科研費 - 髙橋 祐介
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プラットフォームビジネスとしての電子商取引をめぐる法規整の在り方
研究課題/研究課題番号:19H00569 2019年4月 - 2024年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
千葉 恵美子, 林 秀弥, 大澤 彩, 高橋 祐介, 品田 智史, 松尾 健一, 青木 大也, 津野田 一馬, 川地 宏行, 水島 郁子, 白石 大
担当区分:研究分担者
電子商取引は多様な形態があるにもかかわらず、プラットフォームを介して財と情報を交換する共通した特徴をもつビジネスモデルである。この点に着目して、電子商取引の透明で公正な取引環境を整備するために、今後どのような法規整を行うべきか検討する。
本研究にあたっては、①産業構造のデジタル化に伴って、電子商取引が、これまでの業法規制ではコントロールできなくなっている立法政策上の課題を各法分野から抽出し、②プラットフォームビジネスの経済分析・産業組織論の知見を参照しながら、電子商取引を法的に分析する枠組を構築する。②に基づき、③どのような法規整を行うべきか理論的な検討を加え、今後の立法政策の方向性を示す。
本研究の目的は、産業のデジタル化に伴って、多様な取引形態が展開されている電子商取引について法規整の在り方を検討する点にある。第1に、プラットフォームビジネスモデルを採用している電子商取引について、プラットフォームの役割によって電子商取引を類型化するとともに、プラットフォームビジネスを法的に分析するための理論モデルを構築する。第2に、イノベーションが急速に進展するプラットフォームビジネスの収益構造に着目して法規制の在り方を検討する。第3に、プラットフォーム上でマッチングが行われるデータについて帰属、管理、利活用をめぐる法律関係を検討する。第4に、取引の透明性・公平性を担保するために、電子商取引に対する事前規制と法執行の在り方を「取引」と「市場」の両面から学際的に検討する。
上記の目的を実現するために、本年度の主な研究実査は以下のとおりである。
①学際的共同研究組織として、研究協力者を含めた全体研究会「プラットフォームビジネス研究会」を組織し、一般の参加者を含めた公開研究会を行った。②電子商取引についての現状と解決すべき課題や法規整の方向性について共通認識を醸成するために、この分野に精通している弁護士・知財法の研究者を招へいした「プラットフォームビジネス研究会」を行い、討議を行った。③本研究の課題に関する現在の研究の進展状況について、各研究分担者が報告を行い、相互にどのように共同研究を進めるか、意見交換を行った。④今後の研究を推進するために、現在の経済産業省の「電子商取引及び情報財等に関する準則」について問題点を抽出するとともに、電子決済に関する新たな法制の動向について分析を行った。⑤各国の規制についての最新動向のうち、特にEUの研究の動向について調査を行った。
多様な専門分野の研究者・実務家が参加する全体研究会「プラットフォームビジネス研究会」を公開で開催し、学際的な議論を行うための基盤ができあがった。また、基盤研究A「プラットフォームとイノベーションをめぐる新たな競争政策の構築」(研究代表者・根岸哲教授、17H00959)とも連携しながら研究を実施することにした。
経済学者を含む、研究分担者・協力者22名からなる本研究の共同研究組織ができ、研究打ち合わせ会を通じて、本研究の目的を実現するための研究手法について協議を行った。
申請当初は、理論・規制・エンフォースメントの3つに研究グループ編成する予定であった。しかし、プラットフォームビジネスがデジタル・プラットフォームを介して財と情報・データを交換するビジネスであることから、ネットワーク・システム、データに分けて理論と規制の両面から研究を実施し、両者の相互の関係を共同で分析するほうがプラットフォームビジネスの全体像を正確に把握できるという結論となった。このため、研究グループを①ネットワーク・コーディネーション(複雑な事業活動を分解し、複数の人・企業で分担してインターネットを通じて自律的に連携し効率的に事業活動行うこと)、②データ・インテリジェンス(データとアルゴリズムを活用し消費者等の活動や反応に従って適切にプロダクトやサービスを生み出していく能力)、③エンフォースメントの3つに着目して、各自の研究関心に応じて研究グループの再編成を行った。
「プラットフォームビジネス研究会」、および、国内外の研究者、実務家、規制当局等との意見交換を通じて、研究課題のより具体的な解明に努める。
第1に、新型コロナウィルスの影響で、海外出張・海外からの研究者の招へいは難しい状況にあるが、プラットフォームビジネスついて研究が進展するEU法の動向を中心に分析する。
第2に、これまで研究の蓄積がある決済サービスに関する分析手法を参考しながら、様々なサービスが提供される多様なプラットフォームビジネスについて、研究課題について経済学的見地からの検討も深めるとともに、現状の法規制の在り方についての問題点の整理をし、どのような理論的課題、政策課題があるのかについて分析を行う予定である。
第3に、デジタル・プラットフォームを基盤として様々なサービスが提供されるスマートビジネスの展開が予定されることから、デジタル・プラットフォーム自体の構造分析を行うことも予定している。
第4に、研究課題と密接に関連する政策課題に取り組んでいる公正取引委員会、経済産業省、総務省、個人情報保護委員会等の行政機関とも共同して、研究課題について現実の政策課題との関係においても検証を加えることに努める。 -
ベイシスの高度化による法人課税の再生(分担)
2018年4月 - 2023年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
岡村 忠生
担当区分:研究分担者
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研究課題/研究課題番号:18H00795 2018年4月 - 2023年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
岡村 忠生, 渡辺 徹也, 酒井 貴子, 高橋 祐介, 小塚 真啓
担当区分:研究分担者
研究の初年度として、ベイシスのクローニングの検討を、法人課税と消費課税の関係、組織再編税制、非法人事業体課税、ベイシスと損失など他の租税軸性との関係などの側面から進めるとともに、ブロックチェーンについての基礎的知見を共有し、その応用可能性を探ってきた。
組織再編成の分野では、平成13年の制度導入時から最近までの法改正を取り上げて制度のあり方を検討した。その結果、改正を繰り返した現行組織再編税制は、適格要件が複雑化してわかりにくくなってきていること、制度導入時の立法趣旨だけではベイシスのクローニングによる課税繰延を説明することがやや困難になってきていること、会社法からの影響が重要であることなどがわかった。
法人税対象外の組織体の分野では、特にアメリカ連邦所得税におけるパートナーシップの課税関係を調査した。パートナーシップ課税における一般的濫用防止規定の適用が問題となった事案のほとんどは、インサイド・ベイシスとアウトサイド・ベイシスの不一致を利用したタックスシェルターであり、このような不一致が深刻な課税問題を引き起こすことなどを明らかにした。
損失との関係については、米国連結納税制度を主にリサーチした。具体的には、同制度利用による節税額の連結グループ内での割振方法を検討し、その選択により投資簿価調整や留保利益計算に永久の又は時期的な差異が生じることが分かった。また割振の合意を巡る裁判例の検討を通じ、少数株主等の利害が限定的なことを示唆した。
ブロックチェーン技術に関しては、文献調査や企業へのインタビューを通じて、その技術上の特性を調査し、特に否認防止、検証性・可検査性ならびに完全性が取引をはじめとする多種多様な納税者の情報を信頼できる形で蓄積する目的で応用可能なものであることが判明した。なお、ブロックチェーンに関係して、シェアリングエコノミーを巡る課税問題の検討を行っている。
概ね順調に推移している。ただし、2019年2月に、暗号通貨(仮想通貨)に関するICO(Initial Coin Offering)などに対する金融庁の規制が改められることが明らかになったため、遂行を見合わせた研究項目がある。
引き続き、法人組織税制、非法人事業体税制、損失、ブロックチェーン技術の角度から、研究を進める。また、ICO規制等により初年度に見合わせた研究を遂行する。 -
消費者信用法制の新段階の検証―法規制の態様・存在形式・内容の総合的検討の試み―
研究課題/研究課題番号:18H00808 2018年4月 - 2022年3月
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
丸山 絵美子, 大屋 雄裕, 横溝 大, 松田 貴文, 得津 晶, 西内 康人, 牧 佐智代, 高橋 祐介, 吉政 知広
担当区分:研究分担者
本研究の目的は、消費者法の立法・解釈の現状が抱えていると思われる問題について、今後の立法論・解釈論に寄与するために、基礎理論・総論レベルでの幾つかの整理を行い、消費者信用法制を中心に、法規範の設計・法解釈のあり方を実践してみるというものである。本年度は研究会による討論と、研究代表者・分担者による学術雑誌への研究成果の公表を開始した。役割分担として、問題意識の整理と行動経済学の知見の活用について丸山・西内でまとめたうえ、大屋雄裕(消費者法はどのような利益を守る制度なのかを論じる)、吉政知広(消費者法のルール形成のあり方、Rule vs Standard論や規範形成の主体といった観点から検討)、松田貴文(消費者保護法制の政策化について米国における議論を参考に論じる)、西内康人(消費貸借法制について行動経済学の知見に基づく立法論・解釈論の実践を示す)、牧佐智代(英国のペイデーローン規制を取り上げ、立法にあたっての経済学的視点の重要性を示す)、得津晶(企業行動の態様の解明を試み消費者取引規制への示唆の導出を目指す)、丸山絵美子(消費者信用規整と消費者取引規整を対比し多層的規整構造の現状分析と今後の方向性を検討する)、横溝大(消費者信用に関する国境を越えた規整・その特色を明らかにし、国家法秩序への影響と課題を考察する)、高橋祐介(消費者法制と税制の相互影響の基本メカニズムを検討する)による検討を予定し、連載を開始した。大屋、吉政論文が年度内に公表され、すでに反響を得ている状況にある。
2年目の段階であるが、すでに研究成果の公表を学術雑誌(法律時報)において開始することができた。研究成果物を意見をいただきたい専門家に送付することによって着実な反響も得ている状況である。
コロナウィルスの影響によって国際交流は中止となり、しばらくは専門家が参集して会議開催を行うことも困難な状況に至っている。通信環境を整備のうえ、研究会の開催を継続する予定である。また、学術雑誌への成果公表をきっかけに、法と経済学会でのでのシンポジウム開催のオファーをいただき、準備を進めているが、この点も、学会開催ができるかは予断を許さない状況であるものの、研究は推進していく予定である。 -
超スマート社会における決済システムの発展を踏まえた租税情報処理制度の法的研究
研究課題/研究課題番号:18K01245 2018年4月 - 2022年3月
高橋 祐介
担当区分:研究代表者
配分額:3510000円 ( 直接経費:2700000円 、 間接経費:810000円 )
本研究は、新たな決済システムが発展しつつも現金が決済手段の約8割を占める日本社会の特殊性を前提に、近時のデジタル・エコノミーやクレジットカードなどの取引決済にみられる事業者への情報集約現象やリアルタイム処理のクラウド会計システムなどに着目して網羅的・目的限定的に情報を取得することにより、徴税漏れ(Tax Gap)を縮小しつつ、当該情報の適切な加工・利用を行う法的システムを構築することを目的とする。
当年度は本研究の2年目であり、1年目で精査したところの租税情報取得に関する現状把握、他法分野における議論状況、国際的な制度概要の把握を踏まえ、制度モデルを構築し、実務家との意見交換、共同研究による実務的な観点からのTax Gap対処法をかなり細部まで詰めて検討することを目的とした。
まず当年度における経済のデジタル化の進展と租税情報取得への影響をフォローした後、ICTにいかなる進展があろうともそれによる情報取得では解決できない問題につき、手続的に対象者を限定することにより、解決可能であることを示した。他方、資産税分野、いわゆる固定資産税評価における情報把握の困難さと解決法についても検討を行った。以上の検討に際しては、定期的に開催される研究会での報告の他、税理士・税務当局者との意見交換(講演会含む)も行い、実務的な視点からの意見を研究成果に盛り込むことにしたほか、特にICTに関しては、他法分野の抱える問題への知見を得るため、多様な法分野が参加するプロジェクトにも積極的に関わっている。
ICTを使った租税情報収集や、それでは解決できない問題の発見と手続的な対処法のほか、資産評価にも目を向けて、かつ実務家との意見交換を行えたことから、おおよそ計画通りに研究が進展していると考えられる。
周知の通り、年度末より新型コロナウイルス蔓延の影響が出つつある。在宅勤務や電子マネー決済の普及といった、本研究が対象としている事象自体にも影響が及ぶほか、外国での実地情報収集はもちろん、国内における情報収集すら現実問題として困難化している(文献取り寄せや複写依頼の謝絶、実務家との実地研究会の開催不能など)。外国法に関してはインターネットを通じた情報収集に切り替えるほか、現実に急速に進展しつつある経済のデジタル化や情報取得の進展(口座へのマイナンバー紐付けなど)に着目し、今回の蔓延騒動をむしろ新たな視点をえるきっかけにしたいと考えている。 -
超スマート社会における決済システムの発展を踏まえた租税情報処理制度の法的研究(代表)
2018年4月 - 2019年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
高橋 祐介
担当区分:研究代表者
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消費者信用法制の新段階の検証―法規制の態様・存在形式・内容の総合的検討の試み―(分担)
2018年 - 2022年3月
科学研究費補助金 基盤研究(B)
丸山 絵美子
担当区分:研究分担者
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租税システムの情報収集機能に基づいた公的・私的給付統合に関する研究(代表)
2014年4月 - 2017年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
高橋 祐介
担当区分:研究代表者
本研究は、生活の質を保障する基準としての個々人の「持続可能な消費能力」に注目し、そのような能力を包括的に把握するための租税・社会保障上の課税・給付モデルを探求することを目的とする。
(1)現行の制度では、生活の質保障のための課税・給付ベースに大きな欠陥を生じていること(損害賠償や、相続・贈与など)、(2)税や社会保障上の情報収集・利用につき、情報監査制度などによるプライバシー保護に配慮しつつ、積極的なマイナンバー制度活用が求められることなどが指摘される。 -
消費課税におけるヒューマン・キャピタルと資産概念の応用
研究課題/研究課題番号:25285010 2013年4月 - 2019年3月
岡村 忠生
担当区分:研究分担者
本研究は、人が教育や訓練を通じて獲得し蓄積する所得獲得能力(human capital)が、個人消費課税において適正かつ公平な取扱いを受ける税制のあり方を検討し、所得課税での「資産」と「取得価額(ベイシス)」の概念を消費課税に応用することが、①教育や訓練を受ける人自身の観点、②その人を雇用し、または、その人が営む企業の観点、③富の偏在や所得の再分配など社会や国家の観点の3つの観点から有益であることを示した。
消費税や付加価値税などによる消費に対する課税は、今後、わが国や世界でますます重要となるが、消費課税においては、人が教育や学習を通じて所得獲得能力(human capital)を維持向上させてゆくことは、単なる消費として扱われてきた。しかし、human capitalは価値創造の中心的要素となっており、そのための支出も増大している。本研究は、human capitalのための支出に対して、消費課税の下で適正かつ公平な取扱いを行うための方向性を示した。 -
事業体アプローチによる公的給付課税に関する研究(代表)
2011年4月 - 2014年3月
科学研究費補助金 基盤研究(C)
担当区分:研究代表者
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資産概念のソフト化と取得価額の規範的再構成(分担)
2008年 - 2011年
科学研究費補助金 基盤研究(B)
岡村忠生
担当区分:研究分担者