科研費 - 宇都木 昭
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アニメの声が喚起する「情動」を手がかりに声の文化的制度化を分野横断で捉える試み
研究課題/研究課題番号:21K18116 2021年7月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(開拓)
太田 一郎, 宇都木 昭, 太田 純貴, 菅野 康太, 石井 カルロス寿憲
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:23400000円 ( 直接経費:18000000円 、 間接経費:5400000円 )
「声」のことばの型が成立する(レジスター化する)様相を,声優たちが演じるアニメの声質の音響的な特性とその声が喚起する「萌え」「カワイイ」等の情動との関係を手がかりに,日本およびその他の異なる地域・文化等における調査により捉える。その結果を,社会言語学,音声学,現代思想,メディア論,さらには生物言語学の観点から分野横断的・融合的に考察し,ことばの文化的制度化が言語の普遍性と社会・文化の個別性の相互作用によって生じる様相を総合的に捉え,言語文化研究の新たな方向性を示すことを試みる。
(1) 今年度より新たに石井カルロス寿憲(理研上席研究員)が研究分担者として参加し,印象評定に基づくデータの選別,音響特性の抽出の工夫などを施して,これまで収集したデータにより精密な分析を実施した。その結果,キャラクターの異なりにいくつかの音響特性が影響すること,またこれまでの分析結果同様,それぞれのキャラクターには発話者間で一定の共通する傾向がみられることなどがわかった。この成果はICPhS2023(国際学会,2023年8月開催)において発表予定である。
(2) 2022年9月3日社会言語科学会の第4回シンポジウム(オンライン開催)「プロソディを通して見る社会とコミュニケーション」において,「社会言語学の「社会」と「プロソディ」」という題目で社会言語学の立場から本科研の成果の一部を含めて発表した(招待あり)。発表においては,バリエーション研究における「社会」の意味とその変遷,社会言語学におけるプロソディ研究の先行事例,社会音声学による声質の研究の成果とその問題点,「社会」を反映する研究を今後どのように行うかの可能性を述べた。
(3) 社会音声学ハンドブックの日本の社会音声学についての章を分担執筆した(出版準備中)。フォルマント周波数と強度,スペクトル傾斜,および基本周波数などがキャラクターの区別に寄与することを示唆し,アニメキャラの声質には一定の型があるのではないかということを指摘した。またそれらの音響特徴が社会的・文化的状況の変化と相互に影響を与えあい,声の社会的意味が移り変わる可能性があることを述べた。
(4) メディア文化を構成するメディアテクノロジーの物質性を読み解くための翻訳書(『メディア地質学』)を出版した。
本年度は,①アニメの声質の特徴を捉えるために,音響パラメータの分析をさらに進めること,②アニメの声質の一般的な音響的特性を明らかにするために,一般人女性の声を収録するなど新たなデータを収集すること,③アニメの受容状況やファンの活動等について,海外のアニメ関連イベント等での観察やインタビュー等の調査を行うことを予定していた。①に関しては新たな結果を得ることができ,おおよそ予定していたような進捗状況まで達した。しかしながら,コロナ禍の影響は予想した以上に長引いたため,②については対面での調査が困難であったこと,③については海外への渡航が著しく制限され調査を行うことができなかったことなどから,(4)という評価にした。
これまで行えなかった調査を実施するなどして遅れを取り戻し,研究を進展させる。①今年度行った声質の分析をさらに進めて情動との関連を追求する準備を行う,②一般人女性の声のデータを収集し,声優コース学生の声と比較する準備をする,③声優による新たな音声資料の収集を計画する,④声と触感性などの文化的概念の関連の検討を進める,⑤アニメの受容状況やファンの活動等について,アニメ関連のイベント等で調査やインタビュー等を行う。 -
アジアと欧米:コミュニケーションの文化差から言語の獲得過程を探る
研究課題/研究課題番号:20H05617 2020年7月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 特別推進研究
馬塚 れい子, 窪薗 晴夫, 酒井 弘, 小磯 花絵, 田中 章浩, 宇都木 昭, 川原 繁人, 辻 晶, 石原 尚
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:612430000円 ( 直接経費:471100000円 、 間接経費:141330000円 )
近年の研究から、欧米言語、主に英語を学ぶ乳幼児に比べて、日本語や他のアジア言語を学ぶ乳幼児の音韻発達と語彙発達が遅れることが分かってきた。本研究では「欧米乳児の語彙発達が語彙発達に親和性の高い母子コミュニケーションによって促進され、それが音韻の発達にも影響する」という仮説を立て実験的に検証していく。欧米とアジアの母子コミュニケーションには文化差が存在し、欧米型は共同注意を物に向けて物の名前を学ぶ機会が多く語彙発達を促進する可能性がある。欧米3言語とアジア4言語を学ぶ乳児の音韻発達、社会性の発達、母親の対乳児発話の特徴と、乳児が2歳になったときの語彙数を調査し、上述の仮説の妥当性を検証する。
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男性保育者のマザリーズ的特徴表出に関する研究-女性保育者との比較
研究課題/研究課題番号:20K02671 2020年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
児玉 珠美, 大嶽 さと子, 神崎 奈奈, 宇都木 昭
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
母親が乳幼児に直接語りかけるIDS(Infant-directed-speech)に表出されるマザリーズと呼ばれる特徴は、 乳幼児にとって言語発達のみでなく、情緒や社会性の発達に効果があることが多くの研究で 実証されている。母親のみでなく、父親による子育てや男性保育者による保育の必要性を示していくためにも、男性保育者の対 乳幼児発話に関する研究を進めていく必要があると考えられる。本研究においては、保育現 場の男性及び女性保育者の対乳幼児発話(IDS)を音声分析を通して比較検討し、男性保育 者の対乳幼児発話におけるマザリーズ的特徴について明らかにすることを目的とする。
母親が乳幼児に直接語りかけるIDS(Infant-dire cted-speech)に表出されるマザリーズとかける呼ばれる特徴は、乳幼児期乳幼児の発達にとって大きな影響を及ぼすことが多くの研究で実証されている。これまで母親のIDSに関しては国内外において多くの研究報告があるが、乳幼児に長時間関わる男性保育者のIDSに関する研究は非常に少ない。本研究においては保育現場の男性及び女に性保育者のIDSを 音声分析を通して比較検討し、男性保育者の対乳幼児発話におけるマザリーズ的特徴について明らかにすることを目的とする。
先行研究において、母親の場合では、全てのF0指標において、IDSのほうが対大人発であるADS(Adult-directed-speech)よりも大きいという結果が得られている(Igarashiら2013)。Igarashiらの音声分析方法をより簡易にした方法で、母親を対象としたデータの各指標について、対応のあるt検定を実施した結果、平均値、最高値、レンジについてIDSのほうがADSよりも大きく、先行研究とほぼ同様の結果が得られた。令和2年の研究においては、男性保育者23名の音声データを用いて、上記の方法によって計測されたADSとIDSの比較を行った。結果は、男性保育者のIDSについて、先行研究で確認された母親のIDSの特徴と同様となり、男性保育者のIDSにおけるマザリーズ的特徴表出のがあることを確認できた。さらに、令和3年においては女性保育者16名を対象とした音声分析を実施し、令和4年においては、母親16名を対象とした音声分析を実施した。当該年度をもって、母親、男性保育者、女性保育者のIDSとADSに関するデータをすべて準備することができたことは、研究活動を大きく前進させた。
本研究においては、補助期間中、下記の点について明らかにしていくことが目的である。①男性保育者の対乳幼児発話におけるマザリーズ的特徴表出の有無(令和2年度)、②女性保育者の対乳児発話におけるマザリーズ的特徴表出の有無(令和3年度)、③男性及び女性保育者の対幼児発話におけるマザリーズ的特徴表出の差異、母親との比較を含む(令和4年度)
令和4年度においては、母親の対乳幼児発話におけるマザリーズ的特徴表出の有無について明らかにすることはできたが、コロナ禍の影響のため、対面での音声録音の実施が1年ずつ遅れ、その結果、研究活動最終年にすべてのデータを確保し、研究成果を出すことが困難となったため。
男性保育者のIDSにおけるマザリーズ的特徴表出のがあることを確認できた。さらに、令和3年においては女性保育者16名を対象とした音声分析を実施し、令和4年においては、母親16名を対象とした音声分析を実施した。当該年度をもって、母親、男性保育者、女性保育者のIDSとADSに関するデータをすべて獲得することができた。承認していただいた1延長研究期間1年間においた、これらのデータをもとに分析、比較し、研究成果を出していくことが課題となる。具体的には、研究結果を論文としてまとめ、海外ジャーナルへの投稿を実施していく。 -
L2学習者におけるハングル読み書きの習得過程とその個人差に関する研究
研究課題/研究課題番号:19K00818 2019年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
宇都木 昭, キム ミンス, 神長 伸幸
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
韓国語(朝鮮語)は日本の多くの大学で第二外国語科目となっており,多くの学習者によって学ばれている。韓国語学習の特徴の一つは,「ハングル」という新たな文字を学ぶ点にある。韓国語教員の視点からみると,経験的にいってハングルの習得には個人差がある。しかし,どのような個人差があるのか,なぜ個人差が生じるのか,習得の困難さが他の能力と関係しているのか,といった点は明らかにされていない。本研究課題では,これらの疑問に挑む。
2021年度までの調査では、単音節の文字の習得にかんするオンラインテストを実施した。2022年度はここから発展させ、正書法の「深さ」との関係に注目した。正書法の深さは、言語の書記体系が音素レベルをどの程度直接的に反映しているかに関するものである。英語の正書法は音素と綴りの対応関係が複雑であり、深い正書法となっている。韓国語は、単音節を見る限り浅い正書法であるかのように見えるが、単語のレベルでは文字と発音の対応関係において形態音韻規則がかかわっており、形態音韻論でいうところの基底形に相当するような表記をするため、深い正書法になっているといえる。
このことをふまえ、2022年度のハングル習得に関するテストでは、2021年度のテストに形態音韻規則がかかわる単語を追加した。具体的には、連音と鼻音化がかかわる単語をそれぞれ2語ずつ(高頻度語彙1語、低頻度語彙1語)追加した。そのようにして作成したテストを用い、新たに調査協力者を募ってオンラインテストを実施した。
また、2022年度までに実施した調査の結果を分析し、2022年7月に国際韓国語教育学会で「韓国語学習者はどのような文字を誤りやすいのか―日本の韓国語学習者を対象とした多肢選択テストの分析―」(原題は韓国語)という題目で口頭発表をした。このときの発表原稿をもとに、さらに追加の分析も施した上で、論文としてまとめ、2023年3月には学術誌に投稿した。
当初の計画からは変更になったが、オンラインテストを行うという新たな方針のもとで順調に研究が進行している。研究実績の概要でも述べたように、2022年度のハングル習得に関するテストでは、2021年度のテストに形態音韻規則がかかわる単語の問題を追加し、さらに、参加者の注意度をチェックするためにビープ音の再生回数を問う問題を追加した。このようにして、2021年度の7問からなるテストから、2022年度には13問からなるテストへとアップデートした。これらをもとに、新たに調査協力者を募り、2022年5月から7月に9週にかけてオンラインテストを実施した。
また、成果の発表も進んでおり、2022年7月にオンライン開催された国際韓国語教育学会において、韓国語で口頭発表を行った。発表では質疑応答を通じて有益なフィードバックを得ることもできた。その後、追加の分析を施した上で英語で論文としてまとめ、2023年3月に学術誌に投稿した。
現在までの進捗状況にも述べたように、2022年度は新たなバージョンのオンラインテストを作成し、実施した。しかし、調査協力者数がまだ十分ではないため、同じテストを用いて新たに韓国語初級学習者から調査協力者を募り、同じオンラインテストを実施する。そのようにしてサンプル数を増やした上で、結果を分析する。
2022年に新たに追加した問題に対する分析は、2022年度中には行っておらず、2023年度に新たに行うことになる。この問題は形態音韻規則がかかわる単語であり、綴りの「深さ」によって難易度の高まった問題に対する正答率にどのような個人差が現れるかに注目することになる。それにより、旧バージョンの問題で正答率が高かかった参加者のうちでも、バリエーションが見られることが予測される。
以上のような観点に注目して分析を進め、学会で発表を行った上で、論文としてまとめて学術誌に投稿する予定である。
また、本年度が本研究課題の最終年度にあたることから、これまでを振り返った上で、今後の新たな研究課題へとつなげたい。 -
アニメの「声」の文化とその制度化を言語学,現代思想,メディア論の協同で捉える試み
研究課題/研究課題番号:17K18485 2017年6月 - 2020年3月
挑戦的研究(萌芽)
太田 一郎
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
アニメ声優が演じる「声」の音響的独自性が人びとの「感覚」に内面化した社会文化的な制度として確立している様子を主に言語学とメディア論の観点から複合的にとらえることを試みた。(1) 女性声優のアニメの声と一般女性の声を比較した結果,アニメの声にはより多くの倍音成分が含まれるなどスペクトル包絡に関わる特性が見られる,(2) アニメと声をめぐる状況は 声優とキャラの間の「演技」,キャラとファンの間の「受容(消費)」,ファンと声優の間の「情的関与」が考察の対象となる, (3) アニメ・声・身体の関係の議論についての重層的な声の受容を論じる聴覚文化論や「音象徴」などの言語学的知見が有効なことなどを示した。
本研究の学術的・社会的な意義は,[1] 音響分析や発話実験によってアニメの声質と一般人の声質の音響的な特性に異なりがあるという言語学的知見を得たこと,および[2] 独特の音声的特徴を「声の触覚性」という現代思想の概念を援用して感覚面から捉えるために,ポップカルチャー史,メディア史を背景に声優の系譜を洗い出し,声優研究には映像という視覚的要素が不可欠であることを指摘したことから,[3] 音韻論的体系を越えて新たに生まれてくる言語現象を,歴史的・文化的文脈へ位置づけながら文化として確立する様相に着目するという,言語と文化の関係を捉える研究に新たな転換の可能性を示したことにある。 -
研究課題/研究課題番号:17K02692 2017年4月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
吉田 健二, 林 良子, 坂本 清恵, 宇都木 昭, 新田 哲夫
担当区分:研究分担者
本研究課題の目的は鼻音をふくむ子音連鎖の構音運動の相互調整パターンを明らかにすることであり、リアルタイムMRIデータの検討により以下の知見を得た。
(1)「鼻的破裂」(英語・日本語福井方言・能楽師の伝承音)には構音・音響の両面で通言語的共通性がみられる。鼻腔・口腔の同時閉鎖につづく鼻腔の急な開放により、強い鼻腔音が産出される。(2) (1)と逆順の「非鼻音化」した鼻子音(韓国語・中国潮州語)では、鼻腔共鳴がよわく無音区間が短い。(1)(2)の両者は非対称で異質な構音パターンをもつ。(3) 鼻腔・口腔の構音運動の協調は、リアルタイムMRIによる観察によって詳細に捉えることが可能となる。
本課題の遂行をとおして、複数の構音運動の協調パターンを記述・定量化するためのリアルタイムMRI撮像データの利用の手法を確立することができた。対象とした鼻音をふくむ子音連鎖については、複数の言語にくわえて自然言語ではない能楽の伝承音もふくめて、構音運動の時間展開に共通性があることが見出された。また、鼻子音と非鼻子音の連鎖において、その出現順序が逆になると構音運動の持続時間や運動の大きさがおおきく変わるという「非対称性」が見出された。これらの知見により、言語音の産出における構音運動の相互協調にかんする理解を一歩進めることができた。 -
乳児音声発達の起源に迫る:アジアの言語から見た発達メカニズムの解明
研究課題/研究課題番号:16H06319 2016年5月 - 2021年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(S)
馬塚 れい子, 窪薗 晴夫, 酒井 弘, 川原 繁人, 宇都木 昭, 高田三枝子, 林 安紀子
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
本研究は、タイ語、韓国語、広東語、日本語という4言語を学ぶ乳児を対象として各言語の破裂音や単語レベルの韻律を獲得する過程を実験的に検証することを目標としていた。タイ語と韓国語は破裂音を3種類、広東語と日本語は破裂音を2種類持つ。主に欧米言語を対象とした実験から導かれた知覚狭窄仮説によれば、どの言語を学ぶ乳児も年少のうちから破裂音の対立を弁別できると予測される。しかし、本研究で対象とした4言語すべてにおいて、乳児が年少のうちから弁別できる対は無かった。タイ語の無声と無声有気音の対立は英語の有声・無声と同じ音響特性で弁別可能なため、タイ語の乳児にも弁別しやすいと予測していたが、これも年少児には弁別困難であった。これまでの結果は、乳幼児は大半の対立を弁別できるという知覚狭窄仮説を覆す可能性さえある重要な知見である。
また、タイ語は5種類、広東語は6種類の声調を持つ。広東語を対象として、3対の声調の組み合わせの弁別を調べたところ、2対は年少のうちから弁別できるが、1対は弁別できないことが分かり、年少児には、声調の方が破裂音よりは弁別し易い可能性が浮き上がった。又、日本語と韓国語では破裂音に関わる音響特性が世代間で急激に変化しており、乳児は祖母世代や母親世代から音響特性が混在する刺激を聞いて育つ。韓国語の破裂音の弁別実験に参加した乳児の母親が破裂音をどのように発音しているかと、乳児が破裂音をどの程度聞き分けているかの相関を分析したところ、母親が破裂音の無声・有声の対立をはっきりと区別して発音しているほど、乳児が破裂音をよく弁別していることが分かり、破裂音の弁別には、それぞれの母親の話す音声が影響していることが分かった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。 -
乳児の音素獲得のメカニズムに迫る:アジアの4言語の対照研究
研究課題/研究課題番号:16H01930 2016年4月 - 2017年3月
馬塚 れい子
担当区分:研究分担者
国際共同研究を行うに当たり、国内研究設備の設定、分担研究者・実験担当者等との研究打ち合わせ、予備調査、基盤整備を行った。次の科研費課題採択につき当該課題は廃止し、引き継ぐ。
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科研費基盤研究(S)16H06319『乳児音声発達の起源に迫る:アジアの言語から見た発達メカニズムの解明』 代表:馬塚 れい子
28年度が最終年度であるため、記入しない。
28年度が最終年度であるため、記入しない。 -
日本語と朝鮮語の局所的F0低下現象に関する実験研究
研究課題/研究課題番号:15K16736 2015年4月 - 2019年3月
若手研究 (B)
宇都木 昭
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:2860000円 ( 直接経費:2200000円 、 間接経費:660000円 )
「今朝つくった料理を捨ててしまった。」のような文においては,「今朝」が「つくった」を修飾するという解釈と「今朝」が「捨ててしまった」を修飾するという二通りの解釈が可能である。この二通りは,特定の部分でピッチ(音声の高さ)を低下させることで区別される。これがこの研究で扱う局所的F0低下現象である。このような現象は様々な言語に観察されるが,その実現の仕方や質的な際については,十分に検討されていない。本研究では,日本語と朝鮮語(韓国語)を対象として,この現象を研究した。分析に当初の予想以上に難航しており,まだ明瞭な結果を報告するには至っていない。
本研究は,二つの点で貢献の可能性を持つ。第一に,韻律の理論的研究に対して貢献しうる。様々な韻律モデルにおいて,局所的F0低下現象が韻律ユニット(音調句,中間句など)を規定するものとして位置づけられているためである。第二に,より社会に密接なところでは,音声教育(例えば,朝鮮語(韓国語)母語話者に対する日本語音声教育や日本語母語話者に対する朝鮮語音声教育)に貢献しうる。現象の言語間の差異が外国語の発音の不自然さにつながりうるためである。もちろん,音声教育に生かすには,言語間の差異や外国語音声の特徴の解明のみならず,どのように教えることで発音を矯正しうるかという観点からの研究も将来的に必要になる。 -
メディアの影響を組み込んだ言語の習得と変化に関する理論モデル構想のための試み
研究課題/研究課題番号:24652082 2012年4月 - 2015年3月
太田 一郎
担当区分:研究分担者
現代社会における言語の変化はテレビ等のメディアの影響によるものと考えられることが多いが,このことを科学的手続きに基づいて検証した研究はほとんど見られない。本研究は,鹿児島方言若年層話者の発話に見られるアクセント型の交替はメディアの影響によるものという仮説を立て,発話の産出,話者要因(年齢,ジェンダー,生育地,対人ネットワーク,日常行動,言語接触の様相,友人とのつきあい,パーソナリティなど),テレビ等のメディア利用の行動などのメディア要因の関連を検討してその検証を行った。その結果から,メディアの影響を取り入れた言語習得,変化のモデルの提示を試みた。
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無アクセント方言が共通語化する過程における音韻現象と音声的実現
研究課題/研究課題番号:24520418 2012年4月 - 2015年3月
基盤研究 (C)
宇都木 昭
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:5070000円 ( 直接経費:3900000円 、 間接経費:1170000円 )
本研究では,茨城県の方言を主たる対象としつつ,千葉県の方言も視野に入れ,方言の諸側面の基礎的特徴と変異を調べた。特に重点的に分析したのは,有声閉鎖音(たとえば「が」「ば」の子音)の特徴と助詞である。有声閉鎖音の特徴をめぐっては,先行研究において,二通りの発音があり,一つのタイプは東北地方で,もう一つのタイプは他の地域で主流であることが知られている。本研究により,茨城県の大部分では東北地方と同様の発音が主流であり,県西地域の一部において両タイプが混在していることが明らかになった。文法項目の調査については,調査結果をもとに,助詞「げ」の起源について新たな提案を行った。
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朝鮮語ソウル方言の韻律構造とイントネーション
研究課題/研究課題番号:245072 2012年
研究成果公開促進費
宇都木昭
資金種別:競争的資金
配分額:1000000円 ( 直接経費:1000000円 )
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言語の多様性と認知神経システムの可変性―東アジア言語の比較を通した解明―
研究課題/研究課題番号:23242020 2011年4月 - 2015年3月
基盤研究 (A)
酒井 弘
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
中国・韓国を中心とする東アジアの研究者と連携して国内外で実験を実施し,言語の多様性と脳の関係を明らかにする研究成果を東アジアから世界に向けて発信することができた.最も注目を集めた成果としては,敬語と敬意を対象とした事象関連電位計測実験によって脳の言語処理に文化的相違の及ぼす影響を明らかにし,ドイツ(ベルリン),日本(東京,広島)で開催された国際学会における招待講演,シンポジウム講演として発表した.
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北海道,福岡,鹿児島方言に見られる音調句の言語変化に関する社会言語学的研究
研究課題/研究課題番号:21320076 2009年 - 2011年
基盤研究(B)
太田 一郎
担当区分:その他 資金種別:競争的資金
日本語の地域方言の音調変異と言語変化の様相を,札幌,福岡,鹿児島の3つの地域(および参照グループとして東京)で,複合アクセント句(MAP)内のピッチ変動のあり方と言語内要因および言語外要因との関連でとらえることにより検証を試みた。その結果,札幌と福岡では若年層の発話のピッチは変動の幅が小さいこと,鹿児島は世代差よりジェンダー差が顕著であること,発話のスタイル間に差はないことなどが明らかになった。
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アクセントとイントネーションの離散性と連続性に関する実験研究
研究課題/研究課題番号:21820079 2009年 - 2010年
研究活動スタート支援
宇都木 昭
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:2665000円 ( 直接経費:2050000円 、 間接経費:615000円 )
研究計画に記載したように,本研究の目的は,韻律における離散性と連続性を検証するアプローチを生み出し,それをアクセントやイントネーションの諸現象に適用することである。これは,研究の客観性を高めるという点で,韻律研究において大きな進展をもたらしうる。1年目の本年は,当初の予定通り,アクセントを対象とし,高音声変異連続再生課題(high phonetic variability sequence recall task)を試した。
高音声変異連続再生課題は,被験者に2通りの無意味語を学習してもらったのち,これらの音声を連続して聞かせ,単語の順番を当てさせるという実験である。共通語話者(南関東出身者)のほかに,方言学において伝統的に無アクセントといわれてきた南東北の出身者も被験者とした。実験の結果は,高音声変異連続再生課題がアクセントの離散性の検討に有効であることを示すものであった。この手法はこれまでとられてきた範疇知覚実験のようなアプローチよりも頑健であると考えられ,その点において方法論上の進歩をもたらすものである。研究結果は2010年5月にシカゴで開催される国際会議Speech Prosody 2010において発表する予定である(採択済み)。
その一方で,当研究課題が採択される以前から行っていた朝鮮語慶尚道方言の研究の結果が,学術誌Language Researchに掲載された。これは,慶尚南道馬山・昌原方言において二つの音調型が合流しつつあることを示したものである。朝鮮語のアクセントは当研究課題における検討対象の一つでもあるため,この論文で扱った内容は当研究課題の基礎をなすものでもある。