科研費 - 加藤 博和
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農山村と都市との関係を考慮した国土計画のあり方に関する研究
2011年4月 - 2014年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
林良嗣
担当区分:研究分担者
今年度の目標は、中山間地域が有するストックおよびフローを表現する指標を開発し、データベース化することであった。そこで、中山間地域でストックとして最も多く存在する、森林に注目し、この中の人工林ストックを対象に分析を進めた。ケーススタディとして、三重県の松阪市を選定した。なお、ストックの把握において自然林(天然林)は後に述べる投入フローがゼロであるとして、分析の対象から外した。人工林ストックの把握には森林簿という森林の戸籍票に類似したものを利用した。一方、フローは人工林維持管理に投入される金額を定量的に算出し、人件費や建設費、機械利用費用などを詳細に算出することで、人工林維持管理にかかわるライフサイクル及び年度あたりでの費用を確認した。以上より、人工林からの発揮が期待される生態系サービスを考慮して、森林の社会的必要性(NOF)指標を開発し、ストックの量とそれに投入されるフローを定量的に示すことを試みた。NOF指標はB/Cのような費用効率性指標として構築することで、費用対効果を基にどの森林から管理をすべきかを分析することが可能となった。また、地域の住環境の質に対して、研究代表者が以前から進めている、QOL指標に基づく定量的な評価を行った。今回はアンケートを松阪市で取ることによって、都市住民および中山間地域住民の期待する住環境の差異をはかることが可能となった。加えて、都市地域、中山間地域それぞれでQOL値の高い地域と低い地域を確認し、それらを踏まえた上で現地調査による集落の状況を確認した。NOFおよびQOL指標によって、中山間地域ではこれまでに十分に議論が行われなかった、社会的に中山間地域に人が住む意味と、彼らに好まれている居住地域を明らかにすることができたことは成果として大きいと考えられる。
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地域公共交通サービス供給が地域住民のQOL向上に与える効果に関する研究
2009年4月 - 2012年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
加藤博和
担当区分:研究代表者
地域公共交通サービスによる地域住民のQOL(Quality of Life)向上効果を明らかにするために、個人の活動機会や健康、ソーシャル・キャピタル形成といった観点から調査検討を行った。その結果に基づき、公共交通サービスの提供が活動機会に与える効果を定量的に把握する方法論を作り上げた。また、公共交通サービス運営に住民自らが参画することを通じた、ソーシャル・キャピタル構築のメカニズムを明らかにした。以上を通じて、公共交通サービスがQOLに与える効果を把握する枠組みを提示できた。
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地球環境負荷とモビリティ・ディバイドを回避可能な途上国大都市の土地利用・交通戦略
2008年4月 - 2011年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
林良嗣
担当区分:研究分担者
途上国大都市における、モビリティ・ディバイド拡大抑制に資する交通政策のあり方を検討する。そのために、所得水準によるモビリティの差違と住民の価値観の関係についてアンケート調査を用いて把握した。さらに、自動車保有率モデルを用いて、経済成長が自動車保有率の格差にもたらす影響を分析した。その結果、所得水準による自動車保有状況の違いとそれがもたらすモビリティ・ディバイドについての定量的な把握が可能になった。そして、今後の経済成長によって拡大が予想される所得格差に対応するために、貧困層への移動手段確保が重要であることを明らかにした。
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ライフサイクル思考に基づいた社会資本の環境性能評価手法の再構築
2007年4月 - 2009年3月
科学研究費補助金
林良嗣
担当区分:研究分担者
社会基盤整備プロジェクトのLCAにはSocial/Dynamic LCA概念の具体化が必要であることを示し、各社会システムに対してLCAを実施したところ、以下に示す成果を得た。
1.交通・流通システム:1)道路改良事業の事業計画段階において、環境負荷削減効果を自動車走行への波及効果を含めて定量的・包括的に評価するための方法論を構築し、自動車走行状況に応じた削減効果の発現条件を明らかにした。2)航空路線を削減し新幹線輸送に転換させることの有効性について、LCAを導入して検証を行う方法を提案し、新幹線整備をCO_2排出量の観点から評価した。3)容器入り清涼飲料水の流通段階の環境負荷排出の内訳をLCAにより詳細に分析し、流通・販売形態によってLC-CO_2が大きく異なることを明らかにした。
2. 廃棄物処理・上下水道システム:1)ごみ処理事業を対象とし、中長期視点から処理施設の維持・更新とごみ処理に係るLCC、LC-CO_2を算出することで、将来からみた現在のごみ処理施策の実施効果を評価するモデルを開発した。地方都市でのケーススタディでは、現在のごみ処理施策実施に伴うLCC、LC-CO_2を積算し、これらを削減するための処理政策を提案・評価した。2)生活排水処理システムについて、計画段階でLCAを適用のするために必要な原単位を整理・分析し、実際の計画へ適用したところ、排水処理技術の進展についても考慮が必要なことが明らかになった。
3. 都市システム:1)地域施策や活動にLCAを適用する際の課題を整理し、地域性の表現、地域間相互依存の考慮といったLCAの手法面で検討が必要な項目を明らかにした。2)郊外型商業開発のLCAを用いた分析の枠組みを整理し、時系列的な変化を考慮することの必要性や統計データの精度に改善の余地があることを示した。
なお、日本LCA学会誌Vol.5 No.1(2009年1月発行)において、研究分担者・加藤博和が幹事を務めた特集:「社会システムのLCA:Social/Dynamic LCAの確立を目指して」は、本研究の成果公表の一環として位置づけられている。 -
地域住民主体のボトムアップ型公共交通システム普及のための方法論に関する研究
2005年4月 - 2007年3月
科学研究費補助金 若手研究(B)
加藤博和
担当区分:研究代表者
本研究は、交通事業者や行政によることが困難となった地域内公共交通の維持・確保を、地域社会や沿線企業などの新たな主体が中心となって行っている事例を取り上げ、従来型の地域内公共交通の比較を通じてその特長を示すとともに、各事例に共通する特長を分析することにより、地域社会や沿線企業が中心となる地域内公共交通の維持スキームに必要な要素を抽出し、今後の日本における地域内公共交通維持スキームとして広く展開するために必要な基礎的知見を得ることを目的としたものである。
本年度は、
(1)昨年度に引き続き、地域社会や沿線企業などの新たな主体が中心となって行っている地域内公共交通の維持・確保事例を対象として、それに関係する行政、交通事業者、沿線企業、地域住民などに可能な限り多くのヒアリング調査を実施し、全国の事例を網羅的に検討した。
(2)昨年度までの成果によって明らかとなった「ボトムアップ型公共交通維持スキーム」の有効性をコミュニティバスの運行を計画している自治体・住民団体などに提案し、運行実験支援を行った。
(3)コミュニティバスや乗合タクシーといったように、近年、地域内公共交通については多様な運行形態が登場している。これを踏まえ、地域の状況に応じた運行形態選定のための基礎的な知見を得るために、各地で取り組まれている特徴的な事例について調査を実施し、整理した。
これらを通じて、地域の状況や地縁組織の有無に応じた公共交通維持スキームの選定方法を示すとともに、ボトムアップ型公共交通維持スキームの有効性を示すことができた。また、運行形態についても調査することにより、運営スキームと運行形態のマッチングについての基礎的な知見を得ることができた。 -
人口減少・少子高齢化時代における地方都市の双対型都市戦略に関する研究~郊外からの計画的撤退と中心市街地の再構築~
2004年4月 - 2007年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
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気候変動・海面上昇に対する適応策に関する総合的研究
2002年4月 - 2005年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
担当区分:研究分担者
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わが国における風格ある街区ストック形成のための計画設計コンセプトに関する研究
2002年4月 - 2004年3月
科学研究費補助金
林良嗣
担当区分:研究分担者
1)街区におけるストック化度評価手法の開発とそれを用いた評価:今後の都市計画評価において重要となる、街区ストック形成の程度を評価するための指標として「街区ストック化度」を開発した。これは、街区内の建物群が総体としてどの程度の使用年数で建て替わっていくかを示す指標であり、物理的および機能的要因によって規定される。街区のさまざまな要素がストック化にどのように影響を及ぼすかを定量的に明らかにするとともに、日本及び中国の都市への適用とアンケートによる意識調査によって指標の有効性を示した。
2)街区ストック化実現のための制度検討と定型住宅の提案:街区ストック化度向上のために必要な、都市計画制度や土地関連税制の改善案を整理すると、ともに、その実現可能性を検討した。さらに、街区ストック化に資する定型住宅について、日本に導入可能なタイプを提案した。
3)街区景観評価のための可視化シミュレータ開発:昨年度に続き、街区内の建物形態やファサード等の統一性の指標となる街区の「景観調和性」を評価するための支援システムとして、CGとGIS(地理情報システム)を組み合わせることによって、2次元の地図から3次元的な景観を自動的に可視化する「街区景観可視化シミュレータ」を開発するとともに、これを用いて街区ストック化度向上策の検討を行った。特に今年度は、原図となる電子地図上の建物の境界線にノイズ辺がある場合も、それをフィルタリングして建物を自動的に生成することが可能なシステムの研究・開発を行い、CG表示における適用性と再現性を向上させた。 -
都市空間の持続可能な社会ストック化の方法論に関する研究
2001年4月 - 2004年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
林良嗣
担当区分:研究分担者
a)住宅および商業業務の立地分布に関する検討:
モータリゼーションに依拠して無秩序に拡大した市街地を再びコンパクト化するために、撤退・再集結地域を特定するためのモデルシステムを構築した。その際の評価概念として、自然災害のハザードマップの考え方を拡大した「Social Hazard」という評価指標を提示している。さらに、都市コンパクト化によって生じる街区内の土地利用および建物分布の変化を敷地単位で予測するモデルを提案した。
b)都心部・公共交通結節点付近・郊外部を対象とした街区の詳細検討:
第2次大戦後の世界各国の都市政策-アメリカの「都市再生」、イギリスの「ニュータウン」、フランスの「ヴィル・ヌーヴェル」、イタリアの「INA-カサ」等-を比較・検討することにより、メトロポリスの膨張とその抑制政策の実態を把握した。またそうしたメトロポリスの膨張に対して、鉄道駅・空港といったターミナルがどのような役割を果たし、どのようにデザインされたのかを分析した。また、愛知県豊田市の中心部を対象に、環境資源と既存の都市構造およびコミュニティを活かした「まちなか再生モデル」の検討を行い、マスタープランと街区デザイン例を作成し、地域でワークショップを開催した。
c)計画実現のために必要な施策に関する検討(冨田・奥田・森杉):
将来の人口構成の変化、住宅ストックの変化を考慮しながら、地方都市中心部における住宅ストック形成事業の成立可能性について定量的に評価する方法を開発した。また、この方法を用いて、愛知県豊田市における住宅ストック形成事業の成立可能性について計量分析を行い、事業を成立させるための幾つかの条件を明らかにした。 -
複数の環境負荷を考慮した都市整備プロジェクトのライフサイクル評価手法の開発
2001年4月 - 2003年3月
科学研究費補助金 若手研究(B)
加藤博和
担当区分:研究代表者
本研究では、都市空間整備プロジェクトが環境負荷発生原因となる各種人間活動をその後どのように変化させ、結果的に環境負荷をどのように変化させるかを把握することができるモデルシステムを、地理情報システム(GIS)上に構築することを目的としている。本年度は以下の分析を進めた。
1.都市活動シミュレーションモデルシステムによる予測:昨年度は、名古屋市を対象に、都市内のインフラ施設・建築物・交通活動のシミュレーションモデルシステムをGIS上に構築した。このシステムでは、名古屋市を詳細なゾーンに分けてデータを管理していることから、都市構造を現状よりコンパクトにする施策を評価することができる。また、建築物の建替時期もシミュレートしているため、建築物の長寿命化や材質変化・リサイクルの評価も可能となっている。本年度は交通活動の予測モデルに修正を加えた上で、本システムを利用し、都市のコンパクト化や建築物の長寿命化に伴う都市活動の変化を2050年までにわたって予測した。
2.環境負荷の予測評価:さらに、1.の変化の結果生じる環境負荷の増減を予測した。その際、昨年度開発した、都市活動に伴う様々な環境負荷を評価するためのLife Cycle Assessment (LCA)適用の方法論を用いて、インフラ・建築物およびそれらの存在に伴う都市への波及効果をも考慮したELCEL(拡張ライフサイクル環境負荷)によって評価を行うとともに、各種環境負荷の統合評価も試みた。その結果、都市構造のコンパクト化によるインパクトが最も大きいのは交通に伴う分であり、その多くが郊外-都心間交通量の減少に伴うトリップ長短縮に起因することが示された。一方、立替の際の省エネ建築物導入は、交通と比べてインパクトが小さかった。また、建築物の長寿命化によって廃棄物の量が将来的に大幅に削減され、これが統合評価後の全体の環境負荷を低減させるのに大きな効果を有することも分かった。 -
高速道路のサービス水準の計量とその評価方法に関する研究
2000年4月 - 2003年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
中村英樹
担当区分:研究分担者
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アジア途上国における交通整備・環境負荷管理の時間軸プログラム作成の方法論の開発
1997年4月 - 2000年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
林良嗣
担当区分:研究分担者
本研究は、急速な経済成長に社会資本整備が追いつかないことに起因する各種の都市問題を抱えている発展途上国大都市を対象に、今後いかに社会資本を整備すれば、その都市の発展のボトルネックを回避するとともに、環境を保全することができるかを分析することが可能な方法論を構築することを目的としている。
そのためにまず、発展途上国が今後後を追うであろう先進国(ヨーロッパ・日本)の大都市を対象に、経済発展によって進展するモータリゼーションや交通インフラストラクチュアに対するニーズ変化のメカニズムを明らかにするとともに、それに対応すべく実施される交通インフラ整備制度等の調査を行い、国間比較分析を実施した。さらに、都市構造変化に伴う自動車保有状況の変化について計量モデルを構築し、さらに交通量・交通状況や環境負荷発生の変化をシミュレートすることを可能とした。その結果、途上国では交通インフラ整備に関する財政制度が不十分であり、都市内や近郊の鉄軌道も貧弱であるところにモータリゼーションや人口集中が発生するために、交通状況が急速に悪化するという図式が明らかとなった。そして、その回避のためには、都市発展に対応した交通インフラ整備を可能とするための財政制度、特に、都市発展によって需要が増加する土地や自動車市場から資金を還流させるシステムの整備が有効であることを示した。
さらに、発展途上国の大都市における具体的な交通インフラ整備施策を検討する手法として、整備による交通状況変化を推計するモデルを構築している。その方法として、現地における公共交通機関利用に関する意識調査(SP:Stated Preference)データを用いて、新規に鉄道整備を行った場合の他機関からのモーダルシフトを予測するための将来交通手段選択モデルを構築し、鉄道整備のネットワーク形成状況やサービスレベルと利用状況との関係を明らかにすることができた。 -
都市間道路のサービス水準と幾何構造の評価に関する研究
1997年4月 - 1999年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
中村英樹
担当区分:研究分担者
本研究ではまず,日・米・独の各国を対象として,多車線道路の単路部における車線数決定方法,およびそれに関わる影響要因についての比較分析を通して,車線数決定に際して重要な位置を占めるサービスの質にかかわる考え方とその設定値について,わが国の水準は国際的にどの程度であるのかを明らかにした.
次に,総費用,環境負荷の観点からの道路横断面構成の評価手法を用いて,総費用・環境負荷最小となる道路横断面構成とそのときのサービス水準について検討を行った.費用には,管理者費用として建設費用・維持管理費用を,利用者費用として時間費用・走行費用を計上し,これらを建設段階から供用後40年間の経年合計で積み上げて評価している.また,環境負荷としては,CO_2排出量にライフサイクルアセスメントの考え方を適用し,建設による排出と,維持管理および走行による排出を道路構造別に評価の対象としている.本手法を適用して算出した地形条件別の最適横断面と,既往の手法による決定横断面およびサービス水準について比較考察を行った.
また,高速道路単路部の様々な交通量レベルにおける,ドライバー満足度や運転挙動の分析を通して,交通状況の具体的評価とドライバーの観点からの道路のサービス水準の設定を試みた.運転挙動データは,走行実験により収集し,これと同時にドライバーへのアンケート調査を行うことによりドライバーの交通状況への感覚を把握した.そして,これらの結果と車両感知器等から得られるマクロな交通特性データを,交通量レベルに応じて明示することが可能となった.さらに,これらの視点を生かしたサービス水準の設定を提案した.