科研費 - 淺原 良浩
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大陸縫合帯イランの鉱床成因解析−新しい同位体地化学探査技術の実用化− 国際共著
研究課題/研究課題番号:17H01671 2017年4月 - 2021年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
淺原良浩, 壷井基裕, 南雅代, 堀江憲路, 山本鋼志
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:37310000円 ( 直接経費:28700000円 、 間接経費:8610000円 )
本調査研究の目的は、Rb-Sr系、Sm-Nd系などの天然の放射壊変系同位体の分析を、熱水鉱床、堆積鉱床などの多様な鉱床に適用し、得られた同位体初生値と年代値に基づいて鉱床成因解析を行うことである。具体的には、大陸縫合帯であるイラン国内における火成活動と鉱床生成の関連性を明らかにするため、ザグロス山脈北西部およびアルボルズ山脈西部を対象に現地調査を行い、鉱石、鉱床母岩、貫入火成岩などの化学分析・同位体分析を実施し、新しい同位体地化学探査の実用化を目指している。3年目は、2019年4~5月(11日間)および10月(10日間)に現地調査を行った。調査地域は、ザグロス造山帯北西部の白亜紀花崗岩体(ゴルベ地域、ウルミエ湖周辺)と第三紀・第四紀の火山岩類(タカブ地域、サハンド地域)である。4月の調査は、代表者、分担者1名、協力者6名(日本側の大学院生1名、イラン側の研究者2名と大学院生3名)の計8名で、10月の調査は、代表者、 分担者1名、協力者4名(日本側の大学院生1名、イラン側の研究者3名)の計6名で実施した。採取した花崗岩、閃緑岩、安山岩の試料について薄片観察を行った後、名古屋大学で化学分析とRb-Sr、Sm-Nd系の同位体分析、LA-ICP-MSによるジルコン年代測定を行った。タカブ地域の火山岩類のSr-Nd同位体初生値、微量元素組成とジルコン年代について詳細に解析を行った結果、プレート衝突に伴う第三紀のマグマ活動が複数のステージに分類されることが明らかとなった。このマグマ活動(マグマ源)の違いはザグロス造山帯北西部の鉱床成因解析の重要な手掛かりとなるものであり、本調査研究3年目の重要な成果である。本研究成果に関する論文は執筆中であり、2020年夏頃までに国際誌に投稿する予定である。
交付申請書に記載した2019年度(3年目)当初に予定していた研究実施計画の内容は十分達成している。予定していた春と秋の2回の現地調査、採取した試料の化学分析および同位体分析は当初予定どおり完了し、2018年度および2019年度の分析結果に基づく論文執筆は順調に進み、年度当初に予定していなかった研究も含めて、2019年度の研究は当初計画以上に進展している。その具体的な内容は次のとおりである。
(1)イラン北西部における希土類元素(レアアース)の資源ポテンシャルに関する評価を実施した。これは、年度当初には予定していなかった研究である。本調査研究(H29~R02)およびH25~H28の基盤研究(B)で積み上げてきたイラン北西部に広がる花崗岩の希土類元素濃度データをコンパイルし、希土類元素の高濃度分布地域と火成活動、テクトニクスとの関係を明らかにするとともに、資源ポテンシャルの高い地域の抽出を試みた。これらの成果に関する論文は、受理されており、2020年度中に公表される予定である。
(2)2019年度に公表された論文以外にも、印刷中(in press)の論文は7編、投稿中の論文は3編あり、順調に成果公表が進んでいる。
2019年度の研究実施計画は、以上のとおり当初の計画以上に進展しており、最終年度(2020年度)で当初の研究目的を十分に達成できる見通しがある。
2020年度(最終年度)の現地調査は10月に実施する予定であり、準備を進めている。研究代表者、分担者がイランでの現地調査を実施できない場合は、現地の研究協力者と連携して、現地協力者が現地調査、試料採取を進める。昨年度までに調査を実施した西アゼルバイジャン州のウルミエ湖周辺からクルジスタン州西部の再調査および追加試料採取を主に実施する。この追調査は、これまでの分析結果から当初予想していなかった新たな知見が得られる可能性が出てきたため、その可能性を確認することが目的である。また、これまで鉱床母岩としての火成岩の成因解析だけでなく、マグマ活動に関わる深部流体の解析も行うため、昨年度までに採取した火山周辺の地下水試料(温泉水)の化学分析、同位体分析にも新たに取り組む。
10月には、イランの研究協力者との共同現地調査だけでなく研究総括を含めた研究打合せを予定しているが、実施できない場合に備えて、すでにメール等で緊密に連絡を取り合い、最終年度の研究が滞りなく推進できる体制を整えている。成果公表については当初予定以上に進んでおり、2020年度も3~4編の論文を投稿する予定である。 -
鉄とネオジム同位体を指標とした海洋生態系物質循環の解明
研究課題/研究課題番号:17H01857 2017年4月 - 2020年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
淺原良浩, 長島佳菜, 藤木徹一
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:16120000円 ( 直接経費:1240000円 、 間接経費:3720000円 )
鉄は海洋の生態系をコントロールする重要な要因の1つであるが、海洋一次生産者である植物プランクトンが摂取している鉄の起源や化学形態に関する知見は少なく、そのため大陸などからの鉄の供給と生物生産の関係を定量的に評価することが困難である。本研究では、鉄(Fe)の安定同位体とネオジム(Nd)の放射壊変起源同位体を併用し、植物プランクトンが摂取する鉄の起源・形態を特定することが第一の目的である。さらに、この結果に基づき、北太平洋亜寒帯域や北極海に供給される鉄の起源・量の年変化・季節変化を同位体データおよび化学データから推定し、生物生産量・生物群集の変化のデータと対比しながら、これらの海域の生物生産と陸域からの鉄供給との関係を定量的に評価することが第二の目的である。
沈降粒子中の鉄の起源を特定する指標としてのFe同位体とNd同位体の有用性の検証を進めるため、初年度(平成29年度)は分析技術の確立に重点を置き研究を進めた。具体的には、(i)逐次溶解法による沈降粒子試料からの各種構成成分の分離・抽出条件の最適化と、(ii)極微量ネオジムの同位体比測定法の確立を行った。2年目(平成30年度)は、これらの分析法を実試料に適用した。具体的には、北太平洋亜寒帯域の沈降粒子に逐次溶解法を適用し、各成分の主成分、微量成分の定量分析、Sr、Ndの同位体分析を進めた。その結果、沈降過程での珪酸塩砕屑粒子の組成変化を新たに確認する、などの成果が得られた。一方、逐次溶解法による分離・抽出条件に一部問題点も確認された。3年目(令和元年度)は、この分析上の問題点を解決した上で、沈降粒子の年変化・季節変化に本格的に取り組んだ。その結果、同位体組成および化学組成の季節変化を見出すとともに、その変動の主要因を特定することに成功した。これは、北太平洋亜寒帯域への供給物質の定量的評価の手掛かりとなる重要な成果である。
平成30年度(2年目)終了時には進捗状況は「やや遅れている」状態であったが、令和元年度(3年目)当初の交付申請書に記載した研究実施計画はおおむね順調に進展している。3年目は、2年目に残されていた分析手法の問題点を解決した上で、北太平洋亜寒帯域の沈降粒子の年変化・季節変化の解析に取り組み、3年目の研究実施計画は順調に実施できた。具体的には、分析上の問題点を解決するため逐次溶解の条件設定を一部見直し、さらに、想定外に少なかった珪酸塩砕屑物成分の分析法の見直すことで、手法の改良を3年目の前半までに完了した。その後、沈降粒子(実試料)の年変化・季節変化の本格的な分析を再開し、年度末の3月までに、年変化 ・季節変化のデータの取得は順調に進んだ。その結果、季節変化を見出すとともに、その変動の主要因の特定に成功した。
以上の通り、令和元年度の研究実施計画はおおむね順調に進んでおり、最終年度(令和2年度)で当初の研究目的を十分に達成できる見通しがある。
最終年度(4年目)は、詳細な季節変化のデータを取得するため、引き続き北太平洋亜寒帯域の沈降粒子の分析を行う。ネオジム(Nd)および鉄(Fe)の同位体比測定は、代表者の研究室の表面電離磁場型質量分析計(TIMS)、韓国資源地質研究院(KIGAM)の多重検出器型ICP-MS(MC-ICP-MS)をそれぞれ用いて行う。MC-ICP-MSについては、名古屋大学とKIGAMとの同位体地球化学の研究プロジェクトの一環で利用する計画である。8月頃に代表者と分担者、研究協力者の4名が集まり、沈降粒子の年変化・季節変化の分析データを吟味し、データの取りまとめを進める。追加分析の結果に基づき、8月頃までには、化学組成、同位体組成、鉱物組成の1年間の時系列変化を対比し、起源物質の特定とその季節変化を明らかにする。Fe、Sr、Nd同位体組成から、アジア大陸からの風成塵、千島列島からの火山灰、オホーツク海からの流入物など、この海域への供給物質の季節変動を確認できる見込みである。
これまでに得られた研究成果を国内会議等で発表するとともに、国際誌に論文を投稿する。 -
放射壊変系同位体を用いたイラン・ザグロス造山帯の希少金属鉱床の成因解析 国際共著
研究課題/研究課題番号:25303029 2013年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
淺原良浩, 壷井基裕
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:16770000円 ( 直接経費:12900000円 、 間接経費:3870000円 )
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過去の温暖期における南極氷床の大規模融解の実態解明:鉛同位体に着目した新たな解析
研究課題/研究課題番号:21H04924 2021年4月 - 2025年3月
科学研究費補助金 基盤研究(A)
堀川 恵司, 岩井 雅夫, 淺原 良浩, 板木 拓也
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
近年の海洋観測と衛星データから,西南極氷床の底面に暖水が流入し,棚氷の融解が加速していることがわかってきた.この暖水流入は,将来,南極氷床を融解させ,海面水位を10m以上上昇させる可能性がある.本研究では,海水準が10-23m程高かった鮮新世の温暖期を対象にして,暖水流入による南極氷床の大規模な融解があったかどうか,また実際にどの地域でどの程度,融解していたかを南極周辺の海底堆積物の化学分析から明らかにする。本研究を通して,温暖期における氷床の動態(脆弱域・融解量)について知見を深め,海水準の将来予測精度の向上に資する研究成果を創出する.
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古代西アジアをめぐる水と土と都市の相生・相克と都市鉱山の起源 国際共著
研究課題/研究課題番号:18H05447 2018年6月 - 2023年3月
文部科学省 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
安間了, 荒川洋二, 横尾頼子, 下岡順直, 中野孝教, 佐野貴司, 若狭幸, 淺原良浩, 堀川恵司, 黒澤正紀, 八木勇司, 池端慶, 丸岡照幸, 昆慶明
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
本計画研究の目的は、西アジアにおける都市文明勃興期から成熟期の都市を取り巻く環境変動や都市鉱山化の進行過程について、地球環境学的・地球化学的な観点から明らかにすることである。
本年度は徳島大学に走査電子顕微鏡を導入して研究環境を整備した。平成30年度に筑波大学に導入したマルチコレクター型ICP質量分析計システムの慣熟を行った。古代冶金に関する先行研究、古代の銅・銀・鉛鉱山と製錬法の概要をまとめた結果、自然銅や自然銀が枯渇するにつれて製錬法が複雑になる過程や、製錬廃棄物の頻出とその変化や地域差が把握された。古代の精錬技術の技術レベルを検討するために、イランの土器新石器時代の遺跡から出土した土器の焼成状態と銅製品の検討を行った結果、紀元前7千年紀には、孔雀石などの銅鉱石を充分製錬できる高温制御技術があることがわかった。
トルコ、イラク、イランで現地調査を行い、遺跡の発掘法面や未盗掘墓床面などで残留金属濃度のその場測定を行った。金属器の発掘された周囲の土壌で当該金属の濃度異常の分布を確認するとともに、Caなどの元素が土壌中で移動する様子を明らかにした。原産地推定のための基礎的データを集めるため、イラン地質調査所と覚書を取り交わして金・銀・銅・鉄鉱床の現地調査と共同研究を開始し、金鉱床中の黄鉄鉱の硫黄同位体組成、鉱床母岩の化学組成や年代などを明らかにした。
古環境復元のために、イラン国各地でトラバーチンおよびトラバーチン湧水を採取し、炭素・酸素同位体分析および14C年代・U/Th年代分析を進めるとともに、現在の環境動態を探るためにイラン国内10都市での毎月降水モニタリング網を整備した。メソポタミア下流域のAl-Aqarib遺跡を飲み込んだ砂丘堆積物の移動速度を求めるためOSL年代測定用の試料を採取した。上流域での地形の侵食速度を見積もるため、地形年代測定用試料の追加採取を行った。
冶金考古学上の新地平を切り拓くために筑波大学に導入したマルチコレクター型ICP質量分析計システムの慣熟を行い、徳島大学に多くの試料の観察・定量分析を迅速に行うことができるSEM-EDSを今年度設置したことで、研究環境はほぼ整備され、必要なデータを粛々と収集する段階に入ることができた。この間、イラン、イラク、トルコ各国で現地調査を行い、より詳細な分析に必要な試料を、各地の発掘現場や鉱床から得るとともに、その場測定・分析をとおして新たな知見や、より効率的なストラテジーを導出する知見を得た。イランでは地質調査所と研究協力に関する覚え書きを締結しながらイラン各地の鉱床やその母岩に関する基礎的な共同研究を開始するなど、連携が順調に進行している。また、当計画班は、領域全体の分析部門として性格を持っており、ほかの計画研究から依頼を受けて、文化財や考古試料の各種分析や物質科学的記載などで貢献することができた。
いっぽう、今年度の予算で計画していたメソポタミア下流域での30mボーリング調査は、現地研究協力者の積極的な関与があって準備が整ったものの、試料を輸出する方途について問題が生じ、継続課題となった。
今年度までの活動で研究環境は整備されたため、今後は系統的かつ集中的にデータを収集する段階に入る。今年度までの研究により、都市文明の発祥の地であるメソポタミア下流域で完新世の最下部まで到達するボーリングによる連続柱状試料の入手と、その中の金属元素濃集度の連続的な変化や堆積速度変化の精査が、本計画研究の大きな目標として再認識された。メソポタミア下流域での30mボーリング調査を完遂すべく、全力を尽くす所存である。
また、今後も現地における面的な調査とその場測定、採取試料の国内での詳細な分析をとおして、各地での地形や堆積速度、土壌中の各種元素濃集度などの面的な分布と深さ方向の変化を定量的に評価し、研究を推進していく所存である。また、西アジア各地の鉱床金属の組成や同位体のデータなどを系統的に収集・測定し、原産地推定のためのデータベースを構築する。
2020年3月現在、COVID-19の影響により西アジア諸国への海外調査隊の派遣は困難になりつつある。その場合でも、イラン国地質調査所との覚え書き締結をはじめ現地研究協力者との連携によって試料を継続的に入手する体制を本年度中に整えることができたこと、本年度までに今後2年程度かけて分析するに不足がない程度の多くの試料は入手できていることから、本計画研究は充分に遂行可能である。 -
火葬骨の高確度炭素14年代測定と食性解析のための基礎研究・考古資料への展開
研究課題/研究課題番号:18H00756 2018年4月 - 2021年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
南雅代, 若木重行, 淺原良浩, 高橋浩
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:16900000円 ( 直接経費:13000000円 、 間接経費:3900000円 )
従来の出土骨を対象とした考古化学研究では、骨の有機成分であるコラーゲンを抽出し、その主成分である炭素・窒素・酸素の同位体を利用することにより、年代測定や食性解析などが行われてきた。しかし、高温の熱を被り、有機物が分解してしまっている火葬骨には従来の手法は適用できない。本研究では、骨の無機成分であるバイオアパタイトに注目し、火葬骨の炭素14年代測定に加えて、ストロンチウムの3つの同位体比(87Sr/86Sr、88Sr/86Sr、84Sr/86Sr)を組み合わせたマルチSr同位体分析により生前の食性の情報を得ることを目的としている。
2019年度は、奈良県持聖院より出土した蔵骨器内の貞慶(AD1155-1213)の火葬骨、滋賀県敏満寺石仏谷墓跡より出土した中世の火葬骨を試料とした。貞慶の火葬骨の結果から、埋葬後、土壌に埋没している間に受けた二次的変質作用の定量的評価として、骨中のBa量がよい指標であることが明らかになった。その結果を踏まえ、Ba量が少なく、二次的変質の少ない白色骨片のみを選んで、高精度炭素14年代測定を行った(Minami et al., 2019 Radiocarbon)。さらに、マルチSr同位体分析を行い、貞慶は草食の傾向が、敏満寺に埋葬された人々は肉食の傾向が強く、栄養段階が異なることを明らかにした(若木・南、日本文化財科学会第13回ポスター賞)。
石仏谷墓跡に埋没している人の生存地域を明らかにするため、周辺地域を流れる河川(宇曽川、犬上川、芹川)から地質試料を採取し、87Sr/86Srを測定した。石仏谷墓跡の火葬骨は敏満寺周辺土壌の交換態成分、そして芹川の河川水に近い87Sr/86Srを示した。このことから、石仏谷墓跡には、敏満寺周辺もしくは芹川の河川水を利用可能な地域で生活していた人々が埋葬されている可能性が示唆された(澤田ほか, 2020)。
貞慶の火葬骨の炭素14分析結果が、Radiocarbon誌(Minami et al., 2019) に掲載され、貞慶と敏満寺に埋葬された人々のマルチSr同位体分析に関する発表が、日本文化財科学会第13回ポスター賞を受賞するなど、順調に成果が得られた。敏満寺石仏谷墓跡より出土した火葬骨に対しては、炭素14年代その他でも非常に興味深い結果が得られつつある。滋賀県多賀町周辺の地質試料を追加採取してSr同位体比を測定し、植物と埋敏満寺遺跡石仏谷墓跡から出土した火葬人骨の値を解釈するための基礎データを揃える。この基礎データを元に、埋葬されている人の出自を探る研究も、本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
2019年度、滋賀県多賀町の敏満寺遺跡石仏谷墓跡から出土した火葬人骨をいくつか分析した結果、埋葬地区によって年代や食性に違いが見られ、考古学的に非常に有益な試料である見込みが得られた。そこで、出土人骨が保管されている多賀町立博物館に出向き、地区ごとに、厳密な試料の追加採取を行ない、現在、これらの追加試料に対して炭素14年代測定を行いつつある。2020年度は、年代付けされたこれらの試料にマルチSr同位体分析を行い、さらに安定炭素同位体比の結果を組み合わせて、生前の食性の情報を得る試みを行う。地区ごとの年代、食性の特徴を明らかにし、考古学的知見と合わせて、研究論文としてまとめる。
一方、滋賀県多賀町周辺の地質試料の分析(澤田ほか, 2020)から明らかになった問題点を解決するため、植物を追加採取してSr同位体比を測定し、植物と埋敏満寺遺跡石仏谷墓跡から出土した火葬人骨の関係性についてもっと詳細に調べる。得られた関係性を元に、埋葬されている人の出自を探る研究を実施する。以上の結果については、総合論文にまとめる。
2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大で国内・国際学会が延期・中止になる可能性が高いため、論文執筆に時間を回し、本研究課題をまとめることに集中する。 -
重元素安定同位体分別メカニズムの解明と花崗岩成因解析への応用
研究課題/研究課題番号:24540527 2012年4月 - 2015年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
壷井基裕, 淺原良浩
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:5200000円 ( 直接経費:4000000円 、 間接経費:1200000円 )
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有機態金属元素の同位体に着目した新しい環境変動解析手法の開発
研究課題/研究課題番号:23510005 2011年4月 - 2014年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
淺原良浩, 谷水雅治
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:5460000円 ( 直接経費:4200000円 、 間接経費:1260000円 )
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微量金属元素同位体を用いた北極圏の陸域および縁海の環境変動解析の試み
研究課題/研究課題番号:20510008 2008年4月 - 2011年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
淺原良浩
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
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微量金属元素同位体を用いた河川および沿岸海洋の環境動態解析の試み
研究課題/研究課題番号:15710009 2003年4月 - 2006年3月
科学研究費補助金 若手研究(B)
淺原良浩
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )