科研費 - 松永 克志
-
研究課題/研究課題番号:19H05786 2019年6月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
松永 克志, 吉矢 真人, 中村 篤智
担当区分:研究代表者
配分額:207610000円 ( 直接経費:159700000円 、 間接経費:47910000円 )
材料中の結晶欠陥はバルクと異なる原子配列に基づき特異な量子場を形成する。こうした量子場は、材料の各種特性に大きく影響するとともに、多量の希少元素を要することなく新規な機能を発現させるため、その系統的理解が重要な研究課題となっている。そこで本計画研究では、代表的な結晶欠陥である「転位」を主対象として、転位の機能発現の源となる量子場を「転位機能コア」と位置づけ、それと材料機能の相関を解明することで、「機能コアのモデリング」を達成する。
転位は塑性変形を主として担う欠陥として精力的に研究が進められてきた。しかし、転位による材料機能の発現メカニズムに関して未だに理解が十分ではない点が多く、新機能材料創成の為に転位と機能の関係を明らかにすること期待されている。本研究では様々な結晶格子欠陥のうち転位に焦点を当て、その特異な原子配列から生じる機能発現量子場を「転位機能コア」として位置づける。転位およびその量子場のモデリングを通じ、精緻な実験及び量子レベル計算を通じて転位機能コアの機能発現学理を構築することを試みている。
令和4年度には、塑性変形による転位導入ならびに双結晶実験により周期的な転位の創製を行った。さらには、それらにおける電気伝導、熱伝導、光物性の評価を行った。双結晶を用いた実験結果の1つとして、転位の電気伝導度に対応して転位に沿った熱伝導特性が変化することを確認した。これは転位の熱伝導が電気伝導と関係が深いことを示唆している。また、酸素が面心立方副格子を有し八面体格子間位置に小さなマグネシウムイオンが位置する酸化マグネシウムに加え、閃亜鉛鉱型結晶構造を有する窒化ガリウムや3元系チタン酸ストロンチウムを含め対象を3つのモデル材料に広げ、完全転位が熱伝導度に与える影響の定量評価並びに解析を行った。その結果、その熱伝導低下メカニズムは原子間の結合特性や結晶構造により大きく異なり、音響モード支配と仮定して構築されてきた従来の熱伝導理論に従わず、材料系や転位コア構造により多彩な協調原子振動場を形成することを明らかにした。
これまでのモデル材料に加え、ウルツ鉱型構造を有する窒化ガリウムおよび閃亜鉛鉱型構造を有するリン化ガリウムをモデル材料として加え、共有結合的な原子間結合や低配位数結晶構造における転位機能コアの形成および協調原子振動場の理論計算による定量評価を行った。また、塑性変形による転位導入ならびに双結晶実験により周期的な転位の創製とそれらにおける電気伝導、熱伝導、光物性の評価を行った。双結晶法により転位を導入した転位列において、電気伝導特性に対応する形で熱伝導特性が変化する傾向が確認できた。これは転位に沿った電気伝導が熱伝導にも大きく影響することを示唆している。詳細な理論計算により、モデル材料の1つである窒化ガリウムの場合には、刃状転位の導入により完全結晶から大きく熱伝導度が下がることは酸化マグネシウムと共通するものの、転位コア構造が熱伝導に与える影響が大きく異なる事が明らかとなった。これは低配位数構造に由来し、完全結晶へのひずみ印加が原子間結合長の変化のみならず、結合角をも変化させることが原因であることを明らかにした。
これまでの研究から転位機能コアの多彩な機能発現が系統的に示されている。今後も引き続き、実験及び計算の融合を図り、転位機能コアの特異な物性の発現機構の解明を行っていく。実験面では、引き続き、塑性変形による転位導入ならびに双結晶実験により周期的な転位の創製とそれらにおける電気伝導、熱伝導、光物性の評価を行う。特に半導体材料の転位の機能特性計測方法をさらに改良して精緻に調査していくとともに、熱処理条件に伴う転位の局在構造変化がどのように転位の構造と機能に影響するのか実験面から検証する。計算面では、実験的に転位近傍で電子伝導度が大幅に上昇することが確認されているチタン酸ストロンチウムに改めて焦点を当て、完全転位が部分転位とその間の積層欠陥に分かれる影響を明らかにするとともに、量子波動の散乱の観点からはともに増加する相関関係にある電子伝導と熱伝導を選択的に制御できるかどうかを理論面から検証する。 -
研究課題/研究課題番号:19H05785 2019年6月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
松永 克志, 阿部 真之, 遊佐 斉, 柴田 直哉, 平山 雅章, 溝口 照康, 太田 裕道, 北岡 諭
担当区分:研究代表者
配分額:107120000円 ( 直接経費:82400000円 、 間接経費:24720000円 )
本領域研究では、世界最高水準の電子状態計算、モデル実験、ナノ計測を三本柱とし、機能材料、エネルギー材料、構造材料分野で高い研究業績を上げている研究者らと一体になって、機能コアの概念に立脚した新しい材料科学の学理を構築する。総括班ではこの領域の目的を達成するため、1)研究領域の全体的な研究方針策定、2)連携研究および設備有効利用の促進、3)若手相互派遣による人材育成・国際活動支援、4)公開シンポジウム等の成果公表活動、5)アウトリーチ活動、を行う。さらに、連携研究が最大限の効果を上げるよう、計算解析センター、ナノ計測センター、モデル試料センターを設置し、領域内研究を支援する。
本領域研究では、世界最高水準の電子状態計算、モデル実験、ナノ計測を三本柱とし、機能材料、エネルギー材料、構造材料分野で高い研究業績を上げている研究者らと一体になって、機能コアの概念に立脚した新しい材料科学の学理を構築する。総括班ではこの領域の目的を達成するため、以下のような活動を行った。
1) 2022年9月30日および2023年3月28日に総括班会議を開催し、本領域の研究進捗状況について議論した。また、今後の領域運営や計画班運営について、各計画班研究代表者に助言・指導を与えた。さらに、2022年9月30日に領域全体会議をオンライン開催し、第2期公募研究者と領域内研究者との意見交換を通じて今後の研究連携を促した。
2)連携研究および設備有効利用の促進のため設置している、計算解析センター、ナノ計測センター、モデル試料センターについて運営状況の確認や今後の方針策定を行った。
3)若手育成支援としてオンラインでの若手の会(若手コラボツアー)を計2回実施した。
4)成果公表活動として、2023年3月28日に2022年度公開シンポジウムをハイブリッド開催した。また国内学会での公募シンポジウムを1件、国際会議での協賛シンポジウムを1件主催し、機能コアのコンセプトを国内外に広く公表・周知した。
5)アウトリーチ活動として、名古屋大学で開催された「テクノフェア名大」で市民公開講座を行い、一般も含む参加者に広く本領域のコンセプトおよび研究成果を周知した。また、オープンキャンパスでの研究室紹介、河合塾での模擬講義などによる中高生への研究紹介も行った。さらには、SNS等を活用した本領域の情報発信にも取り組んだ。
本年度においては、以下のことを実施した。
1) 研究領域の全体的な研究方針の策定:総括班会議を2回開催した。本領域研究がすでに学術的に先導している部分、もしくは今後さらに強化・補充していくべき部分を明らかにし、総括班研究分担者でもある各計画研究班代表者に助言・指導を与えた。また、領域全体会議をオンライン開催した。今回は第2期公募研究者が、研究計画に関する話題提供を行い、領域内研究者との活発な質疑・意見交換により、今後の研究連携の可能性を検討した。2) 連携研究および設備有効利用の促進:本領域研究の3つの核心的技術要素である、計算解析センター、ナノ計測センター、モデル試料センターを設置し、体制作りおよび運営方針策定を行った。3) 若手相互派遣による人材育成・国際活動支援:若手育成のための活動として、学生や若手研究者が主催するオンラインでの研究会(若手の会)を計2回実施した。本年度は、大阪大学、ファインセラミックスセンター、大阪公立大学が世話役を務めた。4) 公開シンポジウム等の成果公表活動:2023年3月28日に2023年度公開シンポジウムを開催し、今年度の研究成果を報告するとともに、領域メンバーとともに今後の研究計画について討論・意見交換した。さらに、2022年9月20日~23日に日本金属学会において公募シンポジウムを主催した。2022年11月21日~23日に協賛国際会議を開催し、国際的な情報発信にも努めた。5) アウトリーチ活動:2022年10月15日に名古屋大学で開催された「テクノフェア名大」で本領域に関する市民公開講座を行い、一般も含む参加者に広く本領域のコンセプトを周知した。また、本領域のYouTubeチャンネルおよびTwitterを開設し、広く情報発信も行った。
以上の活動により、本領域の運営や若手育成支援、広報活動に関し、おおむね順調に進展しているといえる。
次年度も継続して、領域内運営を円滑に進めるべく総括班活動を行う。現在計画中の総括班関連活動およびイベントは、以下の通りである。
1) 総括班会議:研究領域の全体的な研究方針の策定を行う。2) 領域全体会議:最近の研究トピックスを抽出し、領域内研究者との質疑・意見交換により、今後の研究連携の可能性を検討する。3) 公開シンポジウム:年度末に、今年度の研究成果を広く領域外にも報告するとともに、領域メンバーとともに討論・意見交換する。4) 領域内の院生・若手研究者を対象とした若手の会:若手育成のための活動として、学生や若手研究者が主催する研究会(若手の会)を実施する。今年度は東京大学での開催を予定している。5) 国内学会での公募シンポジウム:日本金属学会において公募シンポジウムを主催する。6) 国際会議MRM2023において機能コア科学シンポジウムを開催する。7) 一般に広く研究を紹介するアウトリーチイベントに出展、YouTube上での広報活動も実施する。 -
データ駆動科学援用第一原理計算による複合リン酸カルシウムの構造・機能設計
研究課題/研究課題番号:23K17831 2023年6月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
松永 克志
担当区分:研究代表者
配分額:6370000円 ( 直接経費:4900000円 、 間接経費:1470000円 )
高齢社会を迎えた我が国においては、高性能な生体材料の開発に大きな期待が寄せられている。そのためには、生体材料特性に関わる現象を原子・分子レベルで理解し、生体材料を設計することが望ましい。しかしそのような取り組みはほとんど行われてことなった。本研究では、有機分子を取り込んだリン酸カルシウムの構造と機能を、高度な計算科学を駆使して解明する。従来の材料開発手法とは異なる、生体材料研究における大きな変革のきっかけとしたい。
-
第一原理熱力学計算によるリン酸カルシウム結晶の有機分子修飾機構の解明
研究課題/研究課題番号:21K18818 2021年7月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
松永 克志
担当区分:研究代表者
配分額:6370000円 ( 直接経費:4900000円 、 間接経費:1470000円 )
人工骨や人工歯根のような生体代替材料開発において、リン酸カルシウム結晶と有機材料との複合化による材料機能発現が目指されている。そこでは、リン酸カルシウム結晶と有機分子が形成する界面の安定性やその起源となる界面相互作用様式が、重要な材料設計指針となる。しかしこれに関する電子・原子レベルからの知見はほとんどない。そこで本研究では、有機分子で修飾したリン酸八カルシウム結晶に着目し、第一原理計算により熱力学的安定性や異なる有機分子に対する選択性について解明することを目的とする。この成果を、リン酸カルシウムと有機分子の複合化に関する基礎学理構築への契機としたい。
リン酸カルシウム結晶と有機分子との複合化による生体材料特性向上を目指すには、リン酸カルシウム結晶と有機分子が形成する界面構造やその安定性に関する知見が重要な材料設計指針となる。本研究では、ジカルボン酸分子で修飾したリン酸八カルシウム結晶に着目し、第一原理計算によりその結晶構造および熱力学的安定性を解明することを目的とした。ジカルボン酸としてコハク酸を主な研究対象とした。既往の実験データとの比較検討から、計算結果の妥当性を確認することができた。また、界面結合状態解析および形成エネルギー評価に基づく熱力学的安定性から、同コハク酸分子修飾結晶の形成機構を明らかにすることができた。
最近のリン酸カルシウム系バイオセラミックスの研究開発では、リン酸カルシウム単体としてではなく、機能性有機分子との複合化が一つのトレンドである。しかし、これに関する電子・原子レベルの知見はほとんどなかった。本研究から、複雑な生体材料構造を計算科学により解明することが可能となった。生体材料研究の新しいアプローチとして、今後の研究開発に応用されていくことが期待される。 -
研究課題/研究課題番号:21H04618 2021年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
松永 克志
担当区分:研究代表者
配分額:42640000円 ( 直接経費:32800000円 、 間接経費:9840000円 )
半導体やセラミックスに用いられる無機結晶は、強固な化学結合性故に、室温で強度は高いが脆い性質をもつとされてきた。しかし近年の硫化亜鉛(ZnS)結晶に関する研究により、周囲の光環境が結晶の機械的性質に大きな影響を与えていることが判明した。しかし、同現象がどのような結晶で発現するのかについては、未だ明らかになっていない。本研究では、ZnSと同じ閃亜鉛鉱構造を持つ化合物半導体結晶を対象とし、光硬化現象のメカニズムと重要因子を明らかにする。
閃亜鉛型結晶構造を有する、II-VI族化合物半導体結晶である硫化亜鉛(ZnS)単結晶は、通常の白色光下では数%の塑性歪みを示したのち急激な破壊を示す(光硬化現象)のに対し、暗室下では10倍以上の塑性歪みを示す。この成果により、従来から脆いと考えられてきた無機結晶であっても、光環境を変えることで、機械的性質を大きく制御できる可能性が広がったといえる。しかし、ZnSの光硬化現象の起源である転位量子構造はZnSに特有なものなのか、他のII-VI族、III-V族化合物半導体では起こりうるのか、については解明されていない。そこで本年度においては、ZnSe, ZnTe, CdS, CdSe, CdTe(II-VI族)半導体結晶について、第一原理計算によるすべり転位の電子原子レベル構造解析を系統的に行った。各結晶に対する転位スーパーセルについて、転位コア近傍の原子配列や転位生成エネルギーのセルサイズ依存性を調べて、計算精度の検証を行った。また、これらの結晶における最安定な転位構造は、ZnS結晶中のそれと同様であることが判明した。さらに、過剰キャリアの影響も検討したところ、ZnSと同様に過剰キャリアによる転位コア再構成が生じることも明らかにした。また、ZnTe単結晶について室温での圧縮機械試験を行い、光照射硬化についての検証実験を行い、同現象の再現性を確認するとともに、他の系に対する実験条件の基礎的検討も行った。
これまでの研究により、ZnS結晶が示す光硬化現象の重要因子は、すべり転位コアにおける局在した量子構造であることを明らかにしてきた。同様な現象が他の化合物半導体結晶でも起こりうるのかを調べるため、本年度では、以下の項目について検討を進めた。これらは当初予想・計画していた通りであり、おおむね順調に進展していると考えている。
(1) 第一原理計算モデルの検討:II-VI族系の複数の結晶に対し、転位コア近傍の原子配列や転位生成エネルギーのスーパーセルサイズ依存性を調べて、計算精度の見積を行うことで、得られた結果の確度を検証できた。また水素終端モデルでは、終端水素付近で静電ポテンシャルの局在が観察され、このアーティファクトが転位量子構造評価の障害となることが判明した。
(2) 光硬化メカニズムの検討:第一原理計算で得られる転位コアの局所的電子状態は、光励起前の基底状態のそれに相当する。これまで検討してきた、II-VI族Zn系およびCd系半導体結晶では、ZnSで解明してきた転位コアでの量子構造や過剰キャリア存在下の最安定構造などに関して、同様な電子・原子レベル構造を持つことを明らかにできた。
(3) 実験検証:ZnTe, ZnO, GaP等の高純度単結晶を用いて、光環境制御下での室温圧縮試験を行い基礎的実験条件の検討を行った。試料に対する光照射角度や照射光強度について検討し、最適な実験条件を求めた。
同様な現象が他の化合物半導体結晶でも起こりうるのかを調べるため、以下の項目について検討を進める。とくに、III-V族半導体のGaN、GaPとの間に差異が見られるかどうかに着目する。1) 第一原理計算によるすべり転位の電子・原子レベル構造解析:転位スーパーセルを構築し、転位コア近傍の原子配列や転位生成エネルギーのセルサイズ依存性を調べて、計算精度の検証を行う。また、転位コアにおける原子配列再構成の可能性を検討するとともに、過剰キャリアの存在が転位コアの原子配列や転位の熱力学的安定性に及ぼす影響も検討する。2) 光照射硬化についての検証実験:光環境制御下での室温圧縮試験を行い、同現象が発現するかどうかを検証する。試料に対する光照射角度や照射光強度について検討し、同現象の再現性を確認する。転位組織観察も検討する。 -
機能コアの材料科学
研究課題/研究課題番号:6103 2019年6月 - 2024年3月
新学術領域研究(研究領域提案型)
松永 克志
担当区分:研究代表者
-
生体活性リン酸カルシウムにおける表面ポテンシャルの電子論的起源解明
研究課題/研究課題番号:19K22048 2019年6月 - 2021年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
松永 克志
担当区分:研究代表者
配分額:6370000円 ( 直接経費:4900000円 、 間接経費:1470000円 )
生体骨の持つしなやかな機械的性質は、コラーゲン繊維とアパタイト(HAP)結晶との静電的相互作用が起源となっている。つまり、生体材料特性の発現において、六方晶構造をもつHAP結晶表面の静電ポテンシャルが重要因子となっている。しかし、「HAPのa面は正、c面は負に帯電」という、従来の経験的知見に対する電子・原子レベルの起源は未解明であった。本研究では、第一原理計算を用いて、HAP/水溶液界面での安定原子配列およびHAPの表面ポテンシャルとその結晶方位依存性の起源を解明することを目的とする。
バイオセラミックスの生体材料特性の起源となる、ハイドロキシアパタイト(HAP)/水溶液界面での安定原子配列と表面ポテンシャルの結晶方位依存性の起源を、第一原理計算をベースとした手法で電子レベルから明らかにすることを目的とした。水溶液環境下で安定なHAP表面は、化学量論組成の{0001}面とCa-rich {1010}面であった。さらに各表面の表面ポテンシャルから等電荷pHを求め、中性pH条件での表面荷電状態を調べたところ、{0001}表面とCa-rich {1010}表面はそれぞれ、負と正に帯電していることがわかった。実験結果とよく対応した結果が得られた。
高齢社会の到来にともない、生体用セラミックスの高機能化が重要な研究課題となっている。本研究では、人工骨の高機能化に関わる、アパタイト表面の荷電状態の理論的解析を行った。これまで実験報告されていた表面荷電状態の結晶学的異方性を再現することが確認できた。アパタイトとタンパク質、有機分子との複合化など、材料設計指針となることが期待できる。 -
研究課題/研究課題番号:18H03838 2018年4月 - 2021年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
松永 克志
担当区分:研究代表者
配分額:44850000円 ( 直接経費:34500000円 、 間接経費:10350000円 )
本研究では、ZnS、ZnTe等におけるすべり転位を第一原理計算により解析し、これらの結晶が示す光環境に依存した大塑性変形の起源を解明することを目的とした。ZnS結晶中のすべり転位は、積層欠陥を介して部分転位に分解している。基底状態での部分転位コアは、未再構成構造となるが、過剰なキャリアの存在下で再構成することがわかった。転位コアの再構成は、転位の移動度低下をもたらすと考えられる。よって、転位コアによるキャリアトラップと原子配列再構成という転位量子構造こそが、同結晶の光照射による硬化現象の起源であると考えられる。また、ZnTe結晶も同様な結果となることがわかった。
セラミックスは、他の材料にない優れた物性を持つ材料であるが、その脆い機械的性質がさらなる応用を阻んできた。しかし最近の研究で、光の有無によって、機械的性質が劇的に変化する無機結晶が存在することが判明した。本研究では、その代表例である硫化亜鉛結晶を主たる対象とし研究を進めたところ、その現象の起源がすべり転位という格子欠陥の局所的な電子状態にあることを明らかにした。この知見を活かした、材料合成や加工方法への応用とそれに伴う新たな展開が期待できる。 -
バイオセラミックス界面におけるイオン・分子挙動の精密解析
研究課題/研究課題番号:17K18982 2017年6月 - 2019年3月
挑戦的研究(萌芽)
松永 克志
担当区分:研究代表者
配分額:6370000円 ( 直接経費:4900000円 、 間接経費:1470000円 )
水溶液溶媒効果を考慮した電子状態計算に基づいて、水溶液/ハイドロキシアパタイト(HAP)界面の安定原子配列を求めた。HAP表面の荷電状態を検討したところ、水溶液と接する(1010)面では、化学量論組成やP rich組成の場合より、Ca rich組成の表面がより安定であった。Mg2+とZn2+は、バルク中への置換固溶の場合と比較して、界面近傍で置換エネルギーが著しく低かったが、最安定サイトは異なった。
ハイドロキシアパタイトは生体代替材料として重要であり、生体親和性のさらなる向上が求められている。ハイドロキシアパタイトの高性能化には、生体親和性の起源となる水溶液と結晶界面におけるイオン・分子の挙動を解明することが必要不可欠であるが、その詳細は不明な点が多い。本研究では、第一原理計算をベースとした高精度計算科学を用いた研究を行った。水溶液/アパタイト界面での安定原子配列や点欠陥形成機構を電子・原子レベルから解析できるようになり、アパタイト材料の高機能化の重要因子を解明することができた。 -
原子・イオンダイナミクスの超高分解能直接観察に基づく新材料創成
研究課題/研究課題番号:17H06094 2017年4月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 特別推進研究
幾原 雄一, 柴田 直哉, 中村 篤智, 石川 亮, 馮 斌, 栃木 栄太, 溝口 照康, 関 岳人, 松永 克志
担当区分:研究分担者
最先端原子分解能(S)TEM法を、“原子・イオンダイナミクスの直接観察法”へと大きく進化させ、高速電子線走査・検出システムの開発や環境制御試料ホルダーを開発するとともに、転位や亀裂の挙動、原子拡散挙動、粒界移動など、これまで不明であった材料現象を原子レベルで明らかにした。これより、ナノ構造と機能発現の本質的メカニズムを解明し、ナノ構造設計・制御指針を確立することにより、新材料開発の基礎・基盤学理を構築した。
本研究から生み出された“原子・イオンダイナミクスの直接観察法”は、材料科学における新たな計測手法であるのみならず、これまでブラックボックスであった材料ナノ構造と機能特性との相関性の根本的な理解につながり、その学術的意義は極めて大きい。また、得られた成果は、材料ナノ構造のダイナミクスを利用した構造・機能材料の設計・開発に直結し、材料開発分野ならびに産業応用分野へのさらなる波及効果が期待できる。 -
ナノ構造情報のフロンティア開拓-材料科学の新展開(国際活動支援)
研究課題/研究課題番号:15K21748 2015年11月 - 2018年3月
新学術領域研究(研究領域提案型)
田中 功
担当区分:連携研究者
本国際活動支援班では,国内外での国際会議,シンポジウム,ワークショップなどの機会に,領域メンバーやポスドク研究者,大学院生などが積極的に成果発表を行うことで,国際的な研究ネットワークの構築,その場への若手研究者の参加促進と,国際的な研究のリーダーシップを取ることに努めた.また,領域での成果をまとめた英文での書籍と雑誌特集号の出版および大学院生および若手研究者の海外派遣を行った.
-
神経回路数理モデルによる高精度原子間ポテンシャル開発とセラミックスへの応用
2015年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金
担当区分:研究代表者
-
ナノ構造解析のフロンティア開拓
2013年7月 - 2018年3月
科学研究費補助金 特定領域研究
担当区分:研究代表者
-
ナノ構造情報のフロンティア開拓-材料科学の新展開
研究課題/研究課題番号:25106001 2013年6月 - 2018年3月
新学術領域研究(研究領域提案型)
田中 功
担当区分:連携研究者
総括班では,領域の全体的な研究方針の策定,企画調整,研究成果の適正評価,研究連携の円滑化・促進,公募による新テーマ発掘,若手育成プログラムの推進,公開講演会・シンポジウム等の企画・実行,海外のトップグループとの情報交換・協力体制構築,国民との科学・技術対話推進,産業界への情報発信などを行った.
また,個別の成果を統合し,新しい学術基盤の創成に貢献するために,領域代表者を編集者として,書籍"Nanoinfomatics"を出版した. -
ナノ構造解析のフロンティア開拓
研究課題/研究課題番号:25106002 2013年6月 - 2018年3月
新学術領域研究(研究領域提案型)
松永 克志
担当区分:研究代表者
配分額:150930000円 ( 直接経費:116100000円 、 間接経費:34830000円 )
本研究では、第一原理計算に基づく理論計算技術および走査型プローブ顕微鏡を用いた物性計測・原子操作技術によるナノ構造情報獲得手法の開発を行い、酸化チタン表面の吸着原子やクラスタなどの持つナノ構造情報を定量的に抽出した。また、表面ナノ構造評価を効率的に行うため、パルスレーザー堆積法と原子間力顕微鏡の複合装置(PLD/AFM)を開発した。さらに、触媒材料だけに留まらず、機能性セラミックス界面や固体イオニクス材料についても,領域内で連携体制をとり、新規材料創製に資するようなナノ構造情報の系統的な抽出を行った。
-
アパタイト表面修飾イオンの持つ局所電子状態の解明
2013年4月 - 2016年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究代表者
-
ダクタイルイオン結晶における特異な局所化学結合発現の理論的検証
2013年4月 - 2015年3月
科学研究費補助金
担当区分:研究代表者
-
第一原理格子ダイナミクスによるアパタイト型高速イオン伝導体の拡散機構解明
2012年4月 - 2013年3月
科学研究費補助金
担当区分:研究代表者
-
水溶液環境を考慮したアパタイト中のドーパント固溶と炭酸イオン効果
2009年4月 - 2012年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
担当区分:研究代表者
-
機能元素のナノ材料科学
2007年10月 - 2012年3月
科学研究費補助金 特定領域研究
担当区分:研究分担者