科研費 - 横山 幸浩
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肝虚血再潅流障害における分枝鎖アミノ酸の新規分子機構の探索
2013年7月 - 2015年6月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
菅原元
担当区分:研究分担者
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TLR7アプタマーによる内因性Danger Signalの制御と新規治療法の開発
2013年7月 - 2016年6月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
上原圭介
担当区分:研究分担者
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乳癌におけるChromothripsis変異を標的にした新規治療法の開発
2013年7月 - 2016年6月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
角田伸行
担当区分:研究分担者
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分子進化の概念に基づく新規遺伝子の探索と機能解析
2013年4月 - 2016年3月
科学研究費補助金
担当区分:研究代表者
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研究課題/研究課題番号:24K14421 2024年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
吉川 智美, 松波 英寿, 横山 幸浩
担当区分:研究分担者
近年、アスリートやコーチの間では、競技の際、選手自身の持つ能力を最大限に発揮出来るよう技術面を向上させるだけでなく、「コンディショニング」を重要視する意識が高まっている。本研究では、試合前に階級に合わせた体重調整が必要であり、コンタクトスポーツであるが故にケガの絶えない柔道等の運動選手の試合前、減量・増量(体重調整)開始前の腸内環境を改善することがコンディショニング向上につながるかを検証する。アスリートの腸内細菌代謝産物を標的とした新たな視点での個々に合わせたテーラーメイドのコンディショニング法を確立することを目的とする。
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胆道癌における融合型ノンコーディングRNAの機能解明と臨床応用
研究課題/研究課題番号:22K08820 2022年4月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
國料 俊男, 江畑 智希, 横山 幸浩, 山口 淳平, 砂川 真輝
担当区分:研究分担者
融合型ノンコーディングRNA(融合型ncRNA)はタンパク合成をしないにもかかわらず、多くの遺伝子制御に関与し、生体内で重要な役割を果たしている。また融合遺伝子が癌の機能や制御に関与していることも報告されている。われわれは胆管癌での全ゲノム解析により、異なる2つのノンコーディングRNAからなる融合型ncRNAを十数種類同定した。融合型ncRNAの存在は未知のメカニズムの存在を示唆しており、融合遺伝子同様にノンコーディングRNAの機能不全や異常シグナルの活性化など癌化への関与が考えられる。融合型ncRNAの機能解析により関連遺伝子など未知の癌化メカニズムを解明し新規癌治療戦略を構築する。
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胆道癌の全ゲノム解析による化学療法抵抗性に関する遺伝子変異の探索と機能解析
研究課題/研究課題番号:21K08796 2021年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
水野 隆史, 江畑 智希, 横山 幸浩, 國料 俊男, 山口 淳平
担当区分:研究分担者
胆道癌において複数の治療法で予後を向上させるmultidisciplinary approachが注目されている。しかし、治療効果を正確に予測するbiomarkerは存在していない。胆道癌ではゲノム背景や遺伝子変異のheterogeneityが胆道癌の発癌・悪性化・治療抵抗性など多様なメカニズムへ大きく関与しており、治療効果が不確実なため、正確に予測するbiomarkerの開発ができないと考えられる。本研究では、胆道癌の全ゲノム解析により、胆道癌の癌化・悪性化・治療抵抗性に関わる新規のactionableな遺伝子変異を同定し、新規biomarkerおよびその有効性を検討する。
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消化器外科手術後感染性合併症を予防するプロバイオティクス製剤の開発
研究課題/研究課題番号:21K08731 2021年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
横山 幸浩, 山口 淳平, 渡辺 伸元, 江畑 智希, 國料 俊男
担当区分:研究代表者
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
われわれは先行研究で、周術期にプロバイオティクスを使用することにより、術後感染性合併症発生が抑制されることを確認してきた。われわれがプロバイオティクスとして使用したものはLactobacillus casei ShirotaおよびBifidobacterium breve Yakultであったが、これらがプロバイオティクス製剤として最善のものであるかについては不明である。ヒトの腸内には術後感染性合併症をより強く抑制する菌が存在する可能性がある。本研究では、高度侵襲外科手術後の合併症を最も強力に抑制する腸内細菌種を、無菌マウスにヒトの腸内細菌叢を移植したモデルを用いて探索することを目的にする。
検体集積状況:現在までに高度侵襲消化器外科手術を受ける予定の患者から約1,500例分の術前糞便サンプル、約400例分の術中血液サンプルを採集している。糞便サンプルについては、便中の有機酸濃度プロファイルをほぼ全例で解析終了している。また、一部の症例については、次世代シーケンサーを用いた網羅的菌叢解析も行っている。血液サンプルについては、細菌特異的リボゾーマルRNAをターゲットにしたRT-PCR法を用いて細菌叢プロファイルを解析している。
データ解析進捗状況:便中有機酸濃度や腸内細菌叢プロファイルのデータと臨床背景因子がどのような相関関係にあるのかを調べている。特に術後に敗血症、肺炎、胆管炎、創感染、腹腔内膿瘍などの感染症合併症を発生した患者と発生しなかった患者で術前便中有機酸濃度プロファイルや腸内細菌叢プロファイルがどのように異なるかを検討し、術後感染性合併症を発症しやすい腸内環境がどのようなものであるのかを検討中である。同じ高度侵襲腹部外科手術でも、臓器別で侵襲の度合いや手術術式が異なるため、検討は、高度侵襲肝胆膵外科手術を行う患者と食道亜全摘術を行う患者で分けて行っている。
解析結果の報告、論文化:解析結果は日本外科学会や日本消化器外科学会などの本邦における主要な外科関連学会で複数回発表を行った。また、術前便中有機酸濃度プロファイルと術後感染性合併症に関する論文を高度侵襲肝胆膵外科手術を受けた患者と食道亜全摘術を受けた患者を対象にして別々で論文作成中である。
患者からの糞便および血液検体の採集は順調にすすみ、相当数の検体が集まっている。現在、集まった検体の解析を行ってゆく段階になっており、当初の予定通り研究が進行している。
今後は研究結果を論文としてまとめつつ、さらにノトバイオートマウスを用いた基礎研究もすすめてゆく予定である。 -
膵癌細胞の早期転移とdormancyに関する機序解明とその治療法の検討
研究課題/研究課題番号:20H03751 2020年4月 - 2025年3月
山口 淳平
担当区分:研究分担者
膵癌の根治には手術による切除が必要不可欠であるが、たとえ原発巣を切除し得ても遠隔転移の制御が困難な事がある。膵癌に多い遠隔転移形式は肝転移、肺転移、および腹膜播種であるが、これらは原発巣切除後数年経過してから顕在化することが少なくない。しかし一方では、膵癌細胞はその発生初期に全身に播種をきたすともされる。この原発巣と遠隔転移発生の時期的な不一致性はtumor dormancyとして長年認識されてはいるものの、その原因と機序は未だ明らかではない。本研究の目的は膵癌の早期転移およびそのdormancyにおける機序の解明と、さらには後期遠隔転移発生予防のための新たな治療戦略の開発を目指すことである。
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膵癌細胞の早期転移とdormancyに関する機序解明とその治療法の検討
研究課題/研究課題番号:23K20324 2020年4月 - 2025年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
山口 淳平, 江畑 智希, 國料 俊男, 横山 幸浩
担当区分:研究分担者
膵癌が肝臓や肺に遠隔転移を形成する際に、実は癌細胞が転移をするのではなく、癌になる前の細胞が転移をしてその後に癌になるという仮説を研究中である。これまでの研究で、膵臓の前癌細胞が血中に侵入しCTC(circulating tumor cells、循環腫瘍細胞)となり、肺および肝臓に転移することが判明した。しかもこれらの細胞は転移した臓器(肝臓や肺)の細胞を装っていることが明らかとなった。我々はこの特殊な転移をStealth Metastasis(隠れ転移)と名付け、さらに研究を継続している。
膵癌の根治には手術による切除が必要不可欠であるが、たとえ原発巣を切除し得ても遠隔転移の制御が困難な事がある。遠隔転移は原発巣切除後数年経過してから顕在化することが少なくない。しかし一方では、膵癌細胞はその発生初期に全身に播種をきたすともされる。この原発巣と遠隔転移発生の時期的な不一致性はtumor dormancyとして長年認識されてはいるものの、その原因と機序は未だ明らかではない。膵癌転移の形成については、前癌細胞が密かに遠隔臓器に生着して後に悪性となり転移が顕在化するというのが我々の仮説であり、本研究の目的は膵癌の早期転移とdormancの機序解明と、さらには後期遠隔転移発生予防のための新たな治療戦略の開発を目指すことである。
我々はこれまでの研究で、KCT、KCT/TFF1KO、KPCT、KPCT/TFF1KOマウス(それぞれ前癌早期、前癌後期、癌早期、癌後期に該当)を月齢3カ月でsacrificeして検討した。すると血液中の循環腫瘍細胞(CTC)および肝臓に転移した膵腫瘍細胞は前癌後期マウスに最も多く認められた。すなわち膵癌は悪性細胞として成熟する以前に全身に播種する事が確認されたと言える。また驚いたことに、肝臓に転移した腫瘍細胞は癌細胞としてではなく肝細胞として存在していることが判明した。つまりこれらの細胞は肉眼的にも組織学的にも転移とは認識できない特殊な状態であり、我々はこの隠れた転移を「stealth metastasis」と名付け、膵癌転移形式の知られざる一面を解明する事に成功したと考えている。さらに、このstealth metastasisは時間経過により真の転移巣として腫瘍を形成する事を確認した。すなわち早期播種とstealth metastasisがtumor dormancyの原因であることが明らかとなった。
本研究の第一の目的は、膵癌においては遠隔転移を来すのは膵癌細胞ではなく膵前癌細胞であること、また遠隔転移を来した前癌細胞(良性転移)が他臓器において悪性転化することでいわゆる癌遠隔転移(悪性転移)が顕在化する、という仮説を証明することである。これが事実であれば、膵癌遠隔転移に対する治療法は根本的に覆される。例えば従来行われている術後補助療法は原発巣完全切除後の推定残存膵癌細胞に対する抗癌剤治療であるが、真に行われるべきは癌細胞に対する化学療法ではなく良性転移に対する悪性化予防療法であることが示唆され、この予防法を模索することが本研究の第二の目的である。
これらの目的のうち、第一の目的にある「遠隔転移を来すのは膵前癌細胞であること」および「良性転移が悪性転移へと移行すること」が既に証明された。しかもこの良性転移はstealth metastasisという特殊な転移形態を示すことが明らかとなり、膵癌転移のメカニズムにおける既存の理解に対して一石を投じることができたと考えており、これらの結果の一部を論文として報告した(Oncogene 2021;40(12):2273-2284)。
しかしながらその後の研究で、この「良性転移が悪性転移に移行する」という現象が比較的稀な現象であることが判明しつつある。逆に悪性腫瘍細胞が転移する従来の転移について検討を重ねたいところではあるが、我々の用いているマウスモデルではこの悪性転移もまた稀である。このため、2つの転移形式を比較する事が困難であり、今後の研究課題として残っている。また、この早期転移にはTFF1というタンパク質が関与している事が示唆されているが、この作用機序についても未だ明らかではなく、これを明確にする必要がある。
①良性転移の場所、形状と数の確認:上記各種マウスモデルの各臓器を採取して、全身におけるstealth metastasisの分布状況を明らかとする。また、網羅的遺伝子発現検索を行い、tdT以外に良性転移をdetectできるmoleculeを同定し、将来的に画像診断により良性転移を発見する方法を模索する。
②良性転移からの悪性転移発生の確認:現在までに、各種マウスモデルを10カ月程度まで経過観察しているが転移巣の発生は稀である。このため経過観察期間を延長し、12-18カ月までfollow upして悪性転移の発生状況とtdT陽性良性転移の分布状況を比較検討する。仮説が正しければ悪性転移はtdT陽性良性転移集団に関連して、またそうでなければ悪性転移は良性転移とは無関係に発生する。KPCT群に比してKCT群からの転移発生頻度(良性もしくは悪性転移)が高ければ仮説を支持する結果となる。
③TFF1によるEMT抑制機序とWnt/beta-catenin経路抑制効果の検討:近年我々は、肝細胞癌培養細胞にrecombinant TFF1を投与するとWnt/beta-catenin経路が抑制されることを見出した。この詳細な機序を明らかとするため、膵癌培養細胞株にTFF1を投与してproteomics解析によりTFF1と相互作用を持つligandまたはreceptorを同定することを目標とする。
④ TFF1投与による良性転移発生抑制効果の検討:TFF1KOにおいてEMTが惹起されCTCが出現する事は、逆にTFF1を生体に投与することでCTCの発生を抑制しひいては良性転移の発生を抑制することが示唆される。この効果を検討するため、各種マウスモデルに生後早期よりTFF1を投与し、良性転移発生抑制効果および悪性転化の予防効果を確認する。 -
研究課題/研究課題番号:19K09118 2019年4月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
尾上 俊介, 梛野 正人, 江畑 智希, 横山 幸浩, 國料 俊男, 山口 淳平
担当区分:研究分担者
高度な侵襲を伴う消化器外科手術において術後合併症、特に肝切除術後に発生する肝障害は大きな問題である。本研究の目的は術後肝障害に対する脂肪幹細胞を用いた新規周術期対策を開発することである。実際の臨床で行なわれている門脈塞栓、肝虚血・再潅流、術前化学療法などにより生じる肝障害に関して、各肝障害動物モデルへの脂肪幹細胞の投与によりその有効性およびメカニズムを解明する。また肝転移モデルを用いて癌に対する脂肪幹細胞の影響や脂肪幹細胞の多能性や分化誘導に関して、網羅的遺伝子解析などにより多角的に検討し、新たな分子機構の解明も行なう。
マウス30%肝切除モデルおよび部分肝切除モデルでの脂肪幹細胞シート貼付後、貼付周囲に癒着を認めたが、腹水貯留や感染を疑わせる所見はなかった。またヒト脂肪幹細胞シート内に時間経過に伴う血管新生の増生を認めた。蛍光標識したヒト脂肪幹細胞シートの貼付により、マウス肝臓側へのヒト脂肪幹細胞の集積を認め、同時にヒト脂肪幹細胞シート内に多数のマウス由来細胞の混在を認めた。これらの結果より、ヒト脂肪幹細胞シート貼付による肝再生においては、ヒト脂肪幹細胞とマウス細胞の双方向的な細胞遊走の関与が示唆された。
肝切除モデルにおいて脂肪幹細胞シート貼付により腹水貯留や感染などがおきないこと、血管新生が増生することを明らかにした。またヒト脂肪幹細胞シート貼付による肝再生においては、ヒト脂肪幹細胞とマウス細胞の双方向的な細胞遊走の関与を明らかにした。これらはヒト脂肪幹細胞シートを臨床応用するための重要な知見であり学術的意義が大きい。本研究により新規治療法開発の可能性が示唆され、ヒト脂肪幹細胞シートによる治療法が可能になれば、治療成績の向上が期待され社会的意義は大きい。 -
Trefoil Factorと肝発癌の関連および肝癌新規治療法開発に関する研究
研究課題/研究課題番号:19K09141 2019年4月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
江畑 智希, 山口 淳平, 梛野 正人, 國料 俊男, 横山 幸浩
担当区分:研究分担者
TFF(Trefoil Factor Family)には3つのサブタイプが存在するが、それぞれが特徴的な癌抑制作用を有していることが示唆されている。またTFFは分泌型タンパクであり、血中に分泌されホルモンとして作用している可能性がある。この研究の目的は、肝発癌遺伝子改変マウスモデルとTFFノックアウトマウスを用いてTFFによる原発性肝癌抑制作用とその機序を解明し、またTFFに対する受容体を発見し腫瘍免疫への関与を突き止めることであり、さらにはTFFリコンビナントタンパクを用いた新規肝癌治療法を開発することである。
TFF1はWnt/b-catenin経路を抑制することで肝細胞癌の発生を抑制する作用を有していることが明らかとなった。すなわち、TFF1はin vitroで肝細胞癌細胞の増殖を抑制し、細胞死を誘導することが確認され、またTFF1欠損マウスでは肝細胞癌の発生が頻繁に認められた。一方、TFF2はPTENの活性化を抑制する事で胆管癌の発生を抑制することが明らかとなった。すなわち、TFF2はin vitroで胆管癌細胞の増殖・浸潤を抑え、細胞死を誘導する事が確認され、またTFF2欠損マウスではBilIN および胆管細胞癌が発生した。これらの結果は、各TFFによる肝癌発生抑制効果を証明するものである。
研究の結果、TFFの3つのサブタイプの内、TFF1は肝細胞癌に対して抑制的に、TFF2は胆管細胞癌に対して抑制的に働くことを示している。しかも、前者はWnt/b-catenin経路に干渉し、後者はPTEN経路に干渉するという、全く異なる作用機序を示している。TFF1とTFF2は非常に似通った構造を持つたんぱく質であるにもかかわらずこのような異なる作用を持つことは非常に興味深く、今後の研究によってこの相違の原因が明らかにされ、かつ肝癌に対する新規治療法の開発に繋がることを期待したい。 -
研究課題/研究課題番号:19K09168 2019年4月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
渡辺 伸元, 梛野 正人, 江畑 智希, 横山 幸浩, 國料 俊男, 山口 淳平
担当区分:研究分担者
画像診断に基づく膵癌治療には限界があり、画像では診断できないinvisible膵癌(目に見えない膵癌)を診断し治療を行うことが必要である。本研究の目的は原発巣が膵癌と診断できる膵癌特異的なエクソソームの同定およびその機能を解明することにより、invisible膵癌の診断治療法を開発することである。膵液より回収した膵癌特異的なエクソソームを用いて網羅的遺伝子解析を行う。同定した膵癌特異的エクソソームに関連するマイクロRNAおよび遺伝子に対する標的治療法を開発し、その有効性の検討を行なう。また臨床病理学的検討を行い、バイオマーカーとしての有効性についても検討する。
ヒト膵癌細胞株KLM1から分離したエクソソームは、増殖能および運動能の亢進に関与していた。KLM1から分離したエクソソームの網羅的タンパク解析にて、血管新生、運動能に関与するタンパクを同定した。しかし、同定したタンパクの発現は、胆汁中エクソソームでは認めなかった。KLM1はヒト膵癌由来細胞株であり、胆汁は胆道癌患者由来なため、細胞株と臨床検体との違いがあるが、癌種の違いによるものと考えられた。より詳細な検討は必要ではあるが、同定された血管新生、運動能に関与するタンパクは、膵癌特異的なエクソソームのマーカーになる可能性があると考えられた。
膵癌特異的なエクソソームのマーカーになる可能性のある血管新生、運動能に関与するタンパクを同定した。これらのタンパクはinvisible膵癌の診断治療法の開発のための重要な知見であり学術的意義が大きい。本研究により新規治療法開発の可能性が示唆され、実用化されれば、治療成績の向上が期待され社会的意義は大きい。 -
血中循環腫瘍細胞の生着および非対称分裂・自己組織化に対する癌転移抑制法の開発
研究課題/研究課題番号:19K09142 2019年4月 - 2021年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
相場 利貞, 梛野 正人, 江畑 智希, 横山 幸浩, 國料 俊男, 山口 淳平, 上原 圭介
担当区分:研究分担者
癌治療の開発を困難にしている原因の1つに癌の多様性がある。そのメカニズムとして特定の細胞に分化する細胞が作り出される非対称分裂と自己組織化が関与していると考えられる。本研究の目的は単一細胞解析によるCTCの生着メカニズムの解明、生着した癌細胞の非対称分裂と自己組織化のメカニズムの解明により、これまでと異なるコンセプトの新規癌転移抑制法を開発することである。CTCの単一細胞での網羅的遺伝子解析を行ない、CTCの生着関連遺伝子を同定する。ヒト癌細胞株、担癌動物モデルでのCTCの生着関連遺伝子の機能解析を行ない、新たな標的癌治療法を開発する。
本研究の目的は単一細胞解析によるCTC (circulating tumor cells)の生着メカニズムの解明、生着した癌細胞の非対称分裂と自己組織化のメカニズムの解明により、これまでと異なるコンセプトの新規癌転移抑制法を開発することである。
ヒト由来癌細胞を単離した後、ローテーションによる細胞凝集・自己組織化した癌細胞集合体を作製した。細胞凝集・自己組織化した癌細胞集合体の培養は通常の細胞培養と可能であった。細胞凝集・自己組織化した癌細胞集合体に蛍光標識したsiRNAの導入し、導入効率を検討した。単離した場合と比較して効率は低くかったが可能であった。また増殖抑制効果のあるsiRNAを導入し、遺伝子発現の抑制および増殖抑制を検討した。遺伝子抑制されており、増殖抑制も可能であった。
細胞凝集・自己組織化した癌細胞集合体をマウス腹腔内へ投与した場合、腹腔内洗浄液からのMACSシステムでの癌細胞を単離ができない。ヒト膵癌由来細胞株KLM1のマウス腹腔内への投与後、腹腔内洗浄液から癌細胞を単離せずに培養を行ない、増殖能を検討した。その結果、腹腔内洗浄液から単離せずに培養した癌細胞は、単離した場合より細胞増殖が上昇しており、腹腔内投与しなかったKLM1と比較しても細胞増殖が上昇していた。
単離せずに培養した場合、癌細胞以外のマウス由来細胞が混入する。混入したマウス由来細胞を鑑別するために、蛍光標識した癌細胞を用いた。蛍光標識した癌細胞の腹腔内投与24時間後に、蛍光標識したsiRNAを腹腔内に投与し、その48時間後に細胞の回収を行い、単離をせずに培養を行なった。腹腔内洗浄液から単離せずに培養した癌細胞では、腹腔内投与しなかったKLM1と比較して増殖抑制効果が減弱していた。この結果より、癌細胞に腹腔内投与による修飾が付加されたと考えられた。 -
TFF1の膵癌抑制効果の検証と膵癌治療に対する有用性の検討
研究課題/研究課題番号:17K10695 2017年4月 - 2020年3月
山口 淳平
担当区分:研究分担者
Trefoil Factor Family 1(TFF1)は粘液関連分泌型タンパクであり、胃癌抑制因子として作用するという報告がある。本研究ではヒト膵癌切除標本、培養膵癌細胞株および遺伝子改変マウスモデルを用いることで膵癌の発癌機構とTFF1との関連を検討した。結果、TFF1は上皮間質転換(EMT:Epithelial-mesenchymal transition)を制御する事により膵前癌病変からの悪性腫瘍発生を抑制していることが明らかとなった。今後はTFF1を用いた膵癌治療戦略の構築と高リスク患者の膵癌発生予防法を開発が期待される。
膵癌は難治性の悪性疾患であり、患者全体の5年生存率は約5%と推定されている。膵癌患者の予後が不良な原因は、多くの患者が切除不能な状態で発見されることに加え、たとえ治癒切除が施行されたとしても術後の再発が多い事による。膵癌の予後を改善するためには再発進行膵癌に対する新たな治療戦略の開発が必須であるだけでなく、高リスク患者における膵癌発生を予防する事が重要である。本研究でTFF1は膵癌の浸潤および転移を抑制する作用があることが判明した。TFF1を用いた新規治療方法の開発は、進行再発膵癌に対する治療戦略になるのみならず膵癌発生予防にも有用である可能性がある。 -
術後肝障害に対するTLR4を標的にした予防治療法の開発
研究課題/研究課題番号:17K10667 2017年4月 - 2018年3月
菅原 元
担当区分:研究分担者
肝切除術後に発生する肝障害は重篤化することも多く早急に解決しなければいけない課題である。TLR4は免疫反応や炎症の制御に関わる分子であるToll様受容体の1つである。グラム陰性菌の外膜の成分であるリポ多糖(LPS)やグラム陽性菌のペプチドグリカン層にあるリポテイコ酸をリガンドとして認識する受容体である。ラット肝障害モデルへのTLR4阻害剤投与は肝機能を改善させ、肝障害を軽減させる傾向があった。一方で細胞株に対するTLR4阻害剤の研究において、TLR4阻害剤には細胞の増殖抑制効果を認めた。
これまでの肝再生に関する研究において、肝障害時にTFF1(trefoil factor family1)の発現に変化が生じており、TFF1(trefoil factor family1)と胆管再生の関連性が示唆されている。われわれはTFF1(trefoil factor family1)をノックアウトしたマウスを作成しており、このTFF1をノックアウトしたマウスを用いてラット肝虚血・再潅流モデル、ラット胆管結紮による閉塞性黄疸モデル、CCl4(四塩化炭素)によるラット肝硬変モデルを作製した。ラット胆管結紮による閉塞性黄疸モデルでは、術後早期に死亡しており、正常マウス群と比較してTFF1のノックアウトマウス群での死亡率が高かった。また病理学的検討によりTFF1のノックアウトマウス群において胆管新生に抑制傾向を認めた。さらにTFF1のノックアウトマウス群の肝臓では有意に壊死組織の面積が多かった。CCl4(四塩化炭素)によるラット肝硬変モデルにおいて3か月の経過観察をおこなっているが、正常マウス群と比較して死亡率に関して特に差を認めなかった。 -
癌幹細胞に対する新規治療戦略
研究課題/研究課題番号:16K10454 2016年4月 - 2019年3月
角田 伸行
担当区分:研究分担者
胆管癌細胞株より分離したc-Met陽性細胞はc-Met陰性細胞より増殖能が亢進していた。c-Met陽性かつCD49f陽性細胞ではviabilityの低下を認めた。大腸癌細胞株より分離したCD133陽性細胞は、CD133陰性細胞より増殖能が亢進していた。
次世代シークエンサーによる融合遺伝子の探索により、938個の融合遺伝子の候補が同定された。p21 protein (Cdc42/Rac)-activated kinase 2 pseudogeneであるLOC646214は、多くの遺伝子と融合遺伝子を形成していた。タンパクを合成していないこれらの融合遺伝子は核酸医薬のよい標的と考えられた。
本研究により、次世代シークエンサーによる融合遺伝子の探索により、p21 protein (Cdc42/Rac)-activated kinase 2 pseudogeneであるLOC646214が多くの遺伝子と融合遺伝子を形成していることを明らかにした。新たな融合遺伝子の候補の同定、核酸医薬による新規癌治療の可能性を明らかにしており、本研究成果の学術的、社会的意義は大きい。 -
ビサボロール誘導体の作用機序の解明と臨床応用
研究課題/研究課題番号:16K10591 2016年4月 - 2019年3月
國料 俊男
担当区分:研究分担者
ヒト癌細胞株においてビサボロール誘導体は増殖能、細胞死誘導能、運動能、浸潤能を抑制した。網羅的遺伝子解析にてビサボロール投与後にFAK(Focal adhesion kinase)の発現低下を認めた。
マウス皮下発癌モデルへのビサボロール、ビサボロール誘導体の経口投与は腫瘍の増殖を有意に抑制した。また徐放性カプセルを用いたビサボロールの薬物投与法は、マウス皮下発癌モデルにおいてジェムシタビンと同様の抗腫瘍効果を示した。質量分析器によるラットの血中ビサボロール測定は定量性が不十分なため、体内動態を明らかにできなかった。更なる研究は必要であるが、ビサボロールによる新規治療法の可能性が示唆された。
本研究により、ビサボロール、ビサボロール誘導体による抗腫瘍効果およびその作用機序としてのFAK(Focal adhesion kinase)の関与を明らかにした。新たな知見が明らかになっただけでなく、治療薬としての臨床応用の可能性を明らかにしており、本研究成果の学術的、社会的意義は大きい。 -
システインの肝障害抑制に関する作用機序の解明
研究課題/研究課題番号:16K10567 2016年4月 - 2019年3月
横山 幸浩
担当区分:研究代表者
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
ラット肝星細胞においてシステインは肝星細胞の収縮を抑制し、エンドセリンによる細胞内カルシウムの上昇を強く抑制した。ラット敗血症性ショックモデルにおいてシステインにより血清ALT値が有意に低くなり、肝障害の抑制効果が示唆された。血清アルブミンは大腰筋面積と正の相関を示した。また手術前後の総大腿筋面積の筋肉量減少(サルコペニア)と術後在院日数、術後合併症発生数、腹腔内膿瘍、肝不全などの術後経過において、いずれにおいてもサルコペニア群での術後経過が不良であった。システインの共有結合部のほとんどがアルブミンに占められており、システインが手術に伴うサルコペニアの改善に有効である可能性が示唆された。
本研究により、システインによる肝障害の抑制効果が示唆された。またシステインが手術に伴うサルコペニアの改善に有効である可能性も示唆された。新たな知見が明らかになっただけでなく、臨床応用への可能性も明らかにしており、本研究成果の学術的、社会的意義は大きい。 -
TLR7を標的にした新規癌治療法における作用機序の解明
研究課題/研究課題番号:16K10531 2016年4月 - 2019年3月
上原 圭介
担当区分:研究分担者
ヒト癌細胞株に対してTLR7アゴニストであるイミキモドは増殖能、細胞死誘導能、運動能、浸潤能の抑制効果を認め、投与12時間後にはearly apoptosisを認めた。イミキモド投与により小胞体ストレスのマーカーであるBiP(immunoglobulin heavy chain-binding protein)の発現が亢進しており、アポトーシスの原因として小胞体ストレスが考えられた。しかし、別な小胞体ストレスのマーカーであるPERK(PKR-like ER kinase)の発現は変化していなかった。更なる研究は必要であるが、TLR7の機能阻害による抗腫瘍効果の新たな作用機序を解明した。
本研究により、TLR7アゴニストであるイミキモドの抗腫瘍効果およびその作用機序として小胞体ストレスによるアポトーシスの関与を明らかにした。新たな知見が明らかになっただけでなく、臨床応用への可能性も示唆されており、本研究成果の学術的、社会的意義は大きい。