科研費 - 天野 浩
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GaNのIMPATT格子によるコヒーレントハイパワーTHz源
研究課題/研究課題番号:22H00213 2022年4月 - 2027年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
天野 浩
担当区分:研究代表者
配分額:41340000円 ( 直接経費:31800000円 、 間接経費:9540000円 )
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アンモノサーマル法による高品質GaN基板成長
研究課題/研究課題番号:19F19752 2019年7月 - 2021年3月
担当区分:その他
Ammonothermal method is the best technology for growing the lowest dislocation density single crystal. The problem is th eincorporation of impurities. In this study, several materials will be used for autoclave to grow much higher purity GaN single crystal by ammonothermal method.
GaNは次世代省エネルギー社会システム構築のカギである。現在、ハロゲン気相成長法(HVPE)を用いて成長した自立基板が市販されている。HVPEは成長速度が速いため低コスト成長法の候補であるが、単位時間当たりの生産性を考えると、現状では多数枚成長にならざるを得ず、巨大な成長装置が必須になる。Siのチョクラルスキーのように長尺化すれば、スライスにより一回の成長で多数枚得ることができ、低コスト化できる。その際重要になるのは種結晶である。我々のこれまでの検討で、市販のHVPEによる自立GaN基板では結晶欠陥、反りが大きすぎて種結晶として利用できないことが分かっている。低欠陥密度、低反りの点で最も有望なのはアンモノサーマル法によるGaN結晶である。アンモノサーマル法では、鉱化剤としてアルカリ性と酸性の物質を使う場合がある。アルカリ性の場合、容器であるオートクレーブと強く反応して重金属が溶け出し、高純度の結晶を作製するのは困難である。一方酸性の場合はオートクレーブとの反応も穏やかで、より高純度な結晶が実現できる。
Saskia Carola SCHIMMEL氏は、現在、当研究室にある酸性鉱化剤によるアンモノサーマル装置でGaN結晶の成長に取り組んでいる。同氏は従来の白金に加え、金を用いたオートクレーブによりバルク成長を行っている。アンモノサーマル法の最大の課題は成長速度が遅いことである。同氏は成長装置の温度分布流体シミュレーションを活用し、炉壁への多結晶析出の抑制に取り組んだ。まず、空気のまま実験を行いシミュレーションの精度が十分であること確認の後、超臨界アンモニアでシミュレーションを行った。その結果、伝熱機構のほとんどが熱対流によるものであり、上部と下部の温度分布を最適化すれば、炉壁への多結晶析出抑制が可能であることを見出した。
Saskia Carola SCHIMMEL氏は、GaN結晶中への酸素混入低減のための自らのアイディアを実践するため、硬化剤チャージのためのグローブボックスを設計した。現在実験再開を待っている。 アンモノサーマル法は、1回の成長に1週間ほど必要で、また高圧での成長のため、装置のリークに対しては地道な対応が必要である。白金オートクレーブによる成長実験はようやく1回の成長が確認できた段階である。現在本番の金のオートクレーブによる成長実験の準備が始まったところである。その結果が出てまとめるのにまだ相当の時間が必要である。
また同氏は機械学習を用いた結晶成長条件最適化を進めている。現在、従来の決定方法の問題点等が明らかになりつつあるが、更なるデータ収集が必要である。
ある。その結果が出てまとめるのにまだ相当の時間が必要である。
現在、様々な予想できなかった課題の発生で成長実験が止まっている。まず白金ライナーの故障が発生し、時間のかかる修理を行っている。また、新型コロナウィルスの影響による成長実験が止まっている。そのため、現在は主に成長炉内の温度分布の流体シミュレーションを行っている。その結果、従来の方法では複数の温度ピークが存在し、成長速度が小さくなることが確かめられるなど、新たな知見も得られた。今後、遅れを取り戻すために本番の金のオートクレーブによる成長実験を行うとともに、炉の温度分布の改善のために装置の改造を行う予定である。 -
InGaNナノロッド創・省エネルギーデバイス・システム
研究課題/研究課題番号:18F18347 2018年11月 - 2020年3月
担当区分:その他
これまで、以前Geoffrey Avit氏が学生として所属していたフランスクレルモンオーベーニュ大学では、ハロゲン気相成長法を用いてInGaNナノロッドの成長を行ってきたが、pn接合が出来ないため、LED作製が出来なかった。当研究室が持つ有機金属化合物気相成長(MOVPE)法によるナノロッド成長ではLED作製は可能であるが、従来のボトムアップ的手法での作製では、c面のほかに半極性面や無極性面にも成長する。それぞれの面で成長速度やInの取り込まれが変化することから発光波長が複数になり、ディスプレイに必要な単色性で半値幅の狭いナノロッドLEDができないという課題があった。同氏は当研究室のMOVPE装置を用いてc面上にInGaN/GaN多重量子井戸(MQW)を成長後、トップダウン的にエッチングすることにより、アキシャルタイプのナノロッドを作製する方法を用いた。エッチングパターンの作製には、従来の電子線描画に比べて圧倒的に生産性の高いナノインプリントを用いた。トップダウンで作製したMQWは(0001)面のみのため、幅の狭い単一ピークの発光が観察された。さらに興味深いことに、ナノロッド直径を1000 nmから100 nmと細くするにつれてブルーシフトし、例えば加工前の二次元のc面MQWの場合575 nmであったものが、200 nm径のナノロッドでは545 nmと30 nmもの短波長側へのシフトが観測された。この原因は、1.ナノロッド化による歪緩和の影響、あるいは、2.側壁部空乏層の広がりによる空乏化に基づくサイズ効果が考えられる。トップダウンによるナノロッド作製法は、応用上、ナノロッド径制御による簡易な発光波長制御が期待される。
そのほか、下地のn-GaN層、上のp-GaN層、p+n+のトンネル接合、AlCを用いたSi基板上へのGaNの成長などを行った。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。 -
分極を有する半導体の物理構築と深紫外発光素子への展開
2013年4月 - 2016年3月
科学研究費補助金 特別推進研究
天野 浩
担当区分:研究代表者
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圧力印加MOVPEによる高品質InGaN厚膜成長
2010年4月 - 2013年3月
科学研究費補助金 22246004 基盤研究(A)
天野 浩
担当区分:研究代表者
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ワットクラス超高出力紫外レーザダイオードの実現
2006年4月 - 2011年3月
科学研究費補助金 18069011 特定領域研究→特定領域研究
天野 浩
担当区分:研究代表者
紫外レーザダイオード(LD)は,現在水銀ランプを用いたリソグラフィシステムやエキシマレーザ,炭酸ガスレーザ等のガスレーザを用いた加工システムの小型化・高効率化,角膜治療,皮膚疾患部位や腫瘍部位への照射治療等新しい医療システムの実現,殺菌や空気・水の清浄化等多くの分野への応用が期待されている。本研究ではAlNを含むAlGaN系III族窒化物半導体において,(1)基板結晶の作製,極性制御基板の作製,および(2)高導電性p型およびn型結晶の実現に特化して研究を行い,更にその成果を用いて,(3)波長365nm以下のワットクラスハイパワー紫外LDの実現を目指す。
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光・電子集積回路用長寿命発光素子のためのSi上無転位GaNの成長
2006年4月 - 2010年3月
科学研究費補助金 18360155 基盤研究(B)
成塚 重弥
担当区分:研究分担者
良好な光素子の実現が可能な無転位ナイトライド系材料をSi基板上に成長すること、成長した無転位領域を利用して、ナイトライド系材料による光素子を作製することを目的とする。
そのため、(1) 有機金属原料を使用できるよう分子線結晶成長装置を改造し、(2) 低温での選択成長条件を導出し、(3) 低角入射マイクロチャンネルエピタキシー(LAIMCE)をおこなう。 -
光制御のための半導体ナノ構造作製
2006年4月 - 2009年3月
科学研究費補助金 18560353 基盤研究(C)
上山 智
担当区分:研究分担者
周期300nmの三角格子配置を有するモスアイ構造の作製方法を検討し、テーパー角度制御のためのエッチングマスク材構成を最適化することができた。また、理論計算によって予測された光透過率の角度依存性、光取出し効率の周期依存性は、実験値と定性的に一致することが確認できた。さらに、周期が500nm-600nmの範囲においては、モスアイ構造において反射される光が周期によって決定されるブラッグの回折条件を満たす反射角に変化することを見出し、SiC基板上青色LEDにこれを適用すると240%の光出力向上を得ることができた。
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次世代大電力制御用超高効率デバイス
2006年4月 - 2008年3月
科学研究費補助金 18206036 基盤研究(A)
天野 浩
担当区分:研究代表者
III族窒化物半導体(GaN)による大電力制御用FETの可能性を示すことを目的とした。平成18年度には、1.p型GaNゲート接合型HFETにおいて、表面パッシベーションによりオン抵抗の低減と相互コンダクタンスの増大を確認。2.サブスレッショルドスイングや、インバータとしてのオン損失・オフ損失が、従来のGaN系FETと比較して少ないことを確認。3.p型GaNゲート接合型HFETにおいて、障壁層組成・膜厚の制御およびゲート長、ソースドレイン間隔とオン抵抗依存性を確認。4.その関係からチャネル移動度とゲート直下の移動度の違いを明らかにした。また、FET成長用テンプレートまたは基板として、5.昇華法を用いて、2インチSiC基板上にAIN単結晶の成長に成功、および6.高温MOVPEにおけるELOを用いてSiC上に転位密度10^6cm^<-2>以下のAlNの成長に成功した。
平成19年度には、最大ドレイン電流はSiN保護膜の膜厚と相関が強いことを見出し、SiN膜厚5nmにおいて、最大ドレイン電流がゲート電圧4[V]において1.58×10^<-1>[A/mm]と、ノーマリーオフ型FETとしては極めて高く、かつリーク電流が1.45×10^<-8>[A/mm]と極めて少なく、ON/OFF比が7桁以上、サブ閾値電圧が90[mV/dec.]と小さく、また低消費電力動作に必須の低オン抵抗3.4[mΩcm^2]を実現した。また耐圧は家庭用クーラーのインバーター用としては十分な325[V]であった。更に、耐圧はゲートドレイン間距離に比例することを実験的に証明した。 -
紫外発光ダイオードを用いた皮膚病治療システム
2005年4月 - 2006年3月
科学研究費補助金 17650155 萌芽研究
天野 浩
担当区分:研究代表者
光線治療の光源として、中波長紫外線(UV-B)や長波長紫外線(UV-A)を波長域に持つ蛍光管が用いられ、紫外線治療は皮膚疾患の治療として一般化している。様々な皮膚疾患に対して、それぞれある特定の波長の光線を用いることが治療に必要である。名古屋市立大学病院では、現在、波長311-313nmのUV-B波により乾癬の治療を実施している。その光源として用いられているのが、オランダのフィリップス社が開発した蛍光管である。蛍光管を用いた光線治療システムは、大面積での照射が可能であり、また311-313nmのみであるがスペクトル線幅の非常に細い紫外光を得られる特徴がある。しかし、(1)装置が大掛かりで持ち運びできない。(2)装置の設置に数m^2程度の大きな面積が必要である。(3)大面積照射のため正常部位にも照射してしまう。(4)医療従事者の被爆の可能性がある。更に、(5)現在では、スペクトル線幅の非常に細い紫外光は311-313nmのみであり、利用可能な波長が蛍光管によって限定されて波長選択性に乏しい、などの問題点があった。これらを解決する方法として、小型UV光源である半導体発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)が注目される。III族窒化物半導体を用いたUV LEDは急速に開発が進んではいるものの、360nm以下の短波長では、現在も効率は数%程度である。本研究では、市販のUV LEDによる紫外線照射装置を用い、健全細胞よりもUV光に対する感度が高い腫瘍細胞のうち、ヒト急性T細胞性白血病細胞株であるJurkat細胞に対してUV照射を行い、細胞の自発的な死である、いわゆる細胞のアポトーシス、および壊死の状態であるネクローシスが観測されるかどうかを確認することを目的とした。その結果、従来の大型蛍光管を用いたものと同等のアポトーシス及びネクローシスを確認した。
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超ワイドギャップAlN系半導体の超高温エピタキシャル成長による低転位化とデバイス
2003年4月 - 2006年3月
科学研究費補助金 15206003 基盤研究(A)
天野 浩
担当区分:研究代表者
GaN系およびGaInN系ナイトライドは本申請者等が開発した低温堆積層によるサファイア基板の表面制御法が世界標準となり、既に青色LED、緑色LED、白色LEDや紫色LDなどへ応用され、実用化している。ナイトライドの応用は可視先に留まらない。癌細胞・殺菌への照射死滅・DNA選別、近視治療、皮膚病治療など生体応用、色彩制御型高効率・長寿命・高性能照明等への応用、エキシマレーザを代替する超高精細加工等、紫外~深紫外発光素子はAIN系ナイトライドによってのみ実現可能である。従来、AIN系ナイトライドは1,200℃程度で製膜が行われていたが、本申請者は独自の表面泳動の実験より、高品質エピタキシャルAIN膜を得るためには、(1)AIN基板上に製膜すること、および(2)1,800℃以上の高温で製膜することが必要であることを見出した。
本研究の目的は、超ワイドギャップAIN系半導体の開発のため、
1.AIN基板の開発
2.AIN基板上への超高温MOVPE法による低転位AIN薄膜の成長、および
3.低転位AIN薄膜上へのAlGaN量子構造による深紫外発光・受光素子の開発を目指した。
平成15年度後半に超高温MOVPE装置を導入して高温での成長方法を検討し、イビデン(株)の協力を得て、特に高温・アンモニア耐性部品の開発に努めた。また昇華法を用いてSiC基板上および自然核発生にてバルクAIN単結晶を成長した。平行して従来の通常温度MOVPE装置を用いて、横方向成長(ELO)を利用した紫外発光素子用低転位AlGaNの成長およびレーザダイオード(LD)の試作を行い、サファイア上では世界最短波長のLDを実現した。平成16年度には超高温MOVPE装置による厚膜AINの成長を行った。平成17年度には、ELOを利用して、サファイア基板上への低転位AIN成長に成功した。 -
サファイア基板上へのレーザアシスト超高品質AlNエピタキシャル成長
2003年4月 - 2004年3月
科学研究費補助金 15656008 萌芽研究
天野 浩
担当区分:研究代表者
本萌芽研究は、トリメチルアルミニウムと純窒素を原料に用いた、MOVPE法による高品質AlN単結晶薄膜の成長を目的として行った。
従来、MOVPE法によるAlN薄膜の成長時の基板温度は、せいぜい1,300℃程度までである。しかし、本申請者は独自の凹凸加工を施したAlNでの表面泳動の実験より、高品質エピタキシャルAlN薄膜成長には、1,800℃以上の高温で製膜することが必要であることを見出した。従来のMOVPE法で1,300℃程度で成長が行われていたのは、窒素原料として反応性の高いアンモニアが用いられていたからであり、本来のエピタキシャル成長温度よりずっと低いことから高品質結晶を得るには至っていない。また研究開始当初は、1,800℃という高温で製膜可能なMOVPE装置部品、特に基板を加熱する為のサセプタがなかった。そこで、炭酸ガスレーザを援用し、基板表面だけ加熱する事により高品質AlNの製膜に必要な1,800℃の確保を試みた。
しかしながら、使用した炭酸ガスレーザでは、パワーが少ないことから、表面の温度を上げるには至らなかった。そのため、研究計画を根本から再検討し、1,800℃で使用可能なMOVPE装置部品、特に基盤加熱に用いるサセプタ材料を探索した。いくつかの材料のうち、CVD法で製膜したカーボンをコーティングしたグラファイトが安定性・寿命および制御性にすぐれていることが分かった。現在、そのCVDカーボンコーティンググラファイトを使用してAlNの製膜実験を遂行中である。本萌芽研究は、トリメチルアルミニウムと純窒素を原料に用いた、MOVPE法による高品質AlN単結晶薄膜の成長を目的として行った。
従来、MOVPE法によるAlN薄膜の成長時の基板温度は、せいぜい1,300℃程度までである。しかし、本申請者は独自の凹凸加工を施したAlNでの表面泳動の実験より、高品質エピタキシャルAlN薄膜成長には、1,800℃以上の高温で製膜することが必要であることを見出した。従来のMOVPE法で1,300℃程度で成長が行われていたのは、窒素原料として反応性の高いアンモニアが用いられていたからであり、本来のエピタキシャル成長温度よりずっと低いことから高品質結晶を得るには至っていない。また研究開始当初は、1,800℃という高温で製膜可能なMOVPE装置部品、特に基板を加熱する為のサセプタがなかった。そこで、炭酸ガスレーザを援用し、基板表面だけ加熱する事により高品質AlNの製膜に必要な1,800℃の確保を試みた。
しかし -
マストランスポートIII族窒化物秩序化ゼロ次元構造の実現と緑色レーザダイオード
2000年4月 - 2002年3月
科学研究費補助金 12450017 基盤研究(B)
赤﨑 勇
担当区分:研究分担者
GaN系III族窒化物半導体の単結晶薄膜成長法は、サファイアを基板とする場合、本申請者のグループが1986年に開発した成長モード制御法が一般化している。この結晶成長法が基礎となり、青色~緑色発光ダイオードが実用化し、紫外~紫色レーザダイオードが実現したのは、周知の通りである。これら発光素子の活性層としてGaInNが用いられている。GaInNは成長表面における表面エネルギーの微妙な差によって、成長層には空間的な組成変調が生じる。この数十nmレベルの空間的な組成変調のうちInNモル分率の高い部分は電子正孔対を捉える、いわば自然ゼロ次元構造として働くため、同材料を用いた発光ダイオード中に高密度の貫通転位密度があっても発光効率が低下しないひとつの理由として考えられている。この自然組成変調構造は、発光ダイオードとしては都合が良いが、組成に対する空間的コヒーレンシーが低下するため、利得幅が広くなり、最大利得が低下するために、レーザダイオードには大きなマイナスの要因として働く可能性がある。これが青色から更に長波長のレーザダイオードが、III族窒化物においていまだ実現していない理由の一つである。また同材料の強い圧電性のため、電子正孔対が分離しInNモル分率の増加とともに再結合割合が低下することも理由として考えられている。本研究では、これらの実験事実に基づき、空間的コヒーレンシーに優れた組成変調構造、所謂秩序化ゼロ次元構造を実現することを目的として研究を行った。この実現のため、本研究グループが世界ではじめて見出したマストランスポート現象を応用した。1年目は、GaInN多重量子井戸の発光特性を詳細に評価し、従来いわれているようなGaInNの組成変調構造は存在しないことを突き止めた。2年目には、その発光特性の解析を進め、発光過程が表面空乏層に強く影響を受けていることを見出した。本研究により、GaInN系量子井戸の発光過程が明らかとなり、緑色レーザダイオード実現のための学術的バックボーンが確立した。
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光励起及び結合長制御不純物共添加による超低抵抗p型III族窒化物の作製
2000年4月 - 2001年3月
科学研究費補助金 12875006 萌芽的研究
天野 浩
担当区分:研究代表者
GaN系III族窒化物半導体は、サファイアを基板とする場合、本申請者のグループが1986年に開発した成長モード制御法が一般化している。この結晶成長法が基礎となり、伝導性制御が可能となり、1989年には不可能とまで云われたp型結晶及びpn接合が実現した。
現在、有機金属化合物気相成長法によりGaNにおいて、室温での抵抗率数Ωcm、自由正孔濃度10^<18>cm^<-3>台のp型伝導性結晶が再現性良く得られている。n型結晶は抵抗率10^<-3>Ωcm以下、自由電子濃度10^<19>cm^<-3>台であり、p型結晶の電気的特性は、今だ十分な水準とは云えない。また、よりバンドギャップの大きいAlGaNに至っては、AlNモル分率0.3を超えると、p型伝導性を生じさせるのは現状では極めて困難である。
アクセプタ不純物としてMgが用いられているが、1.水素により不活性化すること、2.活性化エネルギーが大きいこと、が問題である。1.については、成長後低加速電子線照射処理などにより、ある程度脱水素化することは可能であるが、2.については本質的な問題である。本研究では、これらの問題の解決を探る方法を検討する。
ドナーであるシリコンをコドープして特性を評価したが、p型の正孔濃度がN_A-N_Dに従い、ドープしたシリコン濃度に従って減少するという、極常識的な結果であった。理論の中には、Mgの形成するアクセプタ準位の形成機構を考慮してコドープの効果を論ずるものも見受けられるが、本実験からは、Mgアクセプタの形成は、水素原子様であり、単純であると推測された。AlGaN中へのMgのドーピングに関しては、二次元正孔形成の可能性が見出され、今後の研究の発展が期待される。 -
III族窒化物半導体気相成長における応力制御による転位低減とその場観察法の確立
1999年4月 - 2001年3月
科学研究費補助金 11450131 基盤研究(B)
天野 浩
担当区分:研究代表者
低温堆積緩衝層を用いたサファイア上へのGaNの成長において問題となっている高密度貫通転位の構造・特性の理解及びその低減のため、成長中に意識的に結晶に応力を印加し、貫通転位の振舞いを観察してその機構を明らかにすることを目的として研究を行った。
平成12年度は、(1)低温中間層を用いた熱応力印加、(2)トレンチ部での成長面変化による貫通転位への応力変化、を調べた。(1)に関しては、GaN低温中間層を用いると、サファイアとの熱膨張係数差によるニ軸性引張応力が、繰り返し回数と共に増加し、それにともなって刃状転位、混合転位両方とも屈曲して、その上のGaNでは貫通転位密度が減少することが分かった。一方、AlN低温中間層の場合は、その上のGaN成長において、AlNとGaNの格子定数不整に基づき、最初ニ軸性圧縮応力が加わることにより、引張応力を相殺してしまうこと、またそれに伴い、混合転位は減少するが刃状転位に影響は無いか、或いは逆に増加してしまうことが明らかとなった。(2)に関しては、トレンチ部でマストランスポートが起き、熱処理だけでトレンチが徐々に埋まってしまうこと、及び特に混合転位については、自らの応力場による力が加わり、必ず表面に垂直になるように伝播することが分かった。逆に、混合転位の振舞いから、どの様に成長が進むかを特定できることがわかった。一方、刃状転位については、横方向の応力が加わったとき、水平方向に屈曲することが実験的に明らかとなった。平成13年度は、昨年度の結果を更に発展させ、(1)GaNのトレンチ構造のみならず、サファイア基板やその他の基板についてもトレンチ構造を形成し、その際に生じる応力分布と転位の挙動を調べること、及び(2)部分的応力印下をGaNだけではなくAlGaNにも適用し、転位挙動の差異等について透過電子顕微鏡を用いて詳しく検討した。(1)に関しては、サファイア基板のトレンチ構造についても、昨年度見出した横方向応力による転位の屈曲が効率的に生じ、トレンチ上で低転位密度GaNを得ることに成功した。(2)に関しては、クラック抑制のため低温堆積AlN中間層とGaNのトレンチ構造を併用した。AlGaNの場合もGaNと同様、横方向の応力印加により低転位化できることが分かった。AlNモル分率0.25のAlGaNでトレンチ上部での転位密度は10^6cm^<-2>程度であり、GaNの横方向成長の結果と遜色ない。一方、GaとAlの拡散場での振る舞いに違いより、トレンチとテラ -
全固体式真空紫外レ-ザ-の実現
1997年4月 - 1999年3月
科学研究費補助金 9875083 萌芽的研究
天野 浩
担当区分:研究代表者
二次高調波結晶、アップコンバ-ジョン結晶等による固体式真空紫外レ-ザ-ダイオ-ド実現のため、III族窒化物半導体レ-ザ-ダイオ-ドの高性能化について検討した。
AlInNはInNモル分率0.17でGaNと格子整合するため、新しいヘテロ接合用混晶として有望である。本研究では、組成の異なるAlInNをGaN上に成長し、格子整合する付近でモザイク性が最も減少し、高い結晶品質を有するAlInNの成長が可能であることをはじめて見出した。また、同混晶系からの室温でのフォトルミネッセンスを始めて観測した。
活性層として用いられるGaInNの組成とバンド構造の関係を変調反射分光法を用いて精密に測定した。
III族窒化物半導体レ-ザ-ダイオ-ドは、通常サファイア上に作製されており、壁開性がないため、他の化合物半導体と同様の方法では共振器ミラ-面を作製することは出来ない。本研究では、集束イオンビ-ム(FIB)加工装置を用いて共振器ミラ-の作製を行った。その結果、FIBは有用であり、またミラ-同士の回転角依存性やあおり角依存性に関して、新たな知見を得ることが出来た。
また従来、光閉じ込め不足によるビ-ムの多峰性が大きな問題であったが、AlGaNn型導電層を用いた新しい構造により単峰性ビ-ムを実現した。
現在、高出力化について検討を進めている。更に、二次高調波結晶やアップコンバ-ジョン結晶とのカップリングについては今後の課題である。 -
超高感度紫外線検出器の試作研究
1997年4月 - 1999年3月
科学研究費補助金 9450133 基盤研究(B)
赤﨑 勇
担当区分:研究分担者
アンド-プGaNの結晶成長条件と電気的特性の関係について詳しく検討し、特にアンモニア流量を増加することにより、高感度紫外線検出に必要な超高抵抗GaNの作製に成功した。
サファイア上のIII族窒化物半導体結晶成長において、低温堆積中間層の挿入という新しい結晶成長法を開発した。この新しい結晶成長法により、紫外線検出に最も悪影響を及ぼすと云われているGaN中の貫通転位を、従来に比べて2桁以上低減することに成功した。また、同法をAlGaNに適用し、全組成域に亙りGaNと同程度の高い結晶品質を持ち、しかもクラックの無いAlGaNの作製に世界で始めて成功した。
新しい結晶成長法により作製した低転位GaN結晶を用いて、くし形電極による光伝導セルを試作した。アンド-プGaNを用いて100pW/cm^2以下の照射強度で応答する受光面を実現した。実用レベルは1,000pW/cm^2なので、少なくとも10倍以上の高感度であった。またアンド-プAl_<0.2>Ga_<0.8>Nにおいて、紫外光応答を確認した。吸収端は335nmであった。感度は5A/Wであり、世界最高水準であった。
更に同結晶成長法によりp-n接合型GaNフォトダイオ-ドを試作した。実用上問題となる暗電流の起源について検討し、低逆バイアス時においては反応性イオンエッチングにより作製したメサ部での表面電流が、数ボルト以上の高逆バイアス時には、pn接合でのトンネル電流が支配的であることを明かにした。実際の使用バイアス条件において0.8pAの超低暗電流を実現した。従来は、10、000pA以上であった。
今後更に高AlNモル分率AlGaNのpn接合の実現、波長選択型検出器の実現、電流駆動力の大きいフォトトランジスタタイプの光検出器の実現等の課題に取り組む予定である。 -
低次元構造のIII族窒化物による極限機能デバイスの試作研究
1995年4月 - 1998年3月
科学研究費補助金 7505012 試験研究(A)→基盤研究(A)
赤﨑 勇
担当区分:研究分担者
本研究は、III族窒化物を用いて二次元のみならず、一次元または零次元など低次元構造を作製する事により極限の性能を引き出し、その量子的基礎物性を評価すると共に、短波長発受光極限、高温動作極限、高速動作極限など、III族窒化物半導体の極限を極め、また、それを各種デバイスに応用し、極限機能半導体デバイスを試作する事を目的とした。以下各項目事に得られた成果を纏める。
(1)二次元量子井戸とそれを活性層に持つIII族窒化物レ-ザ-ダイオ-ド
1.高精度X線回折及び顕微PLにより、1分子層よりはるかに少ない層厚揺らぎ及び組成不均一1%以内の高品質GaInN/GaN二次元量子井戸構造を作製した。
2.圧電効果による内部量子閉じ込めシュタルク効果を検証した。
3.最短波長半導体レ-ザ-ダイオ-ドを試作した。
4.FIB加工共振器端面をもつ紫色レ-ザ-ダイオ-ドを試作した。
(2)ダブルヘテロ構造を利用した波長選択型紫外線検出器
AlGaN/GaN及びGaInN/GaN構造フォトダイオ-ドを試作し、設計値通りの波長選択性を得た。
(3)二次元電子ガスを用いたマイクロ波増幅器
AlGaN/GaN界面での二次元電子ガスを用いた電界効果トランジスタを試作し、最大発振周波数77GHzを記録した。 -
GaN基板上へのIII族窒化物の低次元構造の作製と物性に関する研究
1995年4月 - 1997年3月
科学研究費補助金
天野 浩
担当区分:研究代表者
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シリコンを基板として用いたIII族窒化物大型バルク単結晶の作製に関する研究
1994年4月 - 1996年3月
科学研究費補助金 一般研究B
赤﨑 勇
担当区分:研究分担者
本研究は、二つのテ-マに大別できる。即ち、(1)OMVPE法或いはMBE法により大面積Si 基板上にGaNを作製し、(2)それを種結晶としてHVPE法によりGaNを高速成長させる事である。(1)について、本研究グル-プは研究開始当初より既にAlN中間層を用いたSi基板上へのGaNの作製の検討をしていたが、最大の問題点はSiとGaNの熱膨張係数最に基づくクラックの発生であった。そこで、本研究では、A.GaNの薄膜化によるクラックの抑制、及びB.一部絶縁層で覆った上への横方向成長、即ちエピタキシャルラテラルオ-バ-グロ-ス (ELO)(西永等)法等の方法を検討し、大面積でしかもクラックの無い単結晶の作製を狙った。(2)について、大型単結晶の作製には、再現性良く、しかも高速成長可能な成長法の開発が必要である。HVPE法では、成長速度が最大0.1mm/hであり、しかも成長速度の再現性に乏しい。本研究では、成長装置を工夫し、出来る限り早い成長速度を実現する事を目的とした。以下、得られた成果を纏める。 (1)OMVPE法によるSi基板上のGaN単結晶の作製サファイアの場合における低温堆積緩衝層と異なり、高温1,100℃程度でAlN単結晶を成長し、その上にGaNを成長することにより、高品質GaNの成長が可能となった。室温において、初めて励起子に基づく遷移が反射光変調スペクトルより確認された。得られた膜は、熱膨張係数の違いにより、強い引っ張り応力を受けていることが分かった。 (2)HVPE法の改良 GaCl_3とTMGaを供給可能な装置を試作し、まずサファイア上に低温堆積緩衝層を用いてOMVPE法で高品質GaNを成長の後、HVPE法でGaN を成長させる事により、再現性良く高品質GaN厚膜の成長が可能である事が分かった。 -
シリコン基板上への窒化物半導体結晶成長
1993年4月 - 1994年3月
科学研究費補助金
赤﨑 勇
担当区分:研究分担者
GaNを中心とするIII族窒化物半導体、AlGaN,GaN及びGaInNは、室温で安定相であるウルツ鉱構造を形成する場合、全て直接遷移型バンド構造を有し、しかもそのバンドギャップが室温で1.9eVから6.2eVと広範囲に亙ることから、特に400nm台の可視短波長、及び紫外光のレ-ザダイオ -ドの実現、或いはフルカラ-発光ダイオ-ドの実現にとって有望である。通常、III族窒化物半導体はサファイア基板上に作製するが、サファイアが絶縁性であること及び堅牢であることなどから、加工の容易な低抵抗材料基板が望まれていた。Siは加工及び低抵抗化が容易であるため、有望な基板用材料である。しかしながら、III族窒化物とSiは結晶構造或いは原子配列周期が異なるため、高品質結晶の作製は容易ではなかった。本研究では、本科学研究費の補助などにより、【.encircled1.】Si基板上への高品質結晶作製のためのMOVPE装置の作製、及び【.encircled2.】Si基板上への高品質結晶作製法の確立を目的として研究を行った。その結果、1.二層流横型MOVPE炉の導入により、極めて制御性のよい成長が可能となった。また、 2.GaN、AlGaN或いはGaInN成長の前に、比較的高温でSi基板上にAlNを中間層として成長することによりサファイア基板上と同程度の高品質結晶の作製が可能であることが明かとなった。しかしながら、熱膨張係数の違いによりクラックが発生してしまうこともわかり、現在までデバイス作製には成功していない。今後、クラック発生を抑制する方策を検討していく予定である。
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窒化物半導体極短波長面発光レ-ザの研究
1993年4月 - 1994年3月
科学研究費補助金 一般研究C
天野 浩
担当区分:研究代表者
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窒化物ワイドギャップ半導体の結晶成長の低温化に関する研究
1991年4月 - 1992年3月
科学研究費補助金 一般研究C
平松 和政
担当区分:研究分担者
1.サファイア基板上に成長させたGaN(0001)単結晶膜上に常圧MOVPE法を用いて、窒素原料ガスとTMIn(トリメチルインジウム)原料ガスを交互に供給することによりInNの成長を試みた。その結果、340〜380℃の低温で単結晶InN単結晶薄膜を成長させることに成功した。1パルス当たりのTMInの供給量が0.22μmolの場合には、Inのドロップレットが発生しRHEEDはハロ-パタ-ンを示すのに対し、TMInの供給量を減少させ NH_3の供給量を増加させるとともにNH_3供給時にはH_2の供給を止めることにより、膜質を改善することができた。また、同様な条件において TMInとNH_3を同時に供給した場合、単結晶が得られなかったことから、原料ガスの交互供給がこの温度での単結晶成長に必要不可欠であることが明らかになった。 2.窒化物半導体の低温での結晶成長をサファイア以外にSi基板上においても実現するために、まず通常の高温(1050℃)で常圧MOVPE法によりSi 基板上にGaNの結晶成長を行った。Si基板上に直接GaNを成長させた場合には、膜は多結晶になり多くの粒状結晶からなることが分かった。他方、Si基板上にSiC中間層(〜200nm)を介して成長さたGaN薄膜は、表面平坦性が良好で単結晶であることが確認された。この結果、SiC中間層がSi基板上の窒化物半導体の結晶成長に重要な役割を果たすことが明らかになった。このことから結晶成長温度の低温化においても中間層の検討が必要であることが示唆された。 3.窒化物半導体による多層構造の作製およびその低温成長の可能性を探るために、まず通常の高温でGaN/Al_xGa_<1-x>Nの多層構造の成長を常圧MOVPE法により試みた。得られた膜をX線回折法等により評価した結果、4.5nm〜60nmの周期をもつ多層構造が GaN(0001)/サファイア基板上に実現していることが判明した。
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高性能GaN系青色LEDの試作研究
1987年4月 - 1989年3月
科学研究費補助金
赤﨑 勇
担当区分:研究分担者