して行っている。2016年6月のパロポ市が実施したサゴセミナーには、研究分担者等を派遣して講演を行っている。また、7月にはこのルウ地方のサゴ・テクノパーク構想を実現させるために、内外の研究者や中央政府の関係者を招いて、国際サゴヤシシンポジウムをサゴヤシ学会の協力の下に開催している。
こうした一連の活動の中で、UNHASのサゴヤシ研究グループを組織化している。また、UNHASの院生やルウ地方の地元大学の若手教官連携し、サゴヤシ研究センターを中心に複数のサゴヤシの課題研究が実施されつつある。
また、研修プログラムも作成され、西パプア州の南ソロン県のサゴヤシの専門学校:AKNESSから学生12名がペンカジョアン村のサゴヤシ研究センターの栽培実験地を使って、実習を行っている。 -
農民を主人公にしたサゴヤシの商品作物化への挑戦とサゴヤシ研究拠点の創設
研究課題/研究課題番号:15H05145 2015年4月 - 2018年3月
遅澤 克也
担当区分:研究分担者
創設されたサゴヤシ研究拠点の栽培実験地では、2016年時点で27年生(49株、50×50m)、6年生(2ha、105株)、2年生(1ha、96株)のサゴヤシ個体の生葉の改質を中心とした生育調査を継続して実施し、優良苗の選抜を開始している。また、ルウ地方の地方政府や緑化事業を手掛ける企業からの大量な苗の要請に対応するために、実生苗の生産に着手している。この実生苗の生産は開花期のサゴヤシ7個体の生育観察のために櫓(竹製のタワー)3基を設置し、開花・結実の調査を伴って開始している。これらの成果は今年の6月に開催されるサゴヤシ学会で公表する予定。
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アジアの洪水常襲地に適した持続的作物栽培体系の開発
2012年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
坂上潤一
担当区分:研究分担者
本研究は、インドネシア国内に広がる沼沢地(SWAMP)を対象に、イネとダイズの作物栽培体系の適応可能性を明らかにする目的で行った。まず、イネにおいては、鉄過剰耐性品種を選抜するとともに、QTL解析から鉄無毒化と吸収抑制に関わる機構を明らかにした。また、冠水障害回避に効果的な肥培管理方法を提案した。さらに、現地における、再生二期作の高生産テンシャルを実証した。次に、ダイズにおいて、塩障害を引き起こす生理的メカニズムを明らかにするとともに、耐塩性準同質遺伝子系統の有用性を現地で明らかにした。一方、酸性土壌におけるイネの枯死は低pHが原因と断定し、硫酸酸性土壌生成の原因の一部についても明らかにした。
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アジアの洪水常襲地に適した持続的作物栽培体系の開発
2012年4月 - 2017年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
坂上潤一
資金種別:競争的資金
本研究は、インドネシア国内に広がる沼沢地(SWAMP)を対象に、イネとダイズの作物栽培体系の適応可能性を明らかにする目的で行った。まず、イネにおいては、鉄過剰耐性品種を選抜するとともに、QTL解析から鉄無毒化と吸収抑制に関わる機構を明らかにした。また、冠水障害回避に効果的な肥培管理方法を提案した。さらに、現地における、再生二期作の高生産テンシャルを実証した。次に、ダイズにおいて、塩障害を引き起こす生理的メカニズムを明らかにするとともに、耐塩性準同質遺伝子系統の有用性を現地で明らかにした。一方、酸性土壌におけるイネの枯死は低pHが原因と断定し、硫酸酸性土壌生成の原因の一部についても明らかにした。
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食料生産と競合しない新規生物エネルギーの創出:メラネシアにおけるサゴヤシの資源化
2008年4月 - 2012年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
江原宏
担当区分:研究代表者
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サゴヤシ利用の伝統的農村が水稲栽培農村として持続できる農村変容要因分析
2008年4月 - 2011年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
西村美彦
担当区分:研究分担者
焼畑農業とサゴヤシデンプン抽出を営んでいる伝統的農村が新しい農業としての水稲栽培を受け入れる要因について、インドネシア国南東スラウェシ州で調査を実施した。これを通して水稲栽培が持続されるための農村社会の変容要因についても分析した。調査の結果、水稲栽培は外部者(技術を持った移住民族等)から導入されたもので、水稲技術が定着するためには技術を持った人の存在が必要であることが判明した。また、水田が持続されない場合には、彼らにとって栽培が容易で、初期投資が少なく、かつ、換金性の高い畑作物や永年作物栽培に固守することが判明した。この理由としては伝統的農村で貨幣経済が浸透することより、農業がより専業化される傾向にあることが判明した。
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持続的農業技術と資源循環ネットワークの形成に関する研究
2003年4月 - 2006年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
大原 興太郎
担当区分:研究分担者
本研究では,環境負荷を最低限に抑え,生物の持つ潜在的能力を最大限に発揮する持続的農業技術と技術を担う社会システムの構築に資する理論的・実践的基礎の提供を試みた。具体的には,(1)有機物循環に関わる研究,(2)その他資材の利活用に関わる研究,(3)海外における実態分析,および(4)総論に区分し,それぞれの課題について,技術・社会の双方の側面から学際的接近を図った。
1.有機物循環に関わる技術的側面,社会的側面からの分析(5名)
一般家庭由来の生ごみ堆肥化に有効な「衣装ケースを利用した堆肥化」手法を取り上げ,細菌種の特定や細菌叢の変化などの堆肥化プロセスの分析を行い,菌種の適切な添加による高品質堆肥の製造可能性を示す(苅田)とともに,行政が生ごみリサイクルのシステム構築を主体的に行うことの有効性を指摘した(波夛野)。その他,畜産事業体における有機物の地域循環への組織デザインの重要性(石田),有機物の発酵過程で発生するメタン発酵液の肥料としての有効性と経済性(長谷川浩),堆肥に含まれうる重金属の回収方法としてファイトレメディエーション技術の適用可能性(小畑)を考察した。
2.その他技術の開発・普及に関する研究(3名)
住宅の外壁材に使用されるパルプ入りケイ酸カルシウム資材の肥料効果と耐病性(江原),水産業における有機物循環の取り組みであるカキ殻の再資源化のコスト問題(長谷川健二),持続的技術の1つとして注目されるBMW技術の広範な経営への適用可能性(大原)を明らかにした。
3.海外における実態分析(2名)
ベトナムにおける持続的農業技術の普及手法の解析(大原),パキスタンにおけるバイオマス技術の普及手法の解析(内山・大原),欧州における農業環境政策が農業経営の技術選択に与える影響(内山),について分析を行った。
4.総論(1名)
都市と農村を通じた有機物循環システム構築に向けた課題の整理を行った(内藤)。 -
南西太平洋における糖生産ヤシの生産生態と資源化に向けた潜在機能の探索と評価
2002年4月 - 2005年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
江原宏
担当区分:研究代表者
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極強酸性土壌における水稲根の酸化力と養分吸収力からみたアルミニウム耐性の品種間差
1995年4月 - 1996年3月
科学研究費補助金 奨励研究(A)
江原宏
担当区分:研究代表者
本学実験圃場内の水田土壌を用いて、酸性土壌条件をつくり出すための方法、並びに指示薬を用いて視覚的に土壌pHの変化を調査する方法を検討するとともに、土壌pHに対する日本型イネ品種の生育反応の差異を調査比較し、以下の結果を得た。
1.土壌の酸性化とアルミニウム含量
(1)土壌酸性化の検討
埴壌土水田土壌(pH5.94)に硫酸(36N)を添加し、pHの変化を調査したところ、土壌100gのpH変化は次のような指数式で表せることが明らかになった。
y=5.834e^<-1.889x> R^2=0.922
(2)人工酸性土壌のアルミニウム含量
上記の方法でpH3.90〜5.94の範囲で5段階のphが異なる土壌を設定し、yUANの方法により置換性アルミニウムを測定したところ、pH5.94では検出されず、pH3.90では11.85mg/100gの置換性アルミニウムが検出された。
2.ブロムフェノールブルーによる土壌pHの観察
通常ブロムフェノールブルーは0.1gを20mlのエタノールに溶解した後に100mlに調製するが、イネの発芽趣旨は極僅かでもエタノールを含む培地では生長が著しく阻害された。そこで、エタノールを用いずにブロムフェノールブルーを調製し、土壌に混入したところ、土壌は十分に染色され、pHの違いがはっきりと観察された。
3.土壌pHに対する日本型イネの生育反応の品種間差
日本型イネ10品種を用いて、上記のphの範囲における草丈、最長根長、地上部・地下部乾物重を調査したところ、pHに対する核形質の反応から次の3グループに分類できた。
・対アルミニウム性小:地上部・地下部とも生育阻害が小さい(ツクバハタモチ)
・対アルミニウム性中:地上部のみ生育が阻害される(コシヒカリ、ヤマヒカリ)
・対アルミニウム性大:地上部・地下部とも生育が阻害される(越路早生、他) -
水稲苗に対する移植直前の高窒素濃度処理に関する研究
1993年4月 - 2000年3月
科学研究費補助金 奨励研究(A)
江原宏
担当区分:研究代表者
イネの葉身構造変化を伴わずに,光合成機能を高め得る施肥法の開発を指向し,一時的に高濃度の窒素肥料を施用した場合の影響を調査した.その結果,2300ppmN,12時間の処理によって,葉身の薄化拡大を伴わないで葉面積当たり窒素含有量を高め得ることが明らかになった.一方,この処理による各部位の乾物重当たり窒素含有量の変化を調査したところ,葉身部に比較して葉鞘+茎部においてその増大が大きいことが,また,根部では他の部位に比べて増大程度が小さいことが明らかになった.そして,この処理を移植直前に行った苗を移植したところ,小肥条件において移植後約2〜3週間の純同化率,相対生長率が高まり,有効化する低次分げつの発生が促進され,穂数の増加を通じた1株穎花数の増加によって増収につながることが明確になった.さらに,本処理の効果は品種によって異なり,比葉面積が本来的に小さい品種において,処理による葉面積当たり窒素含有量の増大程度が大きく,移植後の生育促進効果が大きいことが明らかになった.他方,一時的な高培養液濃度条件下において,品種の違いによる窒素吸収の差異を窒素形態別に調査したところ,NH_4^+吸収量には統計的に有意な品種間差は認められなかった.それに対して,NO_3^-吸収量には明確な品種間差が認められること,また,その差異はインド型,日本型という生態型の別とは対応関係がないことが明らかになった.
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イネ科藁稈の消化性に対するアンモニア処理効果の発現機作に関する研究
1993年4月 - 1995年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
後藤正和
担当区分:研究分担者
アンモニア処理による麦稈の消化率の増加は、その柔細胞壁や厚壁細胞壁の内腔表面を覆う膜状構造の脆弱化や細胞壁内部への機械的損傷による、ルーメン微生物の飼料片への付着助長と密接に関連していることを明らかにした。この強固な膜状構造は木材の仮導管細胞壁に認められるwarts layerとは形状的に異なることから、個々の細胞が枯死する時に生活残渣とおぼしき堆積物が細胞壁内腔く覆ったものであることを電顕法で明らかにした。また、アンモニア処理稈ATAg染色による呈色性の低下を認め、無処理ならびにアンモニア処理稈からの水ならびにメタノール抽出区分の成分組成やIR分析から、ヘミセルロース側鎖に置換するアセチル基の解離などによる構造の単純化が呈色反応試薬に対するsensitivityの増加をもたらしているとし、アンモニア処理による構造性多糖の溶解と消化性改善効果との関係を否定した。アンモニア処理稈と無処理稈への粉体X線回折において、アンモニア処理によるセルロース結晶化度の低下(約20%程度)が認められた。これまで、水酸化ナトリウム処理やアンモニア処理によるセルロース結晶性への影響は認めておらず、本研究において初めて、その作用機作として解明された。さらに細胞壁の保水性や膨潤性の増大(アルカリ加水分解による効果)も観察された。両処理稈から抽出した磨砕リグニンの物理化学的特性と組織細胞壁のVis/UV顕微分光解析を行い、その作用効果は、主として、リグニン末端アルデヒド基への求核反応によること、平均分子量、フェノール性水酸基、メトキシル基などの基本骨格への影響はきわめて微小であることを明らかにした。
以上のことから、ルーメン微生物の飼料片への付着助長、セルロースの非結晶領域の拡大や細胞壁の膨潤性の増大とがアンモニア処理による大麦稈の消化性改善と密接に関連していることを明らかにした。