科研費 - 大槻 主税
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研究課題/研究課題番号:22K19894 2022年6月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
大槻 主税
担当区分:研究代表者
配分額:6370000円 ( 直接経費:4900000円 、 間接経費:1470000円 )
次世代の人工骨用素材には、体内で材料周囲の環境の変動に応じて、薬剤徐放や自己修復といった生体応答性を示す機能が求められている。本研究課題では、生体応答性材料の設計概念の確立を目指して、リン酸エステルのチタン(Ti)化合物やジルコニウム(Zr)化合物を利用して、酵素の存在に対する応答性を調べる。酵素としてアルカリフォスフォターゼ(ALP)の存在を対象として、その存在に応答した材料の溶解やヒドロキシアパタイト(HAp)の析出現象が起こる条件を生体外(in vitro)試験で調べる。さらに、チタンやジルコニアの基板表面にリン酸エステル化合物をコーティングする技術を開発する。
人工骨は、機能不全となった骨を修復するための医療機器であり、超高齢社会の医療を支えるために、さらなる高機能化が求められている。これまで人工骨の素材としてリン酸カルシウム系セラミックスがあり、骨と結合する性質(骨結合性)を発現する生体活性材料として知られている。しかし、生体内の環境に応答する人工骨用素材は未開拓である。本研究課題では、次世代の人工骨用バイオマテリアルとして「生体応答性材料」の概念を用いて、従来生体不活性材料として利用されてきたチタン系金属やジルコニアを適用し、新たな人工骨用素材の開拓を目的にする。酵素としてアルカリフォスフォターゼ(ALP)を対象にし、その存在に対する応答性を、ヒトの血漿を模倣した擬似体液(SBF)を用いた生体外(in vitro)試験で調べる。さらに、チタン系やジルコニアの基板表面にリン酸エステル化合物をコーティングする技術の開発も目指す。
2022年度は、チタン系材料の表面を過酸化水素水とリン酸を含む溶液で直接にリン酸チタン系の化合物を作製する方法、ならびにジルコニア表面を液相中でのレーザー処理によりリン酸ジルコニウム系化合物を形成させる条件を探索した。適切な条件を選択することで、リン酸チタンがチタン金属板上に、リン酸ジルコニウム基板上にリン酸ジルコニウムを形成させることに成功した。一方で、層状構造を持つリン酸化合物の層間を有機修飾する技術を探索するとともに、その層間にコバルトイオンなどの生体微量元素の導入も行った。これら術をさらに拡大することで酵素に応答するリン酸エステルの導入条件を調べていく。
リン酸チタンやリン酸ジルコニウムを基板上に合成することに成功している。ただし有機修飾を効率よく行うために層状化合物の形成を検討していたが、その点は未解決で課題として残っている。一方で層状化合物で有機修飾したリン酸ジルコニウムであれば、その層間を有機修飾し、徐々に生体環境で分解することを明らかにしているので、この性質を利用すればリン酸エステルを導入することによって、酵素応答性をもつリン酸ジルコニウムが創生可能であり、またその技術をチタン金属へと展開できると期待される。これらの応答性をもつ材料を細胞培養試験により評価する予定であるが、まだ知見の収集が十分とは言えず、さらに、種々の細胞培養の実験を拡大する必要がある。それらにより、所期の目的達成が達成できると考えられる。
層状リン酸チタンや、層状リン酸ジルコニウムを合成するには、これまでの反応条件よりもより温和な条件が必要になると推察される。その条件でかつ有機分子との反応が起こる条件を探し出すことで酵素応答性分子を導入したチタン系材料、ジルコニア系材料が得られる。さらに、細胞培養の実験等で細胞への刺激性を含めた応答性について、進める。これらの実験を数多くの繰り返すことで知見を積み重ねる。 -
ヒドロキシアパタイトの生成を伴う無機/有機複合生体材料の構築
研究課題/研究課題番号:21H02027 2021年4月 - 2024年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
大槻 主税
担当区分:研究代表者
配分額:17810000円 ( 直接経費:13700000円 、 間接経費:4110000円 )
リン酸カルシウム系化合物の1つであるヒドロキシアパタイト(HAp)のセラミックスは、特異な生理学的活性を発現する材料であり、骨欠損を補填する人工骨として実用化されている。しかし、HApセラミックスでは自家骨に匹敵する機械的特性は得られていない。本研究では、自家骨に匹敵する機械的特性を持つ人工骨の創製を目指して、無機/有機複合生体材料の新規合成プロセスを探索する。新たに提案する合成プロセスは、HApの生成を行う反応場に、高分子を共存させることを特徴とする。複合化プロセスの解明と機械的強度向上への指針の確立、ならびに新規な無機/有機複合材料を構築するための基盤となる学理を開拓する。
リン酸カルシウム化合物の1つであるヒドロキシアパタイト(HAp)のセラミックスは、特異な生理学的活性を発現する材料であり、骨欠損を補填する人工骨として実用化されている。しかし、HApセラミックスでは自家骨に匹敵する機械的特性は得られていない。本研究では、自家骨に匹敵する機械的特性を持つ人工骨の創製を目指して、無機/有機複合生体材料の新規合成プロセスを探索する。新たに提案する合成プロセスは、HApの生成を行う反応場に、有機高分子を共存させることを特徴とする。複合化プロセスの解明と機械的強度向上への指針の確立、ならびに新規な無機/有機複合材料を構築するための基盤となる学理を開拓する。
2022年度は、α型リン酸三カルシウム(α-TCP)とともにHApの結晶や、β型リン酸三カルシウム(β-TCP)を用い、これらを複合して用いる複合材料も検討した。これに加え、一方、有機高分子のマトリックスに選択した親水性の合成高分子樹脂を種々の濃度で変化させたマトリックスを用いながら、無機/有機複合材料の合成を進めた。これと同時に前年度から繰り越されたHApの核形成を誘起する高分子の添加に関する検討も進めた。複合化する有機高分子としてはセルロースを主体にして、実験を遂行した。
HApの形成については、水蒸気処理に先立ち、多量の水の供給が可能な水溶液中での処理を試みた。これにより樹脂の組成によっては、試料が破損する場合があることが分かった。また、試料表面からHApの微結晶が新たに条件があることが明らかになった。
2023年度はこれらのデータ収集について、条件を絞って集中的に情報収集を進め、新規な無機/有機複合材料を構築するプロセスの基盤となる学理を導き出す。
当初計画どおり、2022年度において、α-リン酸三カルシウム(α-TCP)を主体にして、ヒドロキシアパタイト(HAp)の生成に寄与する原料の混合物を、有機高分子を含有する溶媒に入れ均一に撹拌して混合し、複合材料を得ている。α-TCP粉末にHAp結晶を添加した試料の合成までは進んだ。ただし、コロナウィスル(COVID-19)感染症のため、繰り越されたデータ収集、実験も同時に進行することになり、結晶核生成の促進効果について、まだ検討の余地が残る結果であると評価している。この遅れは、2023年度において追加の実験を行い、知見をより確かなものにする。実験に関する条件は定まってきたが、条件を絞って集中的に知見の収集に務め、所期の目的達成を図る。
2022年度のに不足したデータの収集のための実験条件について、焦点を絞って集中的に進めることで、効率的な実験データの収集に努める。それらに付いては、無機化合物側からの最適化とともに、有機高分子の取り扱いについても、焦点を絞り実験条件をむやみに広げないよう方針を定めることで集約に所期の目的を達成するように進める。 -
液晶の自己組織化構造と界面相互作用を活用する高分子/無機融合材料の構築
研究課題/研究課題番号:15H02179 2015年4月 - 2019年3月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
加藤 隆史, 大槻 主税, 西村 達也, 坂本 健, 齋藤 継之, 大槻 主税, 西村 達也, 坂本 健, 齋藤 継之
担当区分:研究分担者
水溶性高分子によって安定化した無機結晶のアモルファス前駆体の結晶化を、高分子基板で制御することにより、形状や配向を制御したヒドロキシアパタイトや酸化亜鉛の薄膜結晶を作製する手法を開発した。また、アモルファス無機粒子を異方的なコロイド結晶へと制御して変化させることにより、世界初となる炭酸カルシウムやヒドロキシアパタイトの液晶化にも成功した。さらに高分子ゲルと無機結晶を精密に複合化することにより、透明なアモルファス構造やらせん構造を有する無機/有機融合材料を得た。
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バイオミネラルの無機組織構造に学ぶ融合マテリアルの構築
2010年6月 - 2015年3月
科学研究費補助金 新学術領域研究 「融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓」
担当区分:研究代表者
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融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓の総括研究
2010年6月 - 2015年3月
科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)
加藤隆史
担当区分:研究分担者
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リン酸カルシウム系ナノ粒子の合成と機能発現
2007年4月 - 2009年3月
科学研究費補助金
大槻主税
担当区分:研究代表者
平成19~20年度日本学術振興会科学研究費補助金 萌芽研究
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ナノインターフェイス制御による医用セラミックスの開発と評価に関する調査
2005年4月 - 2006年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)(企画調査) (課題番号17630008)
相澤 守
担当区分:研究分担者
平成17年度日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究(C)(企画調査)
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骨修復のための温度応答型リン酸カルシウム自己硬化性材料
2004年4月 - 2006年3月
科学研究費補助金
大槻 主税
担当区分:研究代表者
平成16~17年度日本学術振興会科学研究費補助金 萌芽研究
萌芽研究,課題番号:16650110 -
低侵襲治療のための体内硬化型有機−無機ナノハイブリッド骨修復材
2002年4月 - 2004年3月
科学研究費補助金
大槻 主税
担当区分:研究代表者
平成14~15年度日本学術振興会科学研究費補助金 萌芽研究 (課題番号14658290)
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アルギン酸人工細胞外マトリクス
2001年4月 - 2004年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
谷原 正夫
担当区分:研究分担者
平成13~15年度日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究(A)(1)(一般)基盤研究(A)(1)(一般) (課題番号13308054)
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有機−無機ナノハイブリッドの生体活性制御
2001年4月 - 2004年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
大槻 主税
担当区分:研究代表者
平成13~15年度日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究(B)(2)(一般) (課題番号13450272)
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無機−有機ナノ複合体の生体活性
1999年4月 - 2001年3月
科学研究費補助金 奨励研究(A)(2)
大槻 主税
担当区分:研究代表者
平成11,12年度日本学術振興会科学研究費補助金
(課題番号11750589)(平成11年度 1,100千円,平成12年度 1,000千円)